二ホンアシカ
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絶滅危惧種ⅠA類
幼獣:明治46年(1913年)購入 亜成獣:明治38年6月(1905年)購入
食肉目アシカ科 日本固有種
明治維新頃は、日本近海各地に生息し、伊豆諸島の神津島、日本海の竹島が大繁殖地であった。 19世紀以前には日本全土に約3~5万頭生息していたと推定され、和歌山県由良町では、江戸時代に保護され、最大250頭がいた。
1974年に、礼文島近海で漂流していた幼獣が保護されたのが最後の記録であり、 その後40年間記録がないため、形態や生態が研究される以前に絶滅したと思われる。 これは、20世紀に入って皮と油をとるために乱獲されたのが原因と考えられている。
ニホンアシカの剥製標本は、国外では大英博物館1点、オランダ3点、 国内では天王寺動物園ほかで十点ほどしか知られておらず計15点といわれている。
しかし、数に入れられてはいないが、本校には2点、大阪府立大手前高校には1点の剥製標本が保管されている。 これらは、本校生物ゼミの遺伝子配列の調査により、ニホンアシカだと判明したものである。
生物ゼミでの研究
研究内容:DNA塩基配列の分子系統によるニホンアシカの同定
目的:
岸高には1905年購入の「アシカ」と記載のある亜成獣、1913年購入の「オットセイ」と記載のある幼獣の剥製標本がある。 また、大阪府立大手前高校には、東京の山越製作所のプレートがあり、購入年不詳の「オットセイ」と記載のある幼獣の剥製標本がある。
これらの3標本が、オットセイ、あるいはアシカ属(Zakphus)三種(カリフォルニアアシカ、ガラパゴスアシカ、ニホンアシカ)のいずれであるか調べる。 この研究は、2012年から引き継がれている。
研究方法(詳細は下の項目へ):
DNAの塩基配列を調べて近縁種間の分子系統樹を作成、比較する。
結果:
3体の標本はニホンアシカであると確定した。
考察:
調べた478塩基対は、3個体とも完全に同一であった。 このことから、3体の標本が同一母系の血縁集団からの標本であり、同一地域の個体と推定される。 購入年代のニホンアシカの状況から、竹島産と思われるが、産地が明確である標本の塩基配列との比較が必要である。
追記:
ニホンアシカは、形態や生態が研究される以前に、ほぼ絶滅してしまっている。 剥製標本は、世界中で15体程度のみであるが、今回研究した3体の剥製標本は、新たに見つけ出したものである。 この研究は、ニホンアシカの剥製標本から、DNA塩基配列を決定した最初の研究である。 また、天王寺動物園には竹島に生息していた個体の剥製が存在するため、できればその調査も行いたい所存である。
賞歴:
2014年9月4日(木)~7日(日)に開かれた日本哺乳類学会2014年度大会、中高生ポスター発表にて 「DNA塩基配列の分子系統によるニホンアシカ剥製標本の同定」の発表で最優秀賞を受賞。
また、同年9月13日(土)に仙台市にて開催された日本動物学会第85回学会大会において、 「DNA塩基配列の分子系統によるニホンアシカの同定」の発表で優秀賞を受賞。
詳細な種の同定方法
ミトコンドリアのDLoop領域を用い、DNAの塩基配列を調べて近縁種間の分子系統樹を作成、比較することによって種の同定をした。
DNA鑑定に至った理由は、絶滅後に種として認定されたためにデータが少なく、 ♂の成獣の頭骨による分類以外は、研究がなされていないために形態からは分類できないため。
1.後肢大腿骨(一般に剥製の骨は捨てるのだが、処理が雑だったのか今回は残っていた)などから試料を採取
2.試料からDNAを抽出
3.Primerを設計する。(カリフォルニアアシカの配列をもとに設計し、一部でGene Fisher2使用)
4.PCR法(Polymerase chain reactionの略。Primerという液を用い、極めて微量のDNAのサンプルから、特定のDNA断片を短時間で大量に増やすことができる方法)でDNAを増殖
5.電気泳動でDNAの増殖を確認
6.検査機関に送り、塩基配列を調査
7.MEGA6.0を使用し、塩基配列をもとに系統樹作成
8.系統上の位置について検討
9.塩基配列をDDBJ(DNA Data Bank of Japan)に登録