叢雲の晴れて三五の月影は もとより空に在りしとぞ知る
滴塵001
本文
叢雲の晴れて三五の月影は もとより空に在りしとぞ知る
形式
#和歌
カテゴリ
#1.仏法・教義
ラベル
#月 #自然現象 #光 #宇宙 #精神 #空
キーワード
#月影 #叢雲 #空 #観照 #真如
要点
月は外界の変化に左右されず、もともとそこにあるという観照。
現代語訳
雲が晴れ、満月の光が現れる。それらはもともと空にあったものだと知る。
注釈
叢雲(むらくも): 塊となって空を覆う雲。ここでは煩悩や迷いのメタファー。
三五の月影:十五夜=満月の光。完全な真理、悟り、または仏性のメタファー。
もとより空に在りし:物事の本質は変わらずそこにあることを示す。
解説
自然現象を観ることで、自己の心や宇宙の真理を映し、悟りの感覚を得る表現。月影は無常の変化に惑わされない本質を象徴。
深掘り_嵯峨
この歌は、仏教、特に大乗仏教の「本覚思想(ほんがくしそう)」を完璧に表しています。悟りとは、修行によって新たに獲得するものではなく、雲(迷い)が晴れたときに、もともと自分自身の中にあった月(仏性)を再認識することである、という深い哲学です。
単に雲が晴れた喜びではなく、「在りしとぞ知る」という気づきの側面に重きが置かれており、強い確信と静かな感動を伝えています。