念ずれば花ぞ開くと誰か言う 竹は百年(ももとせ)優曇華三千年(みちとせ)
滴塵015
本文
念ずれば花ぞ開くと誰か言う 竹は百年(ももとせ)優曇華三千年(みちとせ)
形式 #声明風
カテゴリ #8.比喩・諷刺・諧謔・引用
ラベル #比喩 #諷刺 #花 #信仰
キーワード #念仏 #花 #竹 #優曇華 #稀少
要点
念じれば花が咲くという言葉は、本当は簡単ではないことを示す比喩。
現代語訳
「念じれば花が咲く」と誰かは言うが、竹は百年に一度、優曇華は三千年に一度しか咲かない稀有な花である。
注釈
念ずれば花ぞ開く:信仰や努力の結果を表す言葉。強い願いは必ず叶うという、世俗的な成功哲学や希望的観測。
竹の花:開花するのは非常に稀で、何十年、何百年かかるとされる。
優曇華:稀にしか咲かない花の比喩。三千年に一度しか咲かないとされる。
解説
信仰や努力の成果がすぐに現れるとは限らないことを、稀少な花の比喩で示す。単純な因果観に疑義を呈し、現実の困難を自覚させるユーモラスで諧謔的な表現。声明風の格調を借りつつ、理想と現実のギャップを批評する知的遊びも感じられる。努力や信仰の価値を否定するのではなく、「現実を見据えた上で信じることの大切さ」を示している。
深掘り_嵯峨
この歌は、「念ずれば叶う」という安易な世俗の言葉に対する、厳しい現実と真理の重さを突きつける反語的な歌です。
竹や優曇華という、何百年、何千年という途方もない時間をかけて初めて開花する植物を対比させることで、真の成就(悟り)や奇跡には、即座の願いではなく、悠久の時と深い因縁が必要であることを示しています。
安易な希望を否定し、忍耐と真摯さこそが真実への道であることを示唆する、求道的なメッセージが込められています。