雨だれの岩を穿つはその雫に 宇宙をすべて込めしゆえかな
照滴001
本文
雨だれの岩を穿つはその雫に 宇宙をすべて込めしゆえかな
形式
#短歌
カテゴリ
#5.自然・風景
ラベル
#雨 #宇宙 #自然現象 #精神
キーワード
#雨だれ #岩 #雫 #宇宙 #凝縮
要点
小さな雨滴が岩を穿つ力には、宇宙全体のエネルギーが込められているように感じられる。
現代語訳
岩を打つ雨だれの雫には、まるで宇宙すべてが込められているかのようだ。
注釈
雨だれ:自然の微細な現象。軒などから落ちる一滴の雨。極微(ごくみ:最小の単位)の象徴。
岩を穿つ:水滴が岩を長時間で浸食する様。時間をかけて物事を成し遂げる比喩。微小なものが持つ、絶え間ない力。
宇宙をすべて込めし:小さな行為にも無限の意味が宿ることを示す。雫の中に、宇宙全体の真理や力が凝縮されている。
解説
自然現象を通して、微小な存在の中に壮大な宇宙の法則や精神性を読み取る表現。雨だれが岩を穿つさまを通じ、持続や忍耐、宇宙の摂理を象徴的に描写している。
深掘り_嵯峨
この歌は、**「微の中に巨を蔵す」**という、密教や華厳の哲学を表現しています。物理的には小さな一滴の雫が岩を穿つのは、その雫が単なる水滴ではなく、宇宙全体(法界)の真理の力を宿しているからだ、という洞察です。
小さな努力や一瞬の行い(雫)の中に、無限の可能性と力が秘められているという、深い肯定と信仰が込められた、この歌集の冒頭にふさわしい哲学的メッセージです。