雲間より救いの御手を垂れたもう 掴まば掴めその蜘蛛の糸
滴塵021
本文
雲間より救いの御手を垂れたもう 掴まば掴めその蜘蛛の糸
形式 #短歌
カテゴリ #3.信仰・信心
ラベル #仏 #念 #修行 #希望 #光 #衆生 #引用
キーワード #救い #蜘蛛の糸 #掴む #信仰 #縁起
要点
雲間から差し伸べられる救いの手を掴もうとする比喩。蜘蛛の糸は仏教的救済の象徴。
現代語訳
雲の間から救いの御手が差し伸べられた。掴め、掴むのだ、その蜘蛛の糸を。
注釈
蜘蛛の糸:釈迦が罪人に与えた救済の象徴。芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』のモチーフ。地獄から極楽へ通じる、か細く、最後の頼みの綱。
雲間:困難や迷い。その中に現れる救い。
救いの御手を垂れたもう:仏が慈悲の心から助けの手を差し伸べる。
解説
蜘蛛の糸は縁起的・象徴的に救済の手段を示す。信心や修行を通じて救いを掴むことの重要性を強調し、読者に行動を促す。救いは与えられるものではなく、掴む努力が必要であることを詠む信仰歌である。
深掘り_嵯峨
仏の無限の慈悲と、人間の限界を鋭く対比させた歌です。仏は雲間(高み)から手を差し伸べているものの、それは「蜘蛛の糸」のようにか細く、掴み損ねれば終わりという、ギリギリの救済の状況を示唆しています。
「掴まば掴め」という表現は、他力(仏の力)による救済でありながら、それを掴むか否かは己の意志にかかっているという、厳しくも切実な能動性を要求しています。救いはあるが、そのチャンスは一瞬で、極めて危ういものだという、深い緊張感を持つ一首です。