風吹かば帳(とばり)の如なる桜かな 急ぎ散らずにしばし待ちませ
滴塵022
本文
風吹かば帳(とばり)の如なる桜かな 急ぎ散らずにしばし待ちませ 要点
風で散る桜を帳に例え、散らずにしばし留まるよう願う描写。 現代語訳
風が吹けば散る桜が帳のようだ。どうか急いで散らず、少しの間でも待っていてほしい。 注釈
急ぎ散らずに:早く散ってしまわないでほしい。
しばし待ちませ:一瞬の美しさを惜しむ心。
解説
自然の美しさを愛でると同時に、無常を意識する和歌。桜の散る速さは人生の儚さや青春の短さの比喩でもあり、読者に刹那の美の尊さを伝える。 深掘り_嵯峨
桜という無常の象徴に対し、作者の切実な願いが向けられた歌です。桜の美しさが極まって「帳」のようになっている様子は、この世の美の完成形を示しています。 しかし、その美は風が吹けばすぐに散ってしまう運命にあるため、「しばし待ちませ」と、時間よ止まれと願わずにはいられません。これは、「この美が永遠であってほしい」という、無常に対する人間の抗えない愛着を、優雅でたおやかな言葉で表現しています。