雨上がり月冴え胸に染むるらん 手を合わせては君をや思う
滴塵017
本文
雨上がり月冴え胸に染むるらん 手を合わせては君をや思う
形式
#和歌
カテゴリ
#5.自然・風景
ラベル
#雨 #月 #恋愛 #夜
キーワード
#澄んだ月 #雨上がり #胸に染む #祈り #想い
要点
雨上がりの澄んだ月の美しさを恋慕と祈りの心に重ねる。
現代語訳
雨が上がって月が澄んで輝き、その光が胸に染み入る。その月に手を合わせながら、あなたのことを思っている。
注釈
月冴え:雨上がりや秋冬の夜に、澄みわたった月光の鋭さを言う。清浄さや孤高の美。
手を合わせて:祈る仕草。相手への無事や再会を願う心情を示す。敬虔な気持ちや切実な願い。
胸に染むるらん:感情が身体に深く浸透するさまを表現。その光景や感情が心深くに沁みわたるのだろう。
解説
この短歌は、自然現象(雨上がりの月)と人間の感情(恋しい人を想う祈り)が重ねられている点に特徴がある。日本の伝統的な詩歌において「月」はしばしば恋心や祈りの象徴として登場する。本歌もその文脈にありつつ、西行や式子内親王などの「月と恋慕」を詠んだ和歌の系譜に連なる。雨上がりの清澄な月光は、浄化を象徴し、祈りの心情をより深めている。
深掘り_嵯峨
滴塵016の雨と孤独から一転、雨が上がり、清浄な月が現れることで、感情が浄化された境地を歌っています。
「手を合わせては君をや思う」という表現が秀逸です。愛する人への思いが、単なる恋情ではなく、仏を拝むような、あるいは祈りの対象としての敬虔な感情へと高められています。俗世的な愛の感情が、宗教的な崇敬の念に限りなく近づいた、精神的な愛の歌です。