「アンチ初音ミク:重音テト」のアンチ
重音テト観
フロクロ
マトモなあの子の嘘くさいパロディ
始まりなんてわりかしいつでも>実に馬鹿げてるもんで
そりゃ君だっておんなじです
"存在しててウケますね笑"ってやつ
リスナーだった時期が長かったせいか初音ミクはじめクリプトンボカロの面々は何か遠いスター的な存在という認識がいまだに強くて、それがUTAUの重音テトさんとかが手に馴染む理由のひとつになっている気がする。なんとなく、より身近な感じがあり……
ー重音テトについてもっと伺いたいです。「チープなプロパティ」という重音テトのキャラクターソング的な曲をニコニコ動画にアップされていましたが、重音テトの「嘘から出たまこと」的な側面に惹かれているということでしょうか?
フロクロ:そうですね。最初からそこに惹かれて使うようになったかどうかはわからないですけど。ただ、直感的に重音テトってキャラクターを見たときに、ここが好きだってキャラクターを見た時に、ここが好きだっていうのはもちろんあるんですが、「嫌なところがない」っていうのも大事な気がしていて。例えば重音テトの設定に「性別:キメラ」「年齢:三一歳」っていうのがあるんですが、逆に今っぽいな(*1)って最近ずっと思っていて(笑)。
音楽って年齢至上主義みたいな風潮があるじゃないですか。若いうちに売れないとダメだとか言われますし、実際高校生でシンガーソングライターデビューとかが美談になっていたりして、いかに若いうちに成功するかに囚われている人ってたくさんいると思うんですけど。その中で「三一歳の歌姫」ってすごく元気が出るというか。(*2)
ーちなみに重音テトの曲で何か好きな曲などはありますでしょうか?
重音テトだとラマーズP(ゴジマジP)さんの影響は原体験としてありますね。あの人の「■~とりぷるばか~」っていう曲がめちゃくちゃ好きで。初音ミクと重音テトと亞北ネルが出てくるっていうやつで、亞北ネルはMVに出てるだけで歌ってなくて、それもめっちゃ良いんですけど(笑)。あの曲の描写では、初音ミクがバカ真面目でまっすぐで、それに対して重音テトは「君はじつに馬鹿だな」って斜めってるんですが、それを見て自分は初音ミクというより重音テトだなっていう(笑)。
重音テトってそういうひねくれ者の受け皿になってくれてる感じは結構あるんじゃないかと思います。ラマーズPの代表曲の「ぽっぴっぽー」は初音ミクの曲なんですけど、「ぽっぴっぽーMk-II」っていう短調バージョンを重音テトが歌っていて。その短調でちょっとダークな方ばかり聴いていたみたいな(笑)。ゴジマジP名義で出した「おちゃめ機能」もめっちゃ良い曲で、「上書きしちゃえば僕の思い通り」って歌詞とか、めちゃくちゃいいなって。「チープなプロパティ」でもそれ_を引用していますが。
ーラマーズPさんも純粋な「打ち込み」調のサウンドで中毒性のある曲を作る作風なので、フロクロさんが原体験になっているというのはすごく納得感がありますね。
フロクロ:そうなんですよね。昔すぎてだいぶ溶けてはいるんですが、音楽的な意味での影響もあると思います。
「チープなプロパティ」についてもうちょっと言うと、重音テトは人間っぽいという話をしたいですね。例えば初音ミクって、設定をすごく良い感じに作っているじゃないですか。「一六歳の歌姫」とかって、アイドルにふさわしい設定だと思うんですけど。
それで言うと重音テトって歌姫にふさわしい設定になっていないじゃないですか。三一歳の歌姫、性別はキメラ、軍服を着ている・・・・・・それってすごく人間っぽい。人間って、言ってしまえばデフォルトで適当な設定を付け加えられた状態で生まれてくるじゃないですか。
変えられるものがあれば、変えられないものもある。そして変えられないものがあるとしても、その解釈は自分に委ねられている。だから、得意・不得意なことがあるけど、不得意だったとしても、他人に頼ることで補完できて、逆にそこでチームが生まれて嬉しい。逆に一人で何でもやっちゃうと孤独で、みたいな。
そういう、久けているところも解釈次第でどうにでもなるところを重音テトに感じていて。重音テトが2ちゃんねるVIP板の安価スレで設定決められて(「安価設定」)生まれてきたのも、すごく人間っぽくていいなと。そうしてできたキャラクターを好いてくれる人がたくさんいるのも希望で、だから「チープなプロパティ」っていう曲を作ったんです。なのであれは重音テトの曲であるだけでなく人間の曲でもあって、「これはお前らの曲だ!」と思って作っていましたね(笑)。
最近「親ガチャ」みたいな概念が蔓延っていて、「初期設定が悪かったからダメだ」みたいな考えが浸透しているじゃないですか。
確かにそういう側面もあるかもしれないけど、決してそれだけじゃないでしよ、と思うし。もっと解釈の仕方を変えて何かを満たすのが大事なんじゃないか、生まれてきた以上は・・・・・・と思っています。
ーちなみに「匿名M」について思うところがあったのはそこだったりしますか?
フロクロ:「匿名M」はインタビューで喋って音を刻みながら「存在しててウケますね」って言うところに食らい過ぎていて、他のところはそんなに食らっていないというか(笑)。私は初音ミクのオタクじゃないから、みんなが食らっているところにそんなに食らっていないんですよね。インタビュー形式とかはあまり考えていなかったから。
原口沙輔
仲が良いボカロPの方にめちゃくちゃ布教されて、キャラクター性を理解したときに、“自分とすごい親和性があるな”と思って選びました。ボカロの中でもテトの曲ってそこまで曲数が多くないので、“なにくそ”と思ってそうだなと。
アンチ重音テト
フロクロさんと沙輔さんが使ってるからむしろ重音テトがキラキラして見えるな
ボーカルとしてフロクロの曲の半分を占め、最もヒットしたボカロ人マニアに使われ、Synthesizer Vも決まった重音テトはもはや何が「ひねくれ者の受け皿」だろうか。
重音テトはキャラクターとして虚構からしか人に勇気を与えることができない。実際にいないじゃないか、31歳だからと頑張って世間の目に立ち向かう人間が