エズラ・パウンド
1885年生まれ。アメリカの詩人・批評家。ペンシルヴェニア大学を卒業後、広くヨーロッパを旅行。つねに現代詩の最前線に位置し、実験的な詩作をつづけた。1972年イタリアにて歿。代表作は『ピサ詩篇』を含む『キャントーズ』である。
モダニズムの推進者としてのパウンドは、客観的にみて誰もが否定しえない巨大な影響を誇っている。イマジズムやヴォーティシズムといった運動を通じて、20世紀の詩を19世紀以前のものから決定的に隔てる上で革新的な役割を果たしたのはパウンド自身だったし、ジェームズ・ジョイス(James Joyce)、ウィンダム・ルイス(Wyndham Lewis)、ウイリアム・カーロス・ウイリアムズ (William Carlos Williams)といった20世紀を代表する詩人たちに巨大な影響を与え、またE.S.エリオットを世に送り出したのもパウンドだったといってよい。
パウンドが詩の革新の上で武器としたのは、極端に圧縮されたイメージを短い言葉で表現するやり方だった。パウンドはそれを日本の俳句などの短詩から学んだと自ら言っている。彼の初期の作品を代表するとされる「パピルス」や「地下鉄駅にて」などは、わずか2行乃至3行からなる、それこそ短かすぎる詩形であり、しかも意味がないと思われる言葉を混ぜながら、豊かなイメージを紡ぎだすことに成功している。まさに英語で書かれた俳句というべきものだ。