滴シリーズ秀歌30_ぎた
#秀歌30 #ガイドライン
入門(はじまり:自然・存在探求)
テーマ:自然・存在の静謐な観照と、命の萌え出づる感覚
流れ:静かな観察 → 生命のきらめき → 微小の中の宇宙 → 自己の存在探求 → 信仰的時間感覚 → 循環の認識
滴塵001 — 叢雲の晴れて三五の月影は もとより空に在りしとぞ知る
静謐な自然観、観照の出発点として鮮烈。宇宙の普遍性を一瞬で感じさせる。
滴塵002 — 萌えいづるいのちきらめく虹の端は 嵐の後の曼荼羅世界
生命の躍動感と密教的世界観を融合。嵐の後の静寂と希望を象徴。
照滴001 — 雨だれの岩を穿つはその雫に 宇宙をすべて込めしゆえかな
微小と宇宙の接続を感じる。観察の深さが詩の芯を示す。
滴塵009 — 探しても見つからないのか探すから 見つからないのか私の居場所
存在探求の普遍性。読者の心に問いを投げかける。
滴塵015 — 念ずれば花ぞ開くと誰か言う 竹は百年(ももとせ)優曇華三千年(みちとせ)
伝承・信仰観の混淆。静かなユーモアも潜む名句。
照滴011 — いずくより 来たりし滴(しずく)空よりか 眼よりくだりて 海へと至る
循環と起源を感じさせる詩。水・滴・宇宙のイメージが交差。
核心(信仰・実践・法の体感)
テーマ:信仰と実践を通じた自己と宇宙の同一化
流れ:信仰行為の開始 → 内的感覚の覚醒 → 言葉の宇宙への響き → 音の象徴性 → 儀礼的展開 → 実践と智慧の開花
照滴002 — 手を結び口に真言 心(むね)に阿字 我れはみほとけ みほとけは我れ
実践と自己同一化の核心を端的に示す。
照滴007 — 目を凝らし耳を澄ませて聴く音は 宇宙の響き みほとけの声
聴覚を通して内宇宙を描く。精神集中の美しい描写。
宝滴002 — 言の葉は如来の息吹き 我が身から 迸(ほとばし)りてぞ三世に響く
言語と信仰の即結。言葉の力を宇宙に響かせる。
宝滴005 — 心(むね)に染む 切々経(ぜぜきょう)の音 滴滴と 一音一仏 宇宙(そら)を揺るがす
音のモチーフが信仰の広がりを描く。宇宙的スケールの共鳴。
宝滴020 — 幢幡(どうばん)を翻す風 経を乗せ 微音を奏で 六道に吹く
宗教儀礼的情景が世界観を広げる。
新滴010 — 与えては 守り忍びて 精進し 静かに禅定 智慧ぞ開かん (六波羅蜜。檀戒忍進禅慧)
実践論を端的に表現。静かで深い洞察。
深化(悟り・非二元・曼荼羅観)
テーマ:非二元的世界観、悟りの象徴、曼荼羅的視座
流れ:悟りの象徴 → 非二元感得 → 雫と音の哲理 → 行為の荘厳 → 道の険しさ → 微小に宇宙を見る
滴塵003 — 明鏡の月のごとなる我が心(むね)に 金色の阿字 耀きて立つ
悟りの象徴を端的に示す。心の鏡の明晰さを表現。
新滴001 — 唱うれば 我れなく彼なく 仏なく 衆生もなければ 法界もなし
非二元の感得を短詩で示す鮮やかさ。
新滴003 — 一音に 万響含む 雫かな 音なく滴る その音を観よ
音=雫の象徴で全体を貫く理念。
宝滴035 — 曼荼羅を普供養せんと 閼伽捧げ 経唱う我れ 曼荼羅に坐す
行為の具体性と荘厳さ。曼荼羅の体感的詠唱。
露滴064 — 生き死にを超えて進まん悟りへの 道ぞ険しき優曇華の花
悟りへの険しい道を象徴。結びの句として力強い。
照滴030 — 星々を極微(ごくみ)に砕きしその粒の 一つ一つに宇宙を蔵(おさ)むる
縮小による拡張。全体観を示す比喩的名句。
余韻(人間味・情愛・無常と恒常)
テーマ:人間性、恋愛、無常と恒常、慈悲と共感の余韻
流れ:肉体の実感 → 恋愛的情緒 → 微笑の仏性 → 小さな慈悲 → 共同行為 → 縁の尊さ → 言葉の力 → 自然と仏性 → 無常と恒常 → 命の価値 → 慈悲と覚醒 → 締めの悟り
滴塵005 — 目と耳と汗骨皮肉と毛と脳髄 鼻汁汗便流れ停まらず
肉体性の直視が生々しくもユーモラス。
宝滴013 — 洛神かベアトリーチェかジョコンダか きみが面影 菩薩の如し
西洋・古典的参照を取り込みつつ仏性へ回収。恋愛的情緒も潜む。
宝滴045 — 微笑めば 一時の仏ぞ 君と我れ 仏と仏が 見つめ合うなり
最小の行為で互いに仏を見る寓意。人間関係の尊さを描く。
新滴017 — 一粒の 菩薩の種を植えければ 涙も雨ぞ 花の開かん
小さな行為の因果を詩的に示す。慈悲の象徴。
新滴034 — 降りそそぐ みめぐみ胸に あたためて 同行二人 長夜(ぢょうや)の旅路
伴走する慈悲のイメージ。温かい余韻。
露滴001 — 結ぶ縁 切れる縁も あらばこそ かしづきまもらん かそけき祈り
縁の感覚を慈しむ冒頭句。人間関係の奥深さを示す。
露滴009 — 言の葉に届かぬ願いを託しませ 三世に響く獅子吼にぞなる
言葉の力と願いの大きさを重ねる。
露滴033 — 雨上がり雲の端より日の射して み光嬉しや如来の微笑み
自然と仏性の融合。心に安らぎを与える句。
露滴041 — 花しぼみ草はしおれて枯れぬれど 法の花こそ永遠に散らざれ
無常と恒常の対照。悟りの恒久性を感じさせる。
364 — 君ゆえに惜しからざりし命かな 八峯の椿咲かで落つとも
恋愛的情緒を含む余韻。情感の厚みを与える。
319 — 生まれきて死にゆく命のためならば 明日と言わず今手を伸ばさん
慈悲と行動の直感。余韻に温かさと責任感。
388 — 有難き命なりけりこの心(むね)の 鼓ぞ響く宇宙(そら)の果てまで
締めの一首。人間の身体性と仏性が融合し、存在の喜びと感謝で全体を包む。宇宙的スケール。
あるいは
421 — ありがたや胸の鼓動は説法なり さては我が身も仏なるかな
結願の一首。自己の仏性の確認と悟りへの自覚。