零度のエクリチュール
言語の自律性と社会的道具性の中点(零点)にたつ乾いたエクリチュール。
エクリチュールは、共同体の成員によって使用される言語(langue)と、個々の作家の体の奥からにじみでてくる文体(style)の中間に位置するものとして捉えられる。それは、過去の文学的記憶、現社会に対して取る態度、歴史経済状況、文学に対する姿勢などのせめぎ合いによって規定されてくる。歴史的には、17世紀半ば、国語の成立に伴い、それまでかなり自由に扱うことのできた言語が規制として意識されるようになって、それに立ち向かう問題意識から生まれてきた。
6。カミュに代表される中性的(無垢の)エクリチュール、社会的性格を失い、文体がないという文体といえる。他と異なり、社会的意図を示唆する作家の手先をまったく見せることのないのが特徴、それゆえに零度のエクリチュールと呼ばれる。
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