ファシリテーターの、科学との向き合い方
科学は再現性を追求する
同一条件下での実験を繰り返し、その結果から客観的知識を構築する。
たとえば
医療において、複数の研究機関が同一治療法の効果を再現できたとき、標準治療として採用される。
工業製品では、製造工程における品質管理が、再現性によって信頼性と安全性を保証する。
その一方で、
個々人の体験は非反復性を有する
統計的平均や再現性だけでは評価しきれないユニークな側面がある。
たとえば
新薬の副作用は、統計的には低発生率でも、万が一深刻な副作用が発生すれば、個人にとってそれは非反復的な体験。
健康診断の結果が正常値であっても、突然の心筋梗塞など予期せぬ健康リスクとして個々の生活に大きな影響を及ぼしかねない。
科学による再現性追求と個々の体験固有性のジレンマは、統計的エビデンスと個人の非反復的体験との間に存在するギャップに起因する。
自動運転は統計的には社会全体の事故率を低減させるかもしれないが、実際に事故が発生すれば被害者やその家族に取り返しのつかない大きな悪影響を与える。
地震リスクでは、長期的な統計データが示す確率と、実際の大地震による生活や心理への影響との間に大きな乖離がある。
金融危機では、経済指標が低リスクを示していても、突発的な危機が個々人自身や彼/彼女らの家庭に無視できない損失をもたらす。
社会学や経営学によって、法則や傾向が発見されたり話題になったりしたとしても、
いまここの、ファシリテーター自身を含む個々人の体験の非反復性を自覚しておかねばならないだろう。