咲き初めの花散らす雨君思い 独り寝る夜のしじまを破る
滴塵028
本文
咲き初めの花散らす雨君思い 独り寝る夜のしじまを破る
形式 #短歌
カテゴリ #6.情愛・人間関係
ラベル #雨 #花 #恋愛 #夜 #自然現象
キーワード #雨 #花散る #思い #独り寝 #しじま
要点
雨が咲き初めの花を散らす様子を、君への思いと重ねる。
現代語訳
咲き始めた花を散らす雨を見て君を思う。その雨は、独り寝る夜の静けさを破る。
注釈
咲き初めの花:新たな出会いや希望の象徴。
咲き初めの花散らす雨:短くも美しい花を無情にも散らしてしまう雨。無常の力。
しじま:静まり返った状態。深夜や心の静けさの比喩として用いられる。
独り寝る夜のしじま:恋しい人がいない夜の、静かで寂しい時間。
しじまを破る:静寂を乱し、激しい感情を呼び起こす。
解説
自然現象と恋愛感情を重ねることで、情愛の微細な感情と季節の移ろいを描写。雨と花の儚さが孤独な夜の心理とリンクし、短歌ならではの情景描写を強める。
深掘り_嵯峨
美しさの無常(花散らす雨)と、孤独な情念(君思い)が組み合わさった歌です。
厳しい自然の力(雨)が、孤独な静けさ(しじま)の中で「君を思う」という激しい感情を呼び起こし、心を乱します。これは、外的な無常の悲しみが、内的な孤独と情愛の悲しみを増幅させ、心の平穏を奪い去る様子を描写しています。仏教的なテーマが続いた中で、再び人間的な恋情の激しさに戻る、詩情豊かな一首です。