読書ノート-崩壊するアメリカの公教育
https://gyazo.com/5223f220e23dcaf862abfdd05d16de4b
TEST-AND-PUNISH
「テストして悪いところ見つけ、罰する」
教育政策は、成功したことだけが共有されることが多い中、アメリカ内部からみた実際のことが書かれた貴重な本だと思います。
アメリカで「落ちこぼれ防止法」という一見良さそうな名前の法律が施行された後、各々の学校は共通テストの点数で良し悪しを評価されるようになりました。
点数の低い学校は先生が総入れ替えされたり、廃校にされて公設民営校につくりかえられたりするようになったそうです。
もともと予算の少ない低所得地域にある学校は、廃校にらないよう必死にテスト対策を行い、芸術などテストとは無関係の科目を行われないようになりました。
エリート候補が通うような高所得者地域にある学校は、もともと潤沢に予算がありテストに縛られない教育を行います。富める者がより富み、そうでないものがよりそうでなくなる。公立学校が分断や人種差別を拡大させる方向に進んでいるようです。
本当は貧困地域を救いたいという狙いだったはずの法律が、「落ちこぼれ」の定義が単純なテストの点数で簡素化されていたり、テストや教材を売りたい企業、教育予算を削減したい政府などの思惑により全く逆の効果を生んでしまう。
くだらないテスト対策に時間を使わないでほしいという親や教師たちが、共通テストをボイコットするtest-opt-out運動なども広まっているそうです。
では、どうしたらいいんでしょうか?
私も筆者の言うように、人々の心構えの変化が一番大切だと思います。
「教育は人生の準備ではなく、人生そのもの」
一世紀も前の有名な哲学者の言葉だそうです。
教育と言われると学校に行っている期間だけ、社会に出た後は研修や講座に参加した時だけと考えがちですが、生きていることが学びであり教育です。
いまは変化の激しい時代などと言われますが、いつの時代も自分の学んだことや経験したことは陳腐化していくものです。
陳腐化することを恐れず、変化を面白がって学んでいくことが一番大切だと私は考えています。
まぁでも「最近の若いもんはなっとらん」という老害の決まり文句は紀元前からあるらしいですから、心構えを変えることが一番難しいですよね。
しかしアメリカも日本もだけど、どう考えてもおかしいことでも中々変えられないのはなぜなんでしょう。いろいろな利害関係でがんじがらめだからかな。
本質的な問いを軸にしながら、もっとアジャイルに社会を改良していけたらいいのに。
「すべての複雑な問題には、明快でシンプルな”間違った”答えがある」
起業家としては肝に据えたい言葉ですね。
以下メモ
hr.icon
日本はアメリカほど極端ではないけど似た流れにあるし、共通テストの導入による大学序列化、受験産業の肥大化などはむしろ日本やアジアの方が先行ってる感じもします。
市長による教育委員会の任命
学力テストによる競争と人事評価
大学受験、偏差値による学校の序列化。
アメリカはクリティカルシンキングが大切だとよく言う割に、解決できていない大きな矛盾が多いですよね。
コンピテンシーをお持ちのお金持ちも、まずは自分が落ちぶれないことに必死だろうしな…。
銃所持の問題
保険などの社会保障
教育格差(憲法に教育の義務がないのも驚きです)
人種差別
貧富の差
社会の分断がより広がっている
これらの教育問題も、新自由主義の台頭による一端に過ぎないと筆者は主張します。
では、どうなったらいいのか?
hr.icon
点数化された学力観
問題点
点数はほんの一部のことしか表せないはずなのにそれがすべてのように評価されてしまう。
その学力観で学校選択制
その学力観で競争されられる公立学校
多様化ではなく、序列化が起きる。
序列上位の学校へ優先的に入学できるように、予め親がボランティアしたり、校長先生を紹介してもらってコネつくったり。
抽選だけで選抜は行わないという建前になっているが、成績で学校が評価されるので実際には行っている。
上位の学校には、白人、アジア系が占める。黒人ヒスパニックは少なく、下位の学校は逆の構成。
人種の分断を加速。
点数化された学力観による学校間競争を公立に持ち込んだのはピアソン
方法
多額のロビー活動
天下り先の提供
メリット
教材
試験
模試にかぎらず共通テストの実施なんかも請け負ってる。
ICTシステムの導入
同じ教材、同じテストを売るためにCommonCoreを導入。
自分たちの教材を売りやすい環境整備。ビジネス環境開拓。
色々問題になって、アメリカでの売り上げは落ちて株価も半減
その分アジアやアフリカの新興国に入り込んでる。
アメリカの公立学校予算は、地域の固定資産税によってなかなわれることが一般的
地価が高い地域では学校予算が潤沢、逆に治安の悪いような地域では学校予算もすくなく教科書も用意できない文房具もないような学校もある。
公教育が貧困の連鎖を絶つどころか拍車をかけている
NY市は生徒数ベースの予算らしい。
チャータースクール
貧困地域に多い
富裕層地域にはもともと評判のいい公立伝統校が多くて勝負にならないから。
問題点
低賃金、低品質な教師、教育
良くつぶれる
他の学校へ移った子は、移った先の良しあしにかかわらず中退率が高いという研究もある。
卒業率悪い(30%とか)
成績の悪い子を退学に追い込んだり、テストに参加させなかったり。
マックチャーターといわれるような、フランチャイズのチャータースクール
チャータースクールへの融資は、大きな税控除が受けられる。
CSRとか甘い話じゃなくて単純に金の逃げ場としてお金が集まっている。
ロケットチャーター
図書館の自習室みたいなのにPCがあってそれで勉強するチャータースクール。
先生は5週間講習を受けるだけでなれる準教員免許しかもってない人を安く雇っている。
投資家はIT長者系の慈善団体の皮をかぶったファンド。ゲイツ財団とか。
教育予算が取れない>他の方法でお金を集めよう>公教育だけど教育がファーストではなくセカンド、サードなってしまった。
PISA
アメリカはPISAテストではあまり得点高くないが、貧困地域を除くとダントツ1位に。
貧困地域だけにするとビリの方。
PISAテスト自体が、OECDだし経済産業界の要望による部分が多く、教育の本質的なところから的外れなんじゃない?
2015年ごろからピアソンが入ってるらしいので要注意。
OECDは、経済協力を目的とした国際機関。教育とは直接関係する組織ではないが、各国の教育を点数化することによってコントロールする利権を得てしまった。
新自由主義の本質
1%のお金持ちのためのアカウンタビリティ
アカウンタビリティとは、数値説明責任。
成果主義
その数値による競争と管理
プロの仕事はプロにしかわからない
素人にもわかるように数値化することによって、偏った評価になってしまう。
数値化されることしかやらなくなる。攻略法化する。
シカゴが、全米の縮図
落ちこぼれ防止法
テスト結果を求め、達成できない学校は教員の入れ替え。廃校&チャータースクール化。
音楽、図工、体育、哲学などテストと関係ない授業がテスト対策に充てられる。
チャータースクールに安く再雇用される先生
数値上はテストの点は向上するので成功したことになって全国展開へ。
現場は弊害だらけ。
結果評価になってしまって、機会の平等性がなくなってしまっている。
100%大学進学を謳うチャータースクール
進学できない子を退学させている。
日本の私学や専門学校、塾などでも優秀な子に複数大学受験させたりするなどよく聞く話。
教育委員会の市長任命制
教育委員会に企業の重役が並ぶ
教育委員の公選制を住民投票し、70%が賛成したが無視された。
ストライキ
10人ぐらいの勉強会から始め、ドキュメンタリーの作成や上映会などで支持を広げ組合のみならず保護者や市民を巻き込んでテスト期間中に大規模ストライキ
hr.icon
読んだ感想
営利企業が自分たちに有利なビジネス環境にするためにありとあらゆることを使うのは普通のこと。
でも教育とは相性悪いな。
企業利益の最大化とユーザー利益の最大化は必ずしも一致しないから。
教育の場合、ユーザー利益の矮小化が起きると社会的な影響が大きい。
儲かる教育といい教育は、別軸のパラメーター
農薬のモンサントとかの問題にも似てる気がするな。
こっちは利益の最大化がおきると、健康被害が心配。実際御用学者つかってごまかしてたりした。
P社も御用学者とかいそう…
そもそも利益の最大化=ユーザー利益の最大化になることの方がすくなくね…
だからいろいろな規制があるんだね。営利企業はそれもいろいろかいくぐろうとするけども。
USに導入されて問題なってるのは、日本と同じテスト学力観
中国、インドなどアジア系にも共通
共通指導要領、共通テスト、それによる偏差値による序列化が、画一化した評価、同じような大学を生んでいく。
攻略法を売る受験産業ができるから儲かるけどね…。
では、どうする?