5.自然・風景
#目次
手を合わせてあなたを思う
滴塵017 雨上がり月冴え胸に染むるらん 手を合わせては君をや思う
闇が深ければ月が冴える
滴塵019 ぬばたまの闇に浮かぶは白き月 闇深きこそ冴えわたるかな
桜よ、散らないで
滴塵022 風吹かば帳(とばり)の如なる桜かな 急ぎ散らずにしばし待ちませ
散ったあとの、まぶしい緑
滴塵024 薄紅の色懐かしむ暇なく 散り果ててなお緑まばゆし
光さしこむ高野山
滴塵030 明けぬ闇 光ひとすじ差し入りて 花はひらかん 高野のみやま
君を待って、闇の中に虫の声を聞く
滴塵033 君待ちて無常の闇に身を浸し 降るや虫の音叢雲の月
秋の訪れ
滴塵034 蓮葉(はちすば)はまだ夏ながら繁れるに 風に従い舞う蜻蛉(あきず)かな
霧に煙る月
滴塵044 音もなく降りしきるかな青き雨 煙(けぶ)る月見ゆ夏の狭霧に
雨だれの中の宇宙
照滴001 雨だれの岩を穿つはその雫に 宇宙をすべて込めしゆえかな
水の循環。涙はどこへ?
照滴011 いずくより 来たりし滴(しずく)空よりか 眼よりくだりて 海へと至る
涙はなぜしょっぱい?
照滴012 わがまなこの 涙は鹹(から)き 何ゆえに 海を宿して 天(そら)へと還る
雨に打たれてなお
照滴023 ひさかたの雨に打たれて鮮やかに なお麗しきあじさいの花
蝉は知っていたか?
照滴028 知らざりき空広くして明らかに 土を出で君はかなかな(哉々)と鳴く
微塵の中の宇宙
照滴030 星々を極微(ごくみ)に砕きしその粒の 一つ一つに宇宙を蔵(おさ)むる
放物線の向こうには?
照滴031 加速した放物線の向こうには 未来か過去か 仏か我か
お線香一本の間の瞑想風景
照滴033 藍よりも青き碧空 愛よりも淡き空寂 一炷の香
花は散ってしまうけど
照滴076 惜しめども散りゆくものと知りながら  なほ待ち遠し 花開く時