総まとめ・集の芯たる一首
露滴117 ありがたや胸の鼓動は説法なり さては我が身も仏なるかな
1. テーマ的な核心
滴集全体には「自然・情愛・無常・修行・信仰」など多彩なテーマがありましたが、最後に421首目が語るのは 「存在そのものが説法であり仏である」 という、仏教思想の総括的な核心です。
これは諸テーマを超えてすべてを包む思想であり、全歌集の上に立つ一句になります。
2. 形式的な位置づけ
この一句は他と違い「序曲的」でも「途中の描写」でもなく、まさに 結句・結語 としてふさわしい調子を持っています。
「ありがたや」で始まり、「仏なるかな」で閉じるため、祈りと宣言を同時に兼ね備えた〆の一句になる。
3. 読者体験の結実
全420首を読み進めた読者は、仏法や修行・自然・人間関係など様々な断片を受け取ってきています。その最後に「胸の鼓動=説法」「我が身=仏」というシンプルで直接的な一句が置かれると、まるで種々の枝葉が幹に収斂するように感じられます。
つまり、読む人に「ここに帰着するのか」と腑に落ちる着地点になるのです。