【滴塵集】
第1歌集 47首 滴塵集の特徴
#目次
1.仏法・教義(Buddhism / Doctrine)
叢雲の晴れて三五の月影は もとより空に在りしとぞ知る
萌えいづるいのちきらめく虹の端は 嵐の後の曼荼羅世界
探しても見つからないのか探すから 見つからないのか私の居場所
誰が口を彩る真言その御名(みな)は 君の口にぞ法を移さん
我が紡ぐ言の葉輝き虚空(そら)に消ゆ めでたかりけり仏の御名(みな)は
称うれば盈ちるも消ゆるも知らねども なおも紡がん仏の御名(みな)を
山のごと米粒のごときみほとけの 生じて消ゆるこの刹那かな
2.修行・実践(Practice / Discipline)
目と耳と汗骨皮肉と毛と脳髄 鼻汁汗便流れ停まらず
いかにいかにと問うなよ人に仏にも おのが胸に問え静かに熱く
3.信仰・信心(Faith / Devotion)
こころ澄まし香を聞くとき有り難し 一炷(いっちゅう)の間の極楽浄土
雲間より救いの御手を垂れたもう 掴まば掴めその蜘蛛の糸
4.無常・生死(Impermanence / Life & Death)
盈ちて欠く欠けては盈ちると知りながら さても恋しき三五夜の月
留まれと散りゆく桜に思えども 散り急ぐさま齢(よわい)の如し
5.自然・風景(Nature / Scenery)
雨上がり月冴え胸に染むるらん 手を合わせては君をや思う
ぬばたまの闇に浮かぶは白き月 闇深きこそ冴えわたるかな
風吹かば帳(とばり)の如なる桜かな 急ぎ散らずにしばし待ちませ
薄紅の色懐かしむ暇なく 散り果ててなお緑まばゆし
明けぬ闇 光ひとすじ差し入りて 花はひらかん 高野のみやま
君待ちて無常の闇に身を浸し 降るや虫の音叢雲の月
蓮葉(はちすば)はまだ夏ながら繁れるに 風に従い舞う蜻蛉(あきず)かな
蓮葉(はちすば)に置ける玉露(たまつゆ)清らかに 曇りなき月の影をば宿す
音もなく降りしきるかな青き雨 煙(けぶ)る月見ゆ夏の狭霧に
6.情愛・人間関係(Love & Relationships)
半鐘を連打するなり君の瞳(め)に 射られし我れの心の臓かな
金剛の箭(や)もて貫け我が心(むね)を 杵(しょ)もて貫く君の蓮華を
風吹かばうち捨てらるる扇かも 秋が来ぬとは思わぬものを
頬伝う涙拭う手無きものを 有りやと思ほゆ身こそ悲しき
君待ちて独り寝(ぬ)る夜の明けぬれば ショパンの調べか雨音を聴く
君と我れ二つの別なく溶けあいて 妙滴清浄菩薩の快楽(けらく)
咲き初めの花散らす雨君思い 独り寝る夜のしじまを破る
7.覚悟・布施・捨身(Resolve / Giving / Selflessness)
顧みれば守るものなど何もなし 捨てよ全てを己が身すらも
8.比喩・諷刺・諧謔・引用(Metaphor / Satire / Playfulness/ Allusion)
菴摩羅の乳房も今や皮袋 釈迦の金言偽りぞなき(テーリーガーター265)
念ずれば花ぞ開くと誰か言う 竹は百年(ももとせ)優曇華三千年(みちとせ)
春の日の書(ふみ)読む我れは若かりき 夢成らざるに虫の声聞く(少年老い易く…より)
憎むなよ怒りは壊す千劫の 修行も徳もまたたきの間に(菩提行経6_1)
名も高き流るる滝の音涼やかに なお聞こえけり心澄ませば(百人一首より)
逢はで観る夢に現に月の影 目を閉じてこそ明らかなるらめ(ゾクチェンパとしては、刮目せんか!と言いたいw)
神の御影思いだにすら現れず 思わざれども消えじ君はも(ダライ・ラマ6世の恋愛詩より)
9.日常・生活(Everyday Life)
涙って浄化作用があるのかな 念仏なのかな坐禅なのかな
枕をば峙て聞くなり高野四郎 我れはまどろむ密厳浄土に
病み上がり乙女の白き細指の 磨(す)る墨の香ぞ書斎(へや)に漂う
10.精神・悟り・心象(Mind / Enlightenment / Imagery)
明鏡の月のごとなる我が心(むね)に 金色の阿字 耀きて立つ
自ずからあるがままにて立ち昇る 虹のシャワーに我れ禊せん
みほとけは欠くることなき望月よ 我れと彼とは盃の月
掴(つか)めどもすりぬけ消ゆるみひかりは もとより我れを満たすものなり
うたかたの いのちはあつく 燃ゆれども まなざし涼しく 見つめるほとけ
この星に宿る命よ かの星にも いつくしまんかな 心あるもの
我が怒り雷(いかずち)となり我が涙 雨となりてぞこの地球(ほし)に注ぐ