肩こりと漱石
from ダルちゃんとこころ
問題
「肩こり」は夏目漱石の造語。『門』に出てくる
検証 wikiその他
「肩が凝る」という言葉は、夏目漱石による造語との説があり、さらに、それ以前はいわゆる肩こりの症状を特に指す用語は日本語になく、漱石が「肩こり」という言葉を造って、その症状を自覚するようになったとの言説がある
『門』(1910年新聞掲載)の以下の箇所が初出とされる。
「もう少し後の方」と御米が訴えるように云った。宗助の手が御米の思う所へ落ちつくまでには、二度も三度もそこここと位置を易えなければならなかった。指で圧してみると、頸と肩の継目の少し背中へ寄った局部が、石のように凝っていた。御米は男の力いっぱいにそれを抑えてくれと頼んだ。— 夏目漱石、門
しかしながら、『門』の発表とほぼ同時期には、「肩が凝る」を現代語と同じ用法で使用している例は見られるし、それ以前より、「痃癖(けんべき)の凝り」といった表現が見られるため、この表現の源流を漱石のみに帰するのは疑問がある。
一體唐は詩賦文章の時代で、經學の如き肩の凝るものは嫌ひであつた。
— 狩野直喜、『日本國見在書目録に就いて』(1910年)
また、『それ以前はいわゆる肩こりの症状を特に指す用語は日本語にない』なる言説は、『門』以前にも樋口一葉が「肩が張る」と言う表現を用いており、また、そもそも、1686年には、当時の医学書『病名彙解』において「痃癖(けんべき)」として紹介されており、その俗語が「うちかた」であるとの記述があって、妥当とはいえない。従って「肩こり」と言う言葉が生まれたゆえ、その症状を自覚するようになったと言説は、正確性を欠く。肩こりや腰痛は古くから鍼灸治療の対象であった。
「肩こり」という言葉が使われ始めたとされる以前の文献にも、樋口一葉の『われから』などに「肩をたたかせて、こる肩を」という記述が見られる。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000064/files/55675_69583.html
ある時は婦女どもに凝る肩をたゝかせて
( 1896(明治29)年5月10日)
ポイント
①「肩こり」は夏目漱石の造語か
②夏目漱石の造語により認識されるようになった概念か(それまで「肩こり」に相当する概念がなかったのか)
③夏目漱石の小説によって「肩こり」という言葉が広まったのか
①怪しい 
②誤り 
③そうかも?でも、定着したのは昭和みたいだ。ちなみに夏目漱石は、大正5年没。
結論
「肩こり」が夏目漱石の造語というのは俗説。
また、「肩こり」という単語自体も出てきていない