学習者に重要なもの:オタク力
 Threadsでおすすめに挙がってきたあるピアニストの投稿をなんとなく見たらなんとなく気になって、プロフィールから辿って1本のYoutube動画を見た。
https://youtu.be/Ptn0f1RwrXM?si=WF19YSfAKOJwyUq9&t=833
 音楽への関心が薄い人がピアノを学んでいるというのが矛盾に感じられて仕方ないのだけれど、さだまさし氏のように写真よりカメラそのものの方への興味が強いという人もいる(昔のテレビで見た個人的な記憶なので違っていたらごめんなさい)ので、世の中はおもしろい。
 関連動画の中に様々なピアノを弾き比べた動画が並んでいた。そのサムネイルの中にフランスの知らないメーカー名が書かれていて、見てみることにした。
https://youtu.be/3oHet13pofQ?si=5tPnBB1onq6XoBQe&t=265
 最初に紹介されているのは、ガヴォーというメーカー。単調な感じであまり惹かれなかった。次に流れてきたエラールの音色は、いかにもフランスという雰囲気。パリなど行ったこともないのに情景が浮かんできて、なんだろうと思ったらデュフィのこの絵だった。
https://scrapbox.io/files/65444e8dafd92e001c8e557c.jpeg
出典:デュフィと音楽 | ムーサ ピアノサロン / ピアノスクール
 調べてみると、エラールというピアノは18世紀から19世紀にかけて製造されていて、フリードリヒ・ブルグミュラーの存命期間と重なる。ブルグミュラー自身はドイツ人だが、1832年以降はパリに拠点を移し、そこで『25の練習曲』『18の練習曲』を編纂したとされる。蒸気自動車がやっと実用化されたくらいのこの時代に、ピアノをドイツからフランスに運ぶのも大変と言うか事実上無理だっただろうから、彼もフランス製のピアノを使っていたのかもしれない。そうだったとしても、フランス国内での納品はどうしていたのだろう?バラバラに運んで現場で組み立て? 謎は尽きない。などと思いを馳せながら動画を探してみたら、ぴったりのものを見つけた。
https://youtu.be/a8x7IUgbWBo?si=4gBLVah9RBwQh1UO
 ブルグミュラーの練習曲は日本ではとてもポピュラーで、YouTubeやInstagramで探すと非常に多くの日本人による演奏動画が見つかる。ごく自然なこととして、それらのほとんどでヤマハかカワイのピアノが使われている。どれも素晴らしい演奏ばかりなのだけれど、このエラールでの演奏には、ヤマハやカワイにはない空気のようなものが伴っている。あぁ、こうやってブルグミュラーも作曲していたのかなぁなどという思いが否応なしに湧いてくる。いつか機会があれば自分も弾いてみたい。
 ピアノをやらない人から見たら、子どものサッカーの練習試合の傍で動画やWikipediaを漁りながらiPhoneに齧り付いてこんな文章を書いている人は、間違いなくオタクだろう。演奏の腕はなかなか上がらないけれど、オタク力だけは少しばかり持ち合わせているのかもしれない。
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#2023/11/03 #ピアノ #ブルグミュラー
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