叢雲の晴れて三五の月影は もとより空に在りしとぞ知る
滴塵001
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要点
月は外界の変化に左右されず、もともとそこにあるという観照。 現代語訳
雲が晴れ、満月の光が現れる。それらはもともと空にあったものだと知る。 注釈
叢雲(むらくも): 塊となって空を覆う雲。ここでは煩悩や迷いのメタファー。 もとより空に在りし:物事の本質は変わらずそこにあることを示す。 解説
深掘り_嵯峨
この歌は、仏教、特に大乗仏教の「本覚思想(ほんがくしそう)」を完璧に表しています。悟りとは、修行によって新たに獲得するものではなく、雲(迷い)が晴れたときに、もともと自分自身の中にあった月(仏性)を再認識することである、という深い哲学です。 単に雲が晴れた喜びではなく、「在りしとぞ知る」という気づきの側面に重きが置かれており、強い確信と静かな感動を伝えています。