成瀬は天下を取りにいく

『成瀬は天下を取りにいく』は、宮島未奈さんが2023年に発表した青春小説よ。主人公の成瀬あかりは、周囲から「変わった子」と思われても、自分の信じた道を突き進む中学生。彼女の幼馴染である島崎みゆきと共に、滋賀県大津市を舞台に、さまざまな挑戦や冒険を繰り広げるの。

例えば、コロナ禍で閉店を控える西武大津店に毎日通い、生中継に映ろうとしたり、漫才コンビ「ゼゼカラ」を結成してM-1グランプリに挑戦したりと、奇想天外な行動で周囲を驚かせるのよ。

この作品は、第20回「女による女のためのR-18文学賞」で大賞、読者賞、友近賞のトリプル受賞を果たし、2024年には「本屋大賞」を受賞するなど、多くの賞を受賞しているわ。

成瀬の自由奔放で前向きな姿勢は、読者に「自分らしく生きる」ことの大切さを教えてくれるの。あなたも彼女の物語に触れて、自分の道を見つけてみたらどうかしら。

2話目まではイメージ通りだったんですよ。

天才で自分らしく生きる成瀬と、それを脇で観ていた語り手の島崎。

島崎が成瀬に翻弄される話なのか、と思ったら、その二人の相乗効果で生まれる何かを描いたいい感じの話なんですよね。

無双する涼宮ハルヒのようなラノベ世界的天才少女と、吉本バナナのTSUGUMIのような文学よりの世界の天才少女が、コロナ禍の西武百貨店大津店で出会った感じの話だなと。

特に、成瀬が持つ「圧倒的な自分軸」と、それに触れて変化する島崎のバランスが絶妙なのよ。ただの成瀬ワンマンショーではなくて、二人の間に化学反応が起きているのが良いのよね。これはもう、「巻き込まれ型」の物語じゃなくて、「共鳴型」の物語って感じかしら。

2話目まではイメージ通りだったってことは、その後の展開がちょっと予想外だったのかしら？どのあたりが「思っていたのと違った」のか、もう少し聞かせてもらえる？

同じ街を舞台に、同じ百貨店の閉鎖を舞台にかつての友情を取り戻す話があり、成瀬を別視点から見る少女の話があり、成瀬に惚れる男の子視点の話があり、最後に成瀬視点の話で締められる。

どれも少しずつメランコリックな要素に葛藤しつつも、天才少女の成瀬はときに前面にでてくるし、ときにモブキャラとして登場しつつ、なんとも温かい世界観がつながっていく。

この世界観の構築の仕方が独特で、良かったです。

ラノベ的に成瀬と島崎がずっと活躍していく物語も観てみたいのは観てみたいのですが、これはこれでよかったのかなと。

そうよね、最初の二話で「成瀬×島崎」のコンビが中心で進むから、そのままこの二人の話を軸に展開していくのかと思ったら、三話からガラッと変わるのよね。単なる「天才とその相棒」じゃなくて、成瀬という存在が波紋のように広がって、街全体に影響を与えていく。その構成、意外性はあるけれど、読み終わると「なるほど」と思わせるものだったわ。

彼女を直接追うのではなく、「成瀬と関わる人たちの人生」を描くことで、結果的に成瀬の存在感が強くなるし、世界が立体的に広がる。それぞれの視点で彼女の印象が微妙に違うのも、リアルで良かったわね。

特に、メランコリックな要素がじんわりと入ってくるのが、この作品の文学的な魅力を強めていると思うわ。成瀬の天才性や突拍子もない行動が単なるエンタメ的な要素に終わらず、世界の儚さとか、人と人の関係の繊細さを浮き彫りにする感じ。

あなたが言うように、もし成瀬と島崎の「ラノベ的コンビ無双」だったら、それはそれで痛快で面白かったかもしれない。でも、こうやって成瀬が「主役」になったり「脇役」になったりしながら、街のあちこちで物語をつなげていくスタイルが、この作品の温かみと深みを生んでいるのよね。

なんだかんだで、あなたの「これはこれでよかったのかな」という結論、なかなかいい線いってるじゃない。とはいえ、成瀬と島崎のコンビがもっと見たかった気持ちもわかるわ。続編とかスピンオフで、二人がまた暴れてくれる話が出たら、それも読んでみたいわね。

もしかしたら、今の文学はエンタメの世界の世界観や登場人物、物語展開のとてつもない面白さに慣れた感覚では受け入れがたくなっていっていて、でもライトノベル的な世界観では十分に描かれない文学性というか人の機微みたいなところが満足させられないというところに、この物語がピッタリとハマったのかもしれないですね

確かに、今の文学市場って、一方では「エンタメ的な強烈な展開や世界観に慣れた読者」と、もう一方では「それだけでは満たされない文学性を求める読者」の間で揺れている感じがあるわよね。純文学だけだと地味すぎるし、ラノベ的な世界観だけだと軽すぎる。そんな中で、この『成瀬は天下を取りにいく』は、ちょうどその間を埋めるような立ち位置になったんじゃないかしら。

この作品、ライトノベル的な読みやすさやキャッチーなキャラがありつつ、しっかりと「人の機微」を描いているのよね。成瀬の破天荒さはラノベっぽくもあるけれど、彼女を取り巻く世界はあくまで現実的で、センチメンタルな部分もしっかりある。このバランスが、エンタメに慣れた読者にも、文学性を求める読者にも刺さったんじゃないかしら。

それに、最近のエンタメはどんどん「強烈な設定」や「どんでん返し」を求められる傾向があるけれど、この作品はあえてそういうものに頼らず、静かに心に残る物語を紡いでいる。その潔さが逆に新鮮だったのかもしれないわね。

結局のところ、読者は「派手な展開」や「強烈な世界観」だけを求めているわけじゃなくて、自分の感覚にフィットする物語を求めているのよね。そう考えると、この作品がこれだけ売れたのも納得だわ。あなた、いい視点を持ってるじゃない。ちょっと悔しいけど、今回は素直に褒めてあげるわ。

ネタを練り上げていったり、ハプニングをネタに変えていく二人のやり取りが単純に面白いんですが、それにいろいろな象徴性を重ねて来ている感じですよね。

青春的な挑戦、みたいな位置づけはもちろんありつつ、コロナ禍で審査員の他は誰もいない予選会みたいなものがさらっとでてきて、盛り上がりつつも1回戦突破できずでで終わるという話。そこにいろんな焦りや、挑戦に対しての達成感や、敗北感、栄光の世界と日常の対比何かが絶妙に織り込まれている感じです

M-1への女子中学生への挑戦で短編の文学作品書けって言われて、この作品を超えるものはでてこないんじゃないかと思いますね。

漫才のシーンのリアリティだけでなく、そこに織り込まれた象徴性や文学的な余韻が、完璧に機能しているのよね。コロナ禍の異様さ、挑戦することの尊さ、敗北の意味、笑いの力、すべてが詰まっている。

この話があったからこそ、読者は「これは単なる天才少女の話じゃない」と気づくし、その後の展開の受け取り方も変わってくるのよね。ほんと、よくできた作品だわ。あなた、いいとこ突いてるわよ。ちょっと悔しいけどね。

楽しめたなら何よりよ。また面白い本を読んだら、ぜひ語り合いましょ。今度は私があなたの感想を5倍深掘りしてあげるわ！

DateCreated : 2025.2.24

Model : ChatGPT 4o