『エンジニアのためのプログラミング以外入門』は働き方版『リーダブルコード』だ
概要
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タイトル エンジニアのためのプログラミング以外入門
著者 きりみんちゃんねる(@kirimin_chan)
初出イベント 技術書典7
価格 1000円
https://gyazo.com/2f3525f53195c3fd60dad4067dd45e5a
著者紹介
著者のきりみんちゃん氏は、VTuberとして活動しているバーチャル男声幼女プログラマーです。 https://www.youtube.com/watch?v=6PQEr6eDp8U
本業でもフリーランスのプログラマをされており、VTuberとしては競技プログラミングを布教すべくAtCoderの問題に挑戦する配信などをメインに活動なさっています。 冬コミや技術書典8にも出展されるようなので皆さん行きましょう。
https://kirimin-scrapbox.firebaseapp.com/free_assets/free_gif1.gif
どんな本?
著者の紹介でページが埋まってもしょうがないので、本の中身に移ります。本書(以下、断りのない限り『エンジニアのためのプログラミング以外入門』を指す)がどのような本なのかは、きりみんちゃん氏のブログに詳しく書かれています。
今回もプログラミング技術自体に関する本ではなく、ソフトウェアエンジニアとして働く上でぼくが意識していることや学んだことなど、実際の業務での立ち回りtips的な内容の本になっています。 ぼくはフリーランスとしていろいろな会社を転々としていて、新しい現場に行く度に新参者として、いろいろな文化のチームやチームメンバー、プロジェクトを経験しています。その中で直面する課題や評価される人も様々ですが、ある程度傾向はあるなと感じていて、汎用的に活かせるビジネススキルがあると思いました。(中略)そのようなスキルを短時間でサクッと学べる本があったら良いのではないかな、と思ったのがこの本を書いた動機です。
構成としては「チームではたらく」「組織ではたらく」といった大テーマのもとにTipsとその解説が並ぶものとなっています。
読んでどうだったか
私(kn1cht)は残念ながら本書のメインターゲットであるソフトウェアエンジニアではなく、HCI系の大学院生です。プログラマとして生計を立てているわけでも、チームでバリバリコードを書いているわけでもありません(当然研究や趣味で日々プログラミングに触れてはいますが)。 それでも、研究室も一つの組織であることを踏まえれば、本書にある数々のTipsが生きる場面は多いと感じました。ソフトウェアエンジニアでなくとも、組織と関わりながら何かを作る人なら本書を手に取る価値は十分にあると考えています。
28ページで終わる(決して内容が薄いわけではない)ので、多忙な方でもすぐに読み終わるのもいいところです。
『エンジニアのためのプログラミング以外入門』は働き方版『リーダブルコード』だ
著者自身が本書で繰り返し断っておられる通り、本書の内容は特定の業種や開発手法、プロダクトに向けたものではありません。例えば「振り返りをしよう」の項では、振り返り手法自体は重要でなく、振り返りで改善をしようという意識をチームが持つことがより重要だと述べられています。
私は本書を読み進めるうちに、『リーダブルコード』を思い出しました。リーダブルコードはプログラマなら誰もが知っている名著ですが、「はじめに」にこのような一節が出てきます。
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51MgH8Jmr3L._SX352_BO1,204,203,200_.jpg
本書(引用注:『リーダブルコード』)では、プロジェクトの全体アーキテクチャやデザインパターンの話はしない。そういうのも大切だけど、プログラマが日常的に時間を費やしているのは、もっと「基本的」なことだと思う。例えば、変数に名前をつけたり、ループの処理を書いたり、問題を関数のレベルまで分解したり。
―― Boswell, D., & Foucher, T. (2012). リーダブルコード ―より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック. (角 征典, Trans.). Tokyo: オライリー・ジャパン.
この考えこそ『リーダブルコード』を唯一無二の名著にしていると私は思っています。『リーダブルコード』が懇切丁寧に解説してくれる「基本的」な考え方は特定の手法を扱った書籍ではなかなか扱われませんが、どのような言語・開発手法であっても当てはまる普遍的なものです。
本書の内容も、対象とする環境をなるべく限定せず、幅広い読者が実践できるよう工夫されている点で『リーダブルコード』に通じるものがあります。これは著者が「いろいろな会社を転々として」獲得された経験があってこそでしょう。
そして、幅広い読者が実践できる基本的なコツは時に当たり前に思えるものです。ところが、当たり前のことを常に実践し続けるのは実際にはとても困難です。皆が『リーダブルコード』を読むよう勧めるのは、当たり前の考え方を体系的に学ぶことの重要性を理解しているからこそでしょう。
本書についても同じことが当てはまります。書かれていることのいくらかについては、「そんなことなら既にやってるよ」と思われるかもしれません。しかし、本書に書かれた「当たり前」のTipsを心に留めておけば、きっと日々の仕事に役立つ場面が訪れるはずです。
中には「そんなことは当たり前だ」と思う内容や「自分はそう思わない」と感じる内容もあるかもしれません。あくまでいろいろな開発現場をみてきた筆者のポエム集として、一つの参考として受け取ってもらえれば幸いです。
―― きりみんちゃんねる (@kirimin, @kirimin_chan). (2019). エンジニアのためのプログラミング以外入門. きりみんちゃんねる.
https://gyazo.com/6ab0e9f632571970bef11db5c9de89aa
そういえば色も似てるような