病み上がり乙女の白き細指の 磨(す)る墨の香ぞ書斎(へや)に漂う
滴塵039
本文
要点
現代語訳
注釈
病み上がり:病気から回復した直後。心身が研ぎ澄まされ、繊細な状態。
乙女の白き細指:清らかさ、繊細さ、そして美の象徴。
ちなみに、磨墨動作は病み上がりの乙女のように優しく行なうものである。 磨る墨の香: 精神を集中させる静謐な香り。
解説
深掘り_嵯峨
「病み上がり」の心身の鋭敏さと、「乙女の細指」という純粋な美が、「墨の香」という清らかな芸術を生み出しています。この香りは、外的な世界ではなく、閉じた書斎という内的な世界に漂っており、心身が清浄な状態で生み出される繊細な精神性を象徴しています。美と静寂が浄化を促す、一種の禅的な美意識を感じさせる歌です。