源氏物語のウェイリー訳
ウェイリーによる英訳を日本語へ再翻訳(戻し訳)したものを扱う Arthur Waley (1889-1966)
イギリスの東洋学者
第一夜 翻訳という魔法
能になっている二大古典
源氏物語が元になった能は10作品以上ある
源氏物語は、世阿弥の時代、みんなが知っていた
なぜ英語に翻訳されたものを今回取り上げるのか?
わかりやすいから
室町時代にはよく読まれていたが、江戸時代になると難しくて読まれなくなった 1912年(明治45年)から1913(大正2年にかけてのこと) 正宗白鳥はこの英訳を読んで、初めて源氏物語がわかった!と言った そのくらいわかりやすかった
源氏物語は、クロニクル(宮中年代記)とフェアリーテイル(おとぎ話)が重なっていると書いている ウェイリー訳第1巻の註にて
古典がどのように英語になったか?
複雑な敬語がなくなった
仰られ、みたいなのを無くした
主語を明確にした
古文では主語がほとんど省略されているが、英語では主語が書いてある
この箇所は誰が言った/行ったことなのかがよくわかるようになった
言葉を置き換えた
古典の言葉は我々現代人もわからないし、当然イギリス人もわからない
例えば
帝(天皇)をエンペラーに
更衣をワードローブのレディに
御簾(みす)をカーテンに
琵琶をリュートに
前栽をコテッジの前庭に
物の怪をエイリアンに、修験者をエクソシストに
エイリアン alien は、外のものがうちに入ってくる存在
その物の怪 = エイリアンを、外(ex-)へ出すのがエクソシスト exorcist
キリスト教の色が、源氏物語に重なってくる。
光君は Genji the Shining One
「ひかるきみ」と聞くと日本人はスッと流しがちだが、「シャイニング」というとグッと心にくる
と、指南役の安田氏
辛いことがあっても元気になってしまう
目の前にくると嫌い通すことができない
それがシャイニング
一般に光源氏は、女たらしと取られることもあるが、神だと思えば、許せるのでは?
ドン・ジョバンニつまりドン・ファンは女たらしの代名詞だが、彼をキルケゴールは光り輝く人、相手の女性を輝かせる人と言っている ケンブリッジ大学で古典学を専攻した
目の病気で左目をほぼ失明
研究者の道を諦め、大英博物館に就職した
配属されたのが東洋の版画などを扱う部門
このとき初めて独学で中国語や日本語の古典を身につけた
光源氏のものだった
そのときウェイリーはなぜか読んでみたくなった、という
日本から取り寄せ、たった1人で翻訳した
第1巻を発表すると、イギリス、アメリカで瞬く間で多くの反響を呼んだ
1000年前に日本で生まれた日本の源氏物語が、900年前に初めて世界に知られることになった
彼はギリシア語もラテン語もヘブライ語も読めた
それに比べたら日本語は簡単だ、とウェイリーは言っている