律蔵の研究Ⅰ
律蔵の研究Ⅰ
経・律・論(印)→三蔵
経・律・論(印+中)→大蔵
余蘊
原始教団
第一章 律蔵の資料論的意義
一 問題の所在
二 阿含聖典成立の研究史
(1)教法の連続性 ←前提
(2)経典の真古とオルデンベルヒの7段階説
1波羅提木叉の「原形」発生、ダンマ文学の最古の発生
2波羅提木叉の註釈の形成
3経分別の編集、大品・小品の製作、
経典文学主要部の発生
4ヴェーサーリー結集(仏滅後100年)
5王舎城結集の伝説の発生、第一第二結集の記事の製作
6僧伽の分裂、アビダンマの発生
7パータリプトラ結集(第三結集)、カターヴァッツの成立
(3)リス・デヴィッヅ、ロウの10段階説
こぼメモ 釈尊の教え
「わかりやすい内容」を「おぼえやすい形」
パーリ三蔵の全体を含む
1教理を示す簡単な決まり文句
2現存経典の2つ以上に、同型で現れる挿話
3シーラ、彼岸道品、八偈品、波羅提木叉
4長部、中部、増支部、相応部
5スッタニパータ、長老偈、長老尼偈、ウダーナ、クッダカパータ
6律の経分別、犍度部
7ジャータカ、法句
8義釈、如是語、パティサンビダー
9餓鬼事、天宮事、アパダーナ、行蔵、仏種姓
10論蔵(最初は人施論、最後は論事)
アショーカ王時代までに完成
(4)宇井博士の九分教説
・経律の現在形成立はアショーカ王以後
(5)和辻博士の作品としての分析説
・文学的伝承と教理的伝承
・経典作者の制作動機を問題にする
20220110(1)
三 律蔵の資料論的特質
(一)仏滅年代論とアショーカ王の位置
経典成立の年代を決定することの困難性
ポイント
①部派分裂の順序、年代の確定
②アショーカ王時代の仏教の把握と、アショーカ王と仏入滅との年代的隔たりの確定
博引傍証
西洋(主にヤコービ説):前477、483
→アショーカ王即位は仏滅後213くらい
宇井説:386
→仏滅後116
20220110(2)
(二)アショーカ王時代の経典の状態
カルカッタ・バイラートの法勅(七種の経典)
→四阿含の分類は未成立
*耳底
直弟子の時代を仏陀滅後30年とする
アショーカ王即位の30年くらい以前に「仏説」としてまとめられた?
仏滅ー(30年)ー仏説(経)形成ー(30年)ーアショーカ王即位
*仏説形成期間→宇井説56年、ヤコービ説158年
遺法相承
・有部:大迦葉→阿難→末他地→商那和修→優婆毱多→
・セイロン伝の律の相承:ウパーリ→ダーサカ→ソーナカ→シッガヴァ→モッガリプッタ
20220111
ピタカ、スッタ、ニカーヤなどの形式はアショーカ王以後長くとも100年以内に成立した。
(三)結集伝説の価値と原始仏教の定義
七百会議・・・議題は「十事」。摩訶僧祇律では「五浄法」
会通:かいつう
*wikiは「原始仏教」ではなく「初期仏教」
20220112
(四)異本の比較研究と律蔵
パーリの5ニカーヤ…上座部の伝持
漢訳
中阿含 …有部
雑二阿含…有部
長阿含…法蔵部
別訳雑阿含…不明
増一阿含…大衆部→不明
・律蔵は、僧伽の組織や規則を明かすことが目的。
・律蔵伝持者の個人の創意や判断によって、規則を改変したり、組織の説明を変更して、伝持することは簡単にできることではない。
・規則の改変は、僧伽全員の承認を必要とする。
・阿含の場合には、伝持者の主観的判断によって伝承の内容に改変を加えうる余地があるが、律蔵にはこのような余地が非常に少ないといわねばならない。
・広律において浮動しやすい部分は「因縁譚」。因縁譚は律の条文を制定するに至った来歴を示す物語。主として波羅提木叉の註釈の部分に含まれる。犍度部にも若干存在する。物語=文学的=改変や増広が容易。
・そのため異本の比較においても合致しない部分が多い。実際に制戒の因縁となった歴史的事実を含んでいる場合もあると思われるが、しかし、多くの場合は形式を整えるために仮託された物語であることが多いようである。
四 研究の順序と資料
(一)研究の順序
・伝持の部派について伝承の面から研究する
・律蔵の内容の検討から伝承を吟味する
律蔵の資料
①波羅提木叉②羯磨本③広律④註釈文献
広律
・経分別・・・波羅提木叉の註釈
(①因縁譚②条文解釈③判例適用)とくに①の中に含まれるアパダーナ(教訓譬喩)
・犍度部・・・羯磨本と関係する
→受戒犍度の中の仏伝
(二)研究資料の種類
(三)パーリ律関係の資料
23:54 2022/01/15
(四)チベット訳律蔵
(五)説一切有部に属する梵文断片
22:08 2022/01/16
(六)根本説一切有部所属の梵本
(七)大衆部所属の梵本
0:57 2022/01/18
(八)西域語断片
(九)梵語文献の性格
23:40 2022/01/18
第二章 漢訳律典翻訳の研究
一 五大広律の翻訳とその意義
(一)漢訳律典の新古検別の標準としての五大広律
(二)十誦律 61巻
慫慂:しょうよう:そばから誘い掛け勧める
(三)四分律
1:03 2022/01/28
(四)摩訶僧祇律 40巻
僧祐の序によると
婆麁富羅律=摩訶僧祇律
=大衆
有我を説き、空相を説かず
↑犢子部(非即非離蘊我)
※僧祐の誤解。
摩訶僧祇律は犢子部の律ではない。
結論
法顕が西域で写得、摩訶僧祇律と呼ぶ。
大衆部の律。
14:02 2022/02/21
(五)五分律
化地部の律
法顕が師子国で得た
寿星
和醯
(六)迦葉維律(飲光部)
(七)根本有部律
(八)広律の訳出と十誦律の意義
二 広律の訳語の標準性と十誦律の位置
(一)鼻奈耶の訳出は十誦律以前
17:06 2022/03/02
(二)敦煌本『有部戒経』と古訳の戒本k*建初
(三)四大広律の訳語
羸
不受棄捐
波羅移→波羅夷→波羅市迦
対首懺
滅諍法←問題点(論争点)の処理
※鼻奈耶の「悔過法」は不適切。
普通は波羅提提捨尼を悔過法と訳す
16:37 2022/03/03
(四)翻訳の三段階と十誦律の位置
三 古訳時代の律典の吟味
(一)古訳時代の訳出とされる律典
(二)安世高訳出律典は存在せず
(三)支謙訳、戒消災経の吟味
(四)曇諦、康僧鎧に帰せられる両羯磨本、ならびに求那跋摩訳、四分羯磨・四分尼羯磨の検討
(五)曇柯迦羅の『僧祇戒心』について
16:54 2022/03/10
四 広律以後の訳出律典
(一)律典の種類
※大部分の律典は旧訳時代の訳出
(二)戒経の翻訳について
(1)十誦・僧祇・五分の三本の戒本の関係※轡ヒ。くつわ
犛ボウ。リ。からうし
※犂 レイ。ライ。すき
(2)有部系比丘尼戒本の訳出
(3)根本有部律系戒本
(4)五分系戒本
(5)大衆部系戒本
(6)四分系戒本
*四波羅夷→四棄法
(7)飲光部の戒本
(8)その他
*四波羅夷→四棄捐法
(三)羯磨本について
(四)律の註釈書の翻訳
(五)傍系律典
(六)五戒経・十戒経について
(七)律蔵研究の資料としての漢訳律典
*まとめ
*五大広律
14:15 2022/03/16
第三章 経分別の成立より見た諸律の新古
一 経分別の組織
(一)経分別の構造
*パーリ律蔵
=経分別+犍度部+附随
*経分別=大分別(比丘分別)+比丘尼分別
*経分別→因縁譚+条文解釈+判例適用
*経分別=経(この場合は波羅提木叉)の註釈
*波羅提木叉の個々の条文をスッタと呼ぶ例がある。
*経は経分別に先行する。
*律は随伴随制
*「経分別」という語は、部派分裂以前には存在しない?
(二)経と経分別の関係
(三)経分別成立の時期
(四)経分別広説の形式と十利
22:21 2022/06/20
第三章 経分別の成立より見た諸律の新古
一 経分別の組織
(一)経分別の構造
パ律蔵
1経分別(スッタビヴァンガ)
(1)大分別(=比丘分別)
①因縁譚a(最初の学処の制定)
*不完全なら&bc…(別の実例による学処の改制)
→確定した条文が示される
※布薩で誦出されるのは確定条文のみ
②条文解釈…語句の定義
③判例適用(実例による判例解釈)
※紛らわしい事件において条文をいかに適用するか
(2)比丘尼分別
2犍度部(カンダカ)
3附随(パリヴァーラ)
五分律
(1)比丘戒の経分別(1~10巻)
(2)比丘尼戒の経分別(11~14巻)
(3)受法以下9法(15~22巻)
(4)滅諍法と羯磨法(23~24)
(5)破僧以下10法(25~30)
※3分以下が犍度部
四分律
(1)比丘戒の経分別(1~21巻)
(2)比丘尼戒の経分別と受戒・説戒・安居・自恣の前半の四犍度(22~37)
(3)自恣犍度の残りと皮革犍度以下14犍度(38~49)
(4)房舎犍度など4犍度と調部、毘尼増1(50~60)
十誦律
(1)~(3)比丘戒の経分別(1~20巻)
(4)七法
(5)~(6)八法
※(4)~(6)犍度部
(7)比丘尼戒の経分別(42~47)
(8)~附随
※500犍度700犍度に相当するものを含む
摩訶僧祇律
(1)比丘僧戒法(1~35巻)
①経分別(1~22)
②雑誦跋渠法(23~33)
③威儀法(34~35)
※②③が犍度部
(2)比丘尼戒法(36~40)
根本有部律…全体として膨大な量
☆漢訳では「分別」となっていないが、蔵訳では「分別」となっている
『根本説一切有部毘奈耶』50巻…比丘の経分別
※蔵訳では比丘戒経の註釈は「律分別」
『根本説一切有部苾蒭尼毘奈耶』20巻
※蔵訳では比丘尼戒経の註釈は「比丘尼律分別」
経分別とは経の註釈。
プラーティモークシャスートラ。
→スートラ
波羅提木叉が経であるから、その註釈は経分別
※律は随伴随制の理念
(二)経と経分別の関係
戒序の咒出
四波羅夷の誦出
・因縁譚
・戒文(註釈)
・条文解釈
四波羅夷についての羯磨文 ←経分別に含まれない。
☆漢訳諸律は経分別の名を持たないが、実質的には経分別の形になっているといってよい。経分別と呼んでよい。
(三)経分別成立の時期
「経分別」という用語は古いとは言えない。原始仏教時には確立していない。
(四)経分別広説の形式と十利
「十利のために」律の一々の条文は制定された。宗教的倫理的妥当性
十利
(1)摂僧←僧伽の結合
(2)令僧歓喜←僧伽の品位を保つ
(3)令僧安楽住←集団生活を円滑ならしめる
(4)悪人調伏←法律と類似の強制力
(5)善比丘安楽住←(3)とを個人の立場から示す
(6)現世の漏を断ぜんがため←煩悩を断ずる力=出世間性
(7)未来の漏を断ぜんがため←(6)と同
(8)未信者を信ぜしめる←教化力
(9)已信者の信を増大せしめる←(8)と同
※世間を越えた規範。世間はこれを実行し得ない。しかし世間もこれを真理として帰依する。律はせkん否定的でありながら、しかも客観性と妥当性とを有する。
(10)正法久住(梵行久住)←仏法伝持の根源力
随伴随制
→因縁となった比丘は制戒以前なので無犯。これが通則。
=仏陀の制定が法規の根源。制定なきところに罪はない
アヴァダーナ(教訓譬喩)
(五)因縁譚とアヴァダーナの結合
因縁譚…本来は事実の集録であるべき、犯戒を防ぐ教訓的意味
増広、改作、新作…→事実の物語をより分けることは不可能
☆仏陀の滅後間もないころには「佛の所制なるが故に」という理由だけで戒律は守られたであろうが、年代が経つに従ってそれだけでは不十分となり、これを基礎づけるために「業の倫理」が用いられるようになった→業報の物語が因縁譚に多数挿入→因縁譚が改作され…
そのため因縁譚は事実を示すよりも、物語性が強まった。
18:56 2022/07/12
二 アパダーナと譬喩
(一)古典梵語におけるアヴァダーナ=アパダーナ
*行為…偉大なる行為・英雄的行為(偉業・偉勲)
*原意は?
*仏教では?
(二)仏典の用例としてのアヴァダーナ
*十二部経(説一切有部、四分、長阿含、五分、増一阿含の伝持の部派。諸多の大乗経典)の一支としてのアヴァダーナ(譬喩)
*九分経(パーリ上座部。古い分類))にはアヴァダーナ、因縁、論議(ウパデーシャ)は含まれていない
*アヴァダーナとは、行為と、避けがたいその結果との間に存する連鎖(結合)を、諸々の事実によって示す教訓である。=業(カルマ)の物語
*善業善果、悪業悪果
*仏陀の前生である菩薩が主人公の場合は、アヴァダーナ=ジャータカ
*未来を予言する物語としてのアヴァダーナ=授記経(ヴィヤーカラナ)
*アヴァダーナ≒ニダーナ(因縁)
*アヴァダーナ≒本事(イティヴリッタカ。出来事、歴史)
*パーリ語のイティブッタカ…sktイティウクタカ(如是語)、イティヴリッタカ(出因縁)
(三)アパダーナを「偉大なる行為」と解釈することについての疑問
(四)譬喩としてのアパダーナ
*アヴァダーナには譬喩の意味はない。チベット訳では「物語」。
*アパダーナには譬喩の意味。十二部経としてはアヴァダーナよりもアパダーナの方が原始形
律蔵の研究18☆譬喩の三種
1:43:25
三 譬喩の三種
(一)ウパマー譬喩
漢訳の譬喩の原語は3つ
①ウパマー譬喩…譬え話
②ドゥリシュターンタ
③アパダーナ
(二)譬喩者
「喩」(ドゥリシュターンタ)→ドゥリシュターンティカ(譬喩者)
(三)アパダーナ譬喩
「世間相似の柔軟浅語」≒むずかしい理論によらず、世間一般に通用する常識的な、しかも興味のある平易な物語
本(譬えられる教理:義)末(譬える譬喩:解)次第して説くもの。
四 大アバダナの成立より見た律蔵序分の新古
(一)大アバダナと大本経
(二)律蔵序分と過去七仏 →(拡大)→『長阿含』大本経などの過去七仏の伝記へ
波羅提木叉は正法の生命、正法久住の根本。(ただし随犯随制)- - - - →過去仏の梵行久住不久住の事績に照らして明らかにする。
(三)律蔵序分の新古
古)序分有
①パーリ
②四分③五分 …部分部分によって相違あり
④僧祇
新)序分無
⑤十誦⑥根本有部
律蔵の研究19☆アパダーナの発達と律蔵【律蔵の研究Ⅰ了】
1:23:23
五.アパダーナの発達と律蔵
(一)長アパダーナ
(二)欲阿波陀那
(三)億耳阿波陀那
(四)二十億阿波陀那
(五)菩薩阿波陀那
(六)アパダーナより見た律蔵の新古