「Chapter02 メモはとればとるほど、財産になる」を読む
英語版:Everything You Need to Do
rashita.iconChapter01のタイトルと対になっている
Chapter02 メモはとればとるほど、財産になる
あなたのとったメモが、そのままアイデア集になる
メモはあなただけの財産になる
メモには、「走り書き」と「文献メモ」と「永久保存版のメモ」がある
将来のための無数のアイデアが貯めておける
この章はどんなことが書いてあるか
あなたのとったメモが、そのままアイデア集になる
白紙から書きはじめるわけではなく、有効な精霊(ないしは助手)が原稿の下書きを書いてくれている状況をイメージしてみる
その原稿はすでに十分に形になっている
主張が十分に展開されている
参考文献、引用、さえわたるアイデアが揃っている
あとは手直しして提出するだけ
もちろん、やることはまだたくさんある(手直しして提出するだけではない、ということ)
スペルミスを見つけるような作業だけでなく編集が必要
いくつかの文章を書き直す
冗長な部分を削る
主張の穴を埋めるために文や節を書き加える
とはいえ、これは明確になっているタスク
ゴールが手の届く範囲にあるのでやる気にもなる
rashita.iconこうした作業を行っているうちに構成が変わるということは起こらない、という想定
では、手直しではなく下書きそのものを準備しなければならない状況なら?
アイデア、主張、引用、長く練り上げられた節、書誌情報、参考文献が揃っていたら仕事はやりやすい
単に揃っているだけでなく、わかりやすい見出しがついた章の順に並んでいる
やるべきことは、完璧な文章を書くことではなく、調査したりアイデアを出したりする必要もなく、目の前のアイデアを一連の文章にすることだけに注力すること
rashita.iconここでの「アイデア」は何を指しているのか
これも明確なタスク
すぐれた結果を上げるにはある程度の労力をかけなければならない
rashita.iconある程度とはどの程度だろうか。実はかなりハードな作業ではないか
主張が抜けている段落を埋めたり、メモを並べ直したり、関係のなさそうなメモを抜いたりする
rashita.iconごく普通の、メモを使った執筆風景に思える
下書きのために、すでに存在するメモを順番に並べるのも、すぐにできるタスク
特に、メモの半数がすでに正しく並んでいれば簡単
rashita.icon本当にそうだろうか。「正しく並んでいる」とはどういう状況のことだろうか
擬音のつながりや、豊富な素材やアイデアの詰まったファイルをくまなく探すのは結構楽しいものです。文を練り上げたり、難しい内容を理解したりといったときに必要になるような、全身全霊の注意力は必要ありません。
rashita.iconこれはたしかにそう。
リラックスしていて、遊び心すらも持てる状態
視野をある程度広く持ってはじめて、つながりやパターンが見えてくる
rashita.iconこれもたしかにそのとおり
ツェッテルカステンを使うと、一連の長い議論がすでに蓄積されている場所がどこなのかが、はっきりわかる
それが執筆やアウトプットのためのすぐれた起点になる
rashita.iconたぶん、ここが一番重要なポイント。上記を言い換えればカード箱の中に「一連の長い議論」が蓄積されている必要がある。単にカードを貯めるだけではこの用途には使えない。
rashita.iconようするにここまでの話は、執筆という大きなタスクを、すぐにできる実行可能なタスク群に分解して進めていくこと、そのために日常的なメモ作りが役立つ、ということが話されている。
これ自体はよくある話だが、ルーマンの方法はそのメモが覚え書きメモではなく「一連の長い議論」が書かれている点が特徴と言える。
こういうのは、よく似た別の手法と比べてみることで、はじめてその特徴が浮かび上がる。本書はルーマンの方法の素晴らしさを説こうとするがゆえに、他の似た方法と比べての分析が薄い。
メモはあなただけの財産になる
メモを書くことは簡単なことで、主な仕事ではない
主な仕事とは、「考え、読み、理解し、アイデアを思いつくこと」
メモはこれを形ある結果にしたものにすぎない
rashita.iconそれはそうだが、まさにじゃあそれをどうするのか、というのが問題になる。むしろその能力こそが仕事の成果を決めるということになるだろう。
rashita.iconもう一つ、書くことで考えるというならば、考えるためには書くことが必要で、ということは書くことは簡単なこと、主な仕事ではない、という主張は矛盾していると感じる。
書くことは、考え、読み、学び、理解し、アイデアを生み出すことを最大限に促進します。アイデアについて考え、読み、理解し、アイデアを生み出すことに適切に取り組むなら、どちらにしてもペンを握りしめなければなりません。メモはこうして蓄積されていきます。
rashita.iconこの主張はまったくもって正しい。だったら、メモは簡単だとか主要な仕事ではないと主張するのは変ではないか。
rashita.iconというよりも、こうして考えて書く(Note-taking)ことが一定の訓練が必要なスキルである、という主張がなく、簡単なことだと述べられている(あるいはそういう印象を与えている)点は大きな問題であると感じられる。
長いあいだ学びつづけたければ、内容を書き留める必要がある
何かを本当の意味で理解したいなら、自分の言葉に直さなければなりません
メモのポイントは、自分の言葉で書くこと
rashita.icon自分の言葉で書けているなら、それは理解していると言える、ということは言える。上の表現の問題は不十分、不理解な言葉であっても、自分で言った(言葉)であればそれでいい、という風に捉えられてしまうこと
rashita.iconこれは「自分の言葉で書く」ということが具体的に定義されていないから起こる
思考は、頭のなかと同じくらい紙の上でも行える。
rashita.iconそこで行われている「思考」は同一のものなのか
「紙やコンピューターの画面に書いたメモは(中略)現代物理やその他の知的試みを用意にするのではない。可能にするのだ。
ニール・レヴィーの発言。
この発言は「頭のなかと同じくらい」できるという話ではなく、頭の中でできないことができるという文脈だろう。
「脳内部のプロセスがどのようなっていても、脳が外部の足場に依存している範囲を、(本人が)理解する必要がある」
同じくレヴィーの発言
つまりどの専門家も、アイデアは表に出す必要があるということ、そのためには書かなければいけないと述べているのです。
rashita.icon上の引用はそんなことを述べているのだろうか。特に二つ目の発言は、文脈が異なっていると思う。自分の思考の限界を把握しておけ、ということだろう。
rashita.iconもしこれが、既存の文献を「自分の文脈に置き換える」というような操作の結果として生まれているならば、こういう文脈違いの引用が増えることを意味しないだろうか。
同様のことは、リチャード・ファインマンも、ベンジャミン・フランクリンも強調している
書いていれば、読んだ内容を理解する可能性も、学んだことを覚える可能性も、意味のある思考ができる可能性も高くなります
rashita.iconこれは間違いなくそう
そして、せっかく書くなら、今後本を出すときのための資料を蓄積しておくのに越したことはありません。
rashita.iconこれは趣味嗜好の判断だろうし、「効率主義」の考え方が顔を出している
rashita.iconそこで行われる「書く」とその効果が同一である保証はない。
「せっかく〜〜だから、そのために〜〜しておく」という考え方自体が、ある種計画思考なのではないか。
rashita.iconここは脱構築のメスを入れられると思う
考え、読み、学び、理解し、アイデアを生み出すことは、物書く人や勉強の中心的な仕事
rashita.iconまさしく
これらの活動をすべて向上させるためにメモをとれば、強い追い風に乗れるはずです。賢くとったメモは、あなたを前に進めてくれる。
次の項では、ツェッテルカステンの全体の流れを紹介する
rashita.iconまた話が飛ぶ。章を変えたらいいのに。
メモには、「走り書き」と「文献メモ」と「永久保存版のメモ」がある
rashita.iconここではツェッテルカステンの全体の流れが紹介されると前項で予告されていた
流れ
1. 日常生活で走り書きメモを書く
頭に浮かぶあらゆるアイデアを捉える
そのための道具を常に携帯しておくこと
どう書くか、何を書くかはあまり気にしなくていい
頭の中に入っていることを思い出すきっかけに過ぎない
一ヶ所にまとめておいて、後で処理する
rashita.iconGTDと同じコンセプト
アイデアがすでにまとまっていて、十分に時間があるときは直接「永久保存版のメモ」に書き起こしてメインのツェッテルカステンに入れてもいい
2. 「文献メモ」を書く
何かを読むたびに書く
忘れたくないこと、自分の思考、後で文章に使いたいことなどを書き留めておく
長さはごく短く、内容は厳選し、自分の言葉で書く
引用する場合は、特に念を入れて選ぶ
読んだ言葉の意味を真に理解するために、書き写すのはやめ、自分の理解で書くこと
rashita.icon当たり前だが、引用する場合は一字一句間違えずに書き写す必要がある。自分の言葉で書いていると、正確な引用ができなくなるので注意。特に、最初に文脈を間違えて言葉にしてしまうと間違いが永久に保存されてしまう。この点を理解しておかないと、論文執筆などには役立たなくなる可能性がある。文芸批評などでは、特に言葉をそのまま引用する必要があるので、メモのスタイルはそれを考慮する必要がある。
これらのメモを書誌情報と一緒にまとめる
このメモは文献管理システムに入る
つまり、メインのツェッテルカステンではない
このメモを元に、メインのツェッテルカステンに入れる「永久保存版メモ」を書く
3. 書いたメモの内容を整理する
1と2で作成したメモをひととおり見て、自分自身の研究、思考、興味にどのように関係するかを考えながら、内容を整理して書き直す
いいたいことを忘れてしまう懸念があるので、一日に一回程度が理想
rashita.iconGTDにおけるinboxの処理に相当
これはすでに入っているメモを見ることで簡単にできる
rashita.icon本当だろうか
「自分が興味を持っていることしか入っていないから」と説明されているがあまり説得されない
たぶんここがうまくできないと、ツェッテルカステン自体がうまく回らない。にも関わらず、具体的な説明が少な過ぎると感じる。
ここでやることはアイデア・主張・議論の収穫ではなく、発展させること
新しい情報は、既存の情報に照らして、対立するか、修正するか、補足するか、付け加えるものか。
アイデア同士を組み合わせて、何か新しいことを生み出せないか
アイデアを見て、どんな疑問が浮かんでくるか。
思いついた一つのアイデアに対して一つだけメモを書く
他人に読んでもらうつもりで書く
主語と述語を入れて文章を書く
出典があれば明記して文献メモにリンクを貼る
関連するメモとリンクを貼る
できるだけ正確、明確、簡潔に書く
rashita.iconこれも非常に難しく、訓練が必要。
rashita.iconここでの「アイデア」は何を指しているのか。疑問なども含まれているのか。
仮に10個も20個も「アイデア」を思いついたらどうするのか。かなりの時間がかかると予想するが。
仮に元のメモが走り書きメモならばそれは捨てる。文献メモは文献管理システムに入れる。
ここで作ったメモは、メインのツェッテルカステンのフォルダやボックスにしまう
rashita.iconツェッテルカステンの中にはフォルダを作らないが、ツェッテルカステンというフォルダは作る。「フォルダ」という概念を完全に拒絶しているわけではない
4. 新しい永久保存版のメモをメインのツェッテルカステンに入れる
rashita.icon日本語版では「永久保存版のメモ」について明確に定義されていないが、3で書かれたメモのことだろう。
a. それぞれのメモを、関連するひとつまたは複数のメモの後ろにしまい込む
デジタルなら複数のメモの「後ろ」に配置できる
rashita.icon本当だろうか。カード作成時に任意のIDが割り振られるのではないか?それは「後ろ」に配置したことにはならないだろう。トピックをまとめるインデックス上でしかその「後ろ」は存在しないのではないか
rashita.icon意図的に、前のカードへのリンク、後のカードへのリンクを貼れば疑似的に順番に並べたことにはなる。
ルーマンのように紙とペンを使う場合は、一番適切だと思われる場所を決めて、番号を振る
rashita.iconこの作業を著者はかなり軽く扱っている気がする。「一番適切な場所だと思われる場所を決める」という知的作業はかなり重要で、あたまをしっかり使う必要がある。そこで議論の流れが形成されることは疑いない。単に関連するものを集めているわけではなく、議論に組み込むことがここでは行われているはず。
とにかく、新しいメモがどのメモと直接関連するかを考える
rashita.iconこれはCosenseを使うときでも同じ
どのメモとも直接関係していない場合は、最後のメモの後ろにファイリングする
rashita.iconデジタルにおける「最後のメモ」の「後ろ」とはどこを指すのだろうか。著者はデジタルで実際どのように運用しているのか?
b. 関連するメモにリンクを追加する
rashita.icon新しく追加したメモではなく、そうしたメモと関連するメモとして扱われたメモにリンクを追加するということだろう。
c. このメモを後から探せるようにする
そのために索引もつくる
議論やトピックの起点として使うメモを中心にリンクする
5. トピック・疑問・研究プロジェクトのテーマはシステムからボトムアップで発展していく
こうやって、システムに入っているもの、欠けているもの、浮かんでくる疑問を確認する
rashita.icon「こうやって」というのは何を指している?上記の手順のことだろうか
自分の主張を疑い、補強するためにさらに文献を読み、新たに学んだ情報に基づいて主張を発展させます。
rashita.iconやはり「主張」がキーワードになっている。にもかかわらず、ここまでの言及は薄い(ほとんどないといっていい)
ポイントはすでに自分のもっている知識の上に蓄積していくこと
6. しばらくすると、テーマを決められるくらいアイデアが十分に深まっていく
すでに主題は自分の手の中にある
これから読む本が与えてくれるかもしれない、未知のアイデアに基づいて主題を決めなくてもいい
rashita.iconこれまでの蓄積に、自分が進む方向性が拘束されるということはないか?
その主題について、つながりをたどり、関連するすべてのメモを集める
これらをアウトライナーにコピーして順番に並べ、欠けている情報、重複している情報を並べる
すべてがまとまるまで待つ必要はない
さまざまなアイデアを試して、十分な時間をとって読書とメモとりに戻り、ブラッシュアップしていく
7. メモを利用して草稿を作成する
単にコピーするのではなく、「メモを筋の通った内容に翻訳して、主張の文脈に組み込む」
rashita.iconこれが難しい。だからこそアウトライン・プロセッシングのような技法が必要になる
8. 原稿を編集して構成する
一度に一つの文章だけでなく、同時並行に取り組めるのがこのやり方の特徴
メモを取る習慣は、文章にしなくても、知的成長のためには大切
rashita.iconまさに。
将来のための無数のアイデアが貯めておける
目の前の目的に使えるもの以外の着想も書き留めておく
何かを読み、メモをとります。ツェッテルカステンのなかでメモ同士をつなげると、それ自体が新しいアイデアの引き金になります。アイデアを書き留め、議論に加えます。文章を書き、主張の穴を探し、ファイリングシステムを見直して、すながりが欠けているところを探します。
rashita.iconやはり「議論」や「主張」という言葉が出てくる。これを為すためのシステムだと捉えたほうがわかりやすいはず。
あとやはり日本語版で強調されている「メモを書くだけでうんぬん」という話はまるで違っている。