半鐘を連打するなり君の瞳(め)に 射られし我れの心の臓かな
滴塵007
本文
半鐘を連打するなり君の瞳(め)に 射られし我れの心の臓かな
形式
#短歌
カテゴリ
#6.情愛・人間関係
ラベル
#恋愛 #比喩
キーワード
#半鐘 #瞳 #心臓 #射られる #愛情
要点
相手の視線に心が打ち抜かれるような情動を描写。
現代語訳
君の瞳に心臓を射抜かれたかのように感じて、半鐘のように心臓が激しく動悸している。
注釈
半鐘:火事や非常事態を知らせるために激しく打ち鳴らす鐘。心を打つ強い衝撃の比喩。
連打するなり: 激しく鳴り響く様子。ここでは心の激しい動揺や高揚。
射られる:恋愛的感覚の表現。矢で射抜かれたように、強く心を奪われたこと。
解説
視線による感情の揺さぶりを短歌で表現。情愛と身体感覚の結びつきを強調。相手の瞳という視覚を通して、心臓が射抜かれるような情動を描く短歌。恋愛や人間関係における心理的衝撃を身体感覚に落とし込むことで、読者も感覚的に共鳴できる表現。半鐘の比喩は、音と衝撃の重なりで感情の強度を増幅させており、情愛の喜びと痛みが同時に描かれる。単なる恋心ではなく、自己の心の動きや受け止め方を通じて、より深い心理描写が行われている。
深掘り_嵯峨
前の歌まで続いた仏教的な諦観から一転し、激しい恋愛の情熱を、非常事態を告げる「半鐘の連打」という切迫したメタファーで表現しています。
悟りを求める静かな心(滴塵001-006)が、愛する人の瞳という世俗の力によって一瞬で打ち破られ、激しい動揺(煩悩)に引き戻される様を描いています。これは、聖なるものと俗なるものの間の葛藤を示しており、この歌群全体の人間的な深みを増しています。