劇中楽曲とともに語りたい『超かぐや姫!』
2026年1月22日より、Netflixにて独占配信されたアニメーション映画作品『超かぐや姫!』ですが、Netflixに登録していなかった私kinzokuseitarai.iconも、公開から約1ヶ月後の2月20日より行われた劇場上映を機にようやく視聴することができ、その結果数年に1度レベルのハマり方をしてしまったので、その感動の記録を文字に起こしておきたくてこの記事を書きました。
ボカロや配信文化と縁の深い1オタクの感想となります。
この記事には映画『超かぐや姫!』本編およびノベライズのネタバレが含まれます。ご注意ください。
作品概要
監督:山下清悟
制作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
アニメーション制作:スタジオコロリド / スタジオクロマト
自己紹介と事前情報
kinzokuseitarai.iconは2009年からVOCALOID楽曲を投稿するボカロPをやっていたり、最近だとゲーム実況の動画配信をやったりしつつ、毎期30本以上のTVシリーズアニメ作品を視聴する無類のアニメオタクではありますが、アニメ映画は気になった作品や話題となっている作品をたまに摘む程度の本数しか見ていません。本作『超かぐや姫!』についても、Netflix独占配信というプラットフォームの制限上、かなり高い話題になっているのを横目にしながらも当面は視聴には至っていませんでした。
PRとして事前に公開されていた歌ってみた動画はチラ見していましたが、個人的にこういうコンテンツって本編をしっかり履修した上で見たいタイプなので、ほとんどの動画は映画を見るまで敢えて避けていました。
2月頭くらいに複数の友人から視聴を薦められた際にはだいぶ気にはなっていたものの、「でもネトフリだからなぁ~」というイイワケでのらりくらりと躱していたんですが、2月5日に発表された1週間限定の劇場上映の情報を見て、「あ、これ行くしかないか」となり、その日までネタバレ等を気にしてできるだけ情報を入れないようにしました。
映画本編を見る前に知っていた情報としては、ryo (supercell) さんをはじめ、豪華ボカロPの書き下ろし楽曲があること、早見沙織さん・夏吉ゆうこさんがメインキャスト・ボーカルを兼任していること、BUMP OF CHICKENの『ray』が使われているらしいこと、松岡禎丞さんが美少女役を演じていることくらいです。あとなんか、「あの頃」のニコニコボカロ界隈を知っていたり、昨今のVTuber文化を知っているとより楽しめるというのも聞いてました。ボカロ黎明期は自分の青春ですし、配信文化に関しても(自分が動画配信をしていることを差し引いても)VTuberに関しては好意的に見ていたりするので、周りが「見たほうがいい」というならそれくらい良い作品なんだろうなぁ、という想像はしていました。
そして2月22日、東京から札幌に旅行に来た友人とともに、北海道唯一の上映劇場である狸小路の「サツゲキ」にて、初回視聴に向かうことになります。(2日前の日付変更時刻頃にチケット購入可能になってすぐ席を取りに劇場HPに張り付いてましたが、予約フォームで席が減っていくペースが速すぎて3回ほど予約エラー喰らいました)
初見の感想
さて、本作の感想です。公式YouTubeチャンネルに本編冒頭映像が投稿されているので、そちらも参照しつつ語ります。
https://www.youtube.com/watch?v=DK0zTkT4QSc
初見の印象としては、有名な竹取物語の書き出しを現代風かつコミカルに改変した早見沙織さんのナレーションとともに、本作の主人公である酒寄彩葉の紹介が行われ、その動作や演出、台詞回しからコメディ寄りの作品だな、と感じました。現代ファンタジーなガール・ミーツ・ガールといった感じで、作画の良い王道アニメという印象でしたね。
実際、中盤の山場のコラボライブあたりまでは、かぐやに振り回されつつもだんだんと相棒として認めていき成長していく彩葉の様子がコメディタッチで描かれており、画の動きの良さに楽しさを感じつつも、「この物語はどこに向かってるんだろう?」と思うようになりました。
転換点はやはりコラボライブにて月人が現れ、かぐやに月にいた時の記憶が戻ってしまうところからですよね。個人的に初見とときはそこからの花火のシーンが一番刺さった箇所になります。
https://www.youtube.com/watch?v=owh241CxGFA
自分、悲恋や失恋、別離といったテーマをできるだけポジティブに乗り切ろうとするお話がとても好きで、このシーンはいつの間にか彩葉にとって大切な存在になっていたかぐやが、自分の使命を全うするために彩葉との分かれを決意し、その最後の日を一番良いエンディングにしたいと語る、二人にとっての大事な対話です。過去にもこういう感じのシーンがあるアニメをいくつか見てきていて、そのたびに心にグッと刺さっていますね。
その後、月人の侵略を迎え撃ちつつ行われるかぐやの卒業ライブ、そして最後のかぐやの、現実で隣にいる彩葉への「大好き」のひと言で強烈に涙腺を刺激されました。ここほんま辛くて好きすぎる…。
そこからは、彩葉がしばらく塞ぎ込んだ後、かぐやが来る前の普段通りの生活に戻り、さらにヤチヨの真実を知って真のハッピーエンドを目指して進んでいく流れになりますが、ここ結構アニメだと情報量多くて初見だと飲み込みきれない部分があり、ちょっと駆け足で勢い任せなシナリオ展開に感じた部分ではあったかな、と思います。(といいつつも、8000年の重みを知って再会を喜び合うシーンとかは純粋に良いシーンだと思いました)
総じて、初見の感想としては「感動的なシーンもあってとても良かった」くらいのものだったと思います。たぶん同行した東京の友人も、思ったより刺さってなさそうに見えたんじゃないかな…?
その後、2周目へ
じゃあ何でここまでハマったの?って話なんですが。
やはり劇中曲が非常に良く、あらためて聞くために公式YouTubeチャンネルを見漁っているうちに、徐々に味が染みてきたから、というのが大きいですね。
エンディングテーマとなっている『ray』もそうですが、歌詞が作品の内容や登場人物の心情を的確に表しすぎているのが後々になって分かる構造となっているので、この映画の内容を咀嚼するには各コンテンツを吟味する時間も必要だと思います。
初見だと関係性の把握が難しかったオープニングテーマ『Remember』と劇中曲『Reply』についても、劇中のヒントを頼りにあらためて聞き直すとめちゃくちゃエモさが増して、気づいたときには「これはもう一回観ないといけないな」という気持ちにさせられていました。
初見を劇場で観てから一週間後、期間限定の劇場上映だったところが延長されたのを見て、嬉々として2回目の劇場視聴を決意しました。こうやって劇中曲をしっかり吟味してから観た2周目は、初見とは全く違った見え方になっていて、何なら2周目の方が涙が抑えられなかったです。
劇中曲とともに振り返る『超かぐや姫!』
ここからは、ストーリーラインをなぞりながら楽曲ごとに感想を述べていこうかと思います。各種サブスクにて配信されているボーカルアルバム『超かぐや姫!』の曲順に沿って感想を語ります。
1. Remember
月見ヤチヨ (CV.早見沙織)
作詞:真崎エリカ
作曲・編曲:yuigot
ピアノ編曲:是
https://www.youtube.com/watch?v=UE1y01q6wzQ
本作のオープニングテーマ楽曲です。ジャンル付けするならテクノポップでしょうか、まったりとした優しい雰囲気の楽曲で、音使いとかが意外と可愛い感じの曲ですね。初見の時は単にそれだけの印象だったんですが…。
大切なメロディーは流れてるよ
この歌詞を、文字通り「大切なメロディー」に乗せているのを知ってから、本作の楽曲群の中で一番涙腺が破壊される曲になってしまいました。これだけは1周目では絶対感じられない感覚だったのと、2周目見るまでに楽曲をしっかり吟味できたおかげだと思っています。今ではランダム再生でこの曲がかかると、いかなる作業中であっても「大切なメロディーは流れてるよ」で急に涙が止まらなくなる限界成人男性が出来上がってしまいました。
この曲のこのメロディーに関しては作中でもかなり特別な立ち位置に設定されていて、彩葉が最初にかぐやを拾って子守唄として歌う場面や、ヤチヨとのコラボライブ直前に彩葉がヤチヨに訊ねるシーン
「ヤチヨのデビュー曲はもう歌わないの?」
「あれはもう届いたから、お役目かんりょ~~☆」
でのヤチヨの台詞にもあるように、「彩葉からかぐやへ最初に贈られたメロディー」であるとともに、「8000年の時を超えてヤチヨから彩葉に届けられたメロディー」でもあるので、この物語の根幹になる大事なフレーズになります。この想いの連鎖に気づいたときから、この曲が聞くだけで泣ける曲に変わってしまいました。後から歌詞を読み込んでいくと、ヤチヨから彩葉への私信にしか見えない内容になっていて、物語が始まる前に無事届いていて良かったね…!っていつも思います。
作編曲を担当されているyuigotさんですが、失礼ながら存じ上げなかったので軽く調べたところ、ボカロPとしては比較的最近の方のようで、クリエイター集団『PAS TASTA』のメンバーの一人だそうですね。PAS TASTAといえば、今期の青春恋愛アニメ『正反対な君と僕』のEDテーマを担当しており、そちらにも参加されている方なのを確認しています。こっちも非常に良い作品なので是非とも見てほしいです。
2. 星降る海
月見ヤチヨ (CV.早見沙織)
作詞・作曲・編曲:Aqu3ra
https://www.youtube.com/watch?v=h5XQqKuek5A
作中序盤、かぐやがツクヨミに初めてログインした後、彩葉とともに観ることになるヤチヨのライブシーンの楽曲です。
仮想空間として存在するツクヨミの世界観と、その管理人として君臨するAIライバーのヤチヨという絶対的な存在を表現した幻想的なライブシーンで、荒んだ心に寄り添ってくれるような曲調と歌詞によってとても優しい空間が広がっていきます。母親との確執や多忙な学生生活で心がすり減っている彩葉が夢中になるのも理解できます。
https://www.youtube.com/watch?v=55moNn0leAU
月見ヤチヨについては、仮想世界の絶対的なアイドルという立ち位置と、長いツインテールを携えたキャラクターデザインから、モチーフとして『初音ミク』を意識しているのかな?と感じています。実際のところどうなのか分からないですが、直近のマジカルミライテーマソング『ラストラス』の初音ミクのヘアアレンジがかなり似ているのもそう感じた一因ですかね。
こちらの楽曲も、本編を通しで観てからあらためて歌詞を読み返すと、歌い出しの
幾千の時を巡って今
僕ら出会えたの
から、ヤチヨが抱えていた想いの一部が漏れ出ているような気がして、この曲に限らず全部本作の想いを綴った歌に聞こえるのが凄いですよね。
作者のAqu3raさんの代表曲『ロンリーユニバース』は、月見ヤチヨによる歌唱バージョンが映画公開前のPR段階で公開されており、本楽曲同様非常に聴き心地の良い安らかな歌となっています。それに加え、本編を視聴した後にあらためて聴くと、この歌も本作のために書き下ろしたのか?と思えるような歌詞になっていて、また別の角度から解釈できる楽曲になっているのも素晴らしいポイントです。
3. 私は、わたしの事が好き。
かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞:shito・Gom
作曲:shito・中西
編曲:HoneyWorks
https://www.youtube.com/watch?v=T1AW8Gj1Xyg
先ほどのヤチヨライブの後に開催が告知されたイベント『ヤチヨカップ』に参加するために、ライバー活動を全力で行うかぐやの様子を描くシーンにて使用される劇中曲です。
HoneyWorksらしいロックサウンドなアイドルソングで、全ての行動をポジティブに全力で取り組もうとするかぐやの猪突猛進な心情が描写されているとても楽しい楽曲ですね。ライバー活動中のかぐやのテーマソングと言ってもいい曲なので、公式YouTubeチャンネルでかぐやが何かやってるshort動画でもBGMとして使われている楽曲です。
この曲、応援上映だとコールしたりするの楽しいだろうなぁ。BメロのPPPHや落ちサビのクラップなんかも楽曲中に含まれるので、こういうアイドル曲が好きなkinzokuseitarai.iconは一緒になって盛り上がりたくて仕方なくなります。
HoneyWorksといえば『告白実行委員会』などの企画が有名だったりしますが、最近はアニメ主題歌を担当することが多くなったように思います。直近1~2年は体感で1クールに3~4曲出しているんじゃないかな(1年ではなくて1クールに3~4曲です)。メンバーそれぞれで分業されているグループとはいえ尋常じゃないペースと作風の幅にkinzokuseitarai.iconは恐れおののいています。
4. ワールドイズマイン -かぐや&月見ヤチヨ ver.- CPK! Remix
月見ヤチヨ (CV.早見沙織)・かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞・作曲・編曲:ryo (supercell)
https://www.youtube.com/watch?v=g6yAXqs7GpQ
ヤチヨカップに優勝したかぐやと彩葉が、報酬として行われたヤチヨとのコラボライブで披露した楽曲の1曲目になります。
作曲者本人によるリミックスですが、18年の時を経て大胆なアレンジが施され、仮想空間でのライブによく合うちょっと大人でオシャレな四つ打ちアレンジになっています。ryoさんはsupercell以外にも『EGOIST』などのユニットでも活動歴があり、かなり挑戦的な作風に進化していった過程もあるので、こういったアレンジを本人が行うのも理解できるというか、作品世界観に合うリミックスで原曲と全く違う印象を持つ曲になっていますね。
上の動画のいわゆる「歌ってみたVer」ではちゃんと歌っているんですが、本編のライブシーンでは結構ふざけている箇所もあり、歌唱中にヤチヨが吹き出してしまう等の演出も入るので、音源としては少し違うものになります。
https://www.youtube.com/watch?v=rXcPRKriVsI
このシーン、サビ前に倒れ込んだかぐやにあわせて、原曲の元動画に使用されているイラストの構図そのままのポージングとステージング演出を行うというある種のサービスカットが、ファンサとしてめちゃくちゃ良かったですね。ここは初見でもすぐに気付いて、「あのイラストじゃん!」と興奮した箇所でもあります。
この曲も歌詞の内容が『姫』として扱ってほしいヒロインの振る舞いを描いたものとなっており、奇しくも求婚されて難題を繰り出す元ネタの方の『かぐや姫』にも見える解釈が面白いですね。2周目以降、全部知った上でこのリミックスを聴くと、ヤチヨ・かぐやともに彩葉の方を見て歌っているように聴こえるのも印象が変わる要素の一つです。
5. Ex-Otogibanashi
月見ヤチヨ (CV.早見沙織)・かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞・作曲・編曲:ryo (supercell)
https://www.youtube.com/watch?v=owEBHHZg38s&pp=0gcJCa4KAYcqIYzv
ワールドイズマインから連続して披露されるコラボライブの2曲目にして、本作のメインテーマソングとして位置づけられている楽曲です。
ドラムンベース調の攻撃的な電子ドラムのサウンドに、少し切なさを感じさせるようなメロが魅力的な楽曲です。1曲を通してまさにメインテーマに相応しいくらい本作のことをストレートに書いた歌詞が非常に良いですね。まずタイトルが「おとぎ話を拡張する=超かぐや姫」ですし、1番から
そんな結末ちっとも望んでないし
運命だからってキミそれで頷くの?
と、作中冒頭でかぐやが竹取物語の結末を否定しているところに繋がっている部分に始まり、本編では歌われていない2番の歌詞は8000年の時を超えたヤチヨの心情を苦しいくらいまっすぐに乗せていて、フル尺の音源とMVを見て聴いて味わう楽曲となっています。
サビの
キミと今見てるこの景色
何億回思い出したろう
は、歌の比喩表現としてはありがちな内容ですが、ヤチヨ視点に立ったとき、決して比喩ではないくらいに彩葉のことを考えていたんだろうなぁ、と思えるくらいには濃厚なヤチヨから彩葉へのメッセージに聞こえます。これ、コラボライブの内容的にヤチヨが用意した楽曲だと思うんですが、正体を伝えていない彩葉に対してどんな気持ちで歌ったのかを考えると、ライブの最後でのヤチヨの涙にも納得感がありますよね。
6. ハッピーシンセサイザ - Cover
かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞・作曲:EasyPop
編曲:yuigot
https://www.youtube.com/watch?v=uYBtslZaOuc
前曲から時系列は前後しますが、ヤチヨカップが終わった後、コラボライブの準備や配信活動に全力を傾けるかぐやのために、彩葉が安アパートからタワマンへと引っ越しをするシーンの挿入歌です。この曲は本人Remixとかではなく、オープニングテーマの『Remember』を作曲したyuigotさんのアレンジで、サブスク配信アルバムでも1コーラス分の長さしかありません。
紹介動画も曲がメインというよりは、本編中の引っ越しのシーンで、ヤチヨカップやKASSENでの兄との戦いを経て仲が深まった彩葉とかぐやの新たな共同生活の様子が描かれた部分です。この期間が作中で一番幸せな時間なんじゃないかと思えるくらい甘くて楽しい二人の時間が流れるのがホントに尊くて、もしTVアニメシリーズで再構成する際はここの内容を10倍は膨らませて放送して欲しいくらいです。あと、kinzokuseitarai.iconのXのおすすめTLを潤してくれるいろかぐ(左右非固定)二次創作の作者の方々、本当にありがとうございます。助かってます。
こちらの楽曲、元々が明るい曲調のわりに歌詞は案外ネガティブなところがあるんですが、「好き勝手ばかりやっていて迷惑かけている」という自覚があるかぐやが彩葉に伝えている感謝の歌として捉えることができるのかな、と思っていて、だからこそ引っ越しのシーンで使われているのではないかなと思います。
我慢する事だけ 覚えなきゃいけないの?
「大人になって頂戴ね?」
ならなくていいよ
ここ、完全に彩葉とかぐやの会話ですよね…?それもボロアパートに住んでいた時の。
7. 瞬間、シンフォニー。
かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞・作曲・編曲:40mP
https://www.youtube.com/watch?v=h9c0gegwcM0
紆余曲折あり月に帰ることを決意したかぐやが、最後の瞬間まで「楽しい」で満たしたいと望んで開催される卒業ライブでの楽曲です。この曲と後述の『Reply』は、月へ連れ戻そうとする月人の侵略からかぐやを護るため、彩葉ほか作中の登場人物たちがKASSENのルールに則って月人と戦う、いわば戦闘曲とも言える立ち位置の楽曲になります。
40mPさんらしいロックサウンドとストリングスのコントラストが輝く王道ポップスな楽曲ですが、歌っている内容は「別れを受け入れているからこそ今この瞬間を全力で楽しみたい」という気持ちが乗った歌詞となっています。あれほどハッピーエンドにしたいと言っていたかぐやが、自分の境遇を受け入れて彩葉との別れを選択しつつも、その中で最良の結末を迎えようとできるだけポジティブにライブに臨む姿が、本編中の感動に繋がっていますね。
本編映像では、サビ後の3連符のメロになっている箇所
世界が彩りに満ちてゆく
で、VRゲームの代表的タイトル『ビートセイバー』のパロディのように、かぐやがリズムよく月人を斬り結ぶ姿がすごく好きですね。奇しくも同時期に劇場公開されている『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』にも音ハメ戦闘シーンがあり、先にそちらを観ていたのもあって、ここのシーンはそのシーンと共通性を見出してしまってちょっと笑顔になりました。
8. Reply
かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞:真崎エリカ
作曲・編曲:kz (livetune)
https://www.youtube.com/watch?v=QiSE1n_X4qU
この楽曲は本作で非常に重要な意味を持つ楽曲で、kinzokuseitarai.iconも劇中曲の中で一番好きな曲です。
彩葉が幼少期に父親とともに途中まで作っていたものの、父の死を機に曲作りを辞めてしまい、長い間パソコンの奥深くに眠っていた未完成データをかぐやが偶然見つけ出し、「卒業ライブでこれを歌いたい」と言ったことで彩葉が再び作曲に挑戦する、ストーリーの中でも本当に大事な曲ですね。
かぐやの卒業ライブの段階では、まだ1コーラス分しかできていない状態での披露だったんですが、かぐやが月に帰った後、彩葉自身がハッピーエンドを掴むためにこの曲の続きを作って完成まで持っていく、という流れがあります。そのため、1番はかぐや視点で彩葉への想いを歌ったもの、2番からは彩葉視点でかぐやへの想いを歌ったものとなっており、フル尺を通しで聴くことで和歌における「返歌」の流れを1曲の中に閉じ込めた楽曲と言えます。
本編では、卒業ライブ前の準備として彩葉がこの曲を作っている途中、サビのメロディーを聴くにつれて違和感を覚えるようになるシーンがあります。ヤチヨのデビュー曲にして本作のオープニングテーマ『Remember』のメインメロディーが同じフレーズになっていることですね。(初見ではこの時点で、ヤチヨとツクヨミを作ったのは彩葉の父親だったのか?と予想してました)
卒業ライブの後、ハッピーエンドを諦めない彩葉によって(おそらく2番の展開を書いて)曲が完成し、それを歌ったことで(かぐやの腕輪を通して?)月まで届きかぐやに地球への再来を決意させるに至るわけですが、
この一瞬を最高のパーティーにしよう
このフレーズが使われているメロディーをいつまでも覚えていた、というのがかぐやの、そしてヤチヨの彩葉への想いの強さを表しているわけですよ。事故って8000年前まで飛んでしまい、様々な経験を経て徐々に出会った頃のかぐやでなくなっていったヤチヨの、唯一の心の拠り所だったんじゃないかと思うと、この曲にかかっている想いの強さに涙が止まりません。
本編中で使われているシーンでは、彩葉たちが月人と戦いつつ、最高の一瞬にするためにステージでかぐやが全力のパフォーマンスを魅せてくれているわけですが、イントロでの腕や脚を大振りする振り付けとかめちゃくちゃ可愛いですね。
歌が終わった後、月人に連れられてかぐやが消えてしまうまでの間に彩葉に告げられる最後の一言は、おそらく本作で一番感情が破壊されるシーンと言ってもいいと思います。辛くてもどかしくて、大好きなシーンです。
楽曲について個人的に好きなポイントが、サビの
ねぇ もっとフザけて
夢だけ シェアして
ありふれてる好きな物にずっとまみれて
の部分のコード進行です。サビの入りはAメジャーキーで、「大切なメロディー」の部分はほぼ3コードで表現されておりとてもシンプルな構成なんですが、そこからこの部分にかけてサブドミナントをドミナントに見立てて転調しGメジャーキーに切り替わるのがとても気持ちいいですね。合っているか微妙ですが、サビ入り A → D → E からの、「ねぇもっと」の直前あたりから F#m → G#mb5 → A → C#m と駆け上がって、「フザけて」から D7 → G → Em → Am という感じに進行していると思います。「好きなものにずっとまみれて」でしれっとAメジャーキーに戻っているのもポイント高いですね。
作曲担当のkzさんはボカロ黎明期から長く活動されている方で、『Tell Your World』に代表されるような初音ミクのテーマソング的な楽曲を作られています(TYWは本作のPRでヤチヨによる歌ってみた動画がありますね) 。個人的には、アニメ『ステラのまほう』のオープニングテーマ『God Save The Girls』という楽曲が中でも特に好きなので、良かったら聴いてみてください。
作詞はオープニングテーマ『Remember』と同様、真崎エリカさん。個人的にはシャニマスで大変お世話になっております。いつもアンティーカの楽曲の作詞をありがとうございます。今回も素晴らしい言葉を紡いでいただきました。 メロディーから派生したyuigotの曲であったり、
という一文を見る限り、『Reply』が先にできて『Remember』が後で作られた、ってことで良いんでしょうか?そうだったら素敵だなって…。
9. ray - 超かぐや姫! Version
月見ヤチヨ (CV.早見沙織)・かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞・作曲:藤原基央
編曲:TAKU INOUE
https://www.youtube.com/watch?v=356MRZ6P5h0
BUMP OF CHICKENの楽曲『ray』を、TAKU INOUEさんがリミックスした本作のエンディングテーマです。
こちらの楽曲はkinzokuseitarai.iconも原曲の公開当初から、「バンプが初音ミクとコラボしてる」という話題で聴いてはいたんですが、こうやってあらためて再解釈されると、あの頃感じた印象とかなり違って聞こえますね。あの頃は「機械の歌声と人間の一つの共存の形」だと思っていたんですが、本作を視聴してから歌詞を見返せば、この作品のために書かれた歌詞か?と思えるくらいにイメージソングとしての起用がぴったりだと感じます。
もう歌い出しから凄いですよね。
お別れしたのはもっと前のことだったような
ヤチヨ視点からすると8000年も前に遡ることになりますからね…。
また、
しょっちゅう唄を歌ったよ その時だけのメロディーを
も、ヤチヨ視点で「大切なメロディー」を歌い続けてたんだなぁ、と思える内容になってます。本来の意味であれば「その時だけのメロディー」は、即興で浮かんでくるその場限りのメロディーを鼻歌程度に歌ってたよ、という解釈だと思うんですが、本作バージョンだとかぐやの卒業ライブのことに聞こえますよね。「この一瞬が最高のパーティー」なので。
この曲についてはやはり上記のMVの内容についても触れないわけにはいかないでしょう。本編が終わり、彩葉の手によって現世に「復活」したかぐやが、ツクヨミにて復活ライブを行うという内容ですが、それ以外にも、エピローグとして富士山頂でタケノコを埋めるシーンが描かれています。ここの描写はタケノコを掘り出している派、埋めている派で議論が分かれているみたいですが、個人的にはかぐやの不死性を捨てるために、月の超技術で作られたタケノコを元ネタの竹取物語に準えながら破棄しに行っていると解釈する方が自然かと思っています。これによって、「本当の意味で」かぐやが人間となり、8000年の時を超えて彩葉に再会し、その幸福のままに生を終えることができて初めて真のハッピーエンドとしているのかな、と思いました。
また、『星降る海』の感想でも述べましたが、仮想空間の歌姫としてのヤチヨの造形が初音ミクに似ている、という印象の答え合わせをするかのように、原曲MVでの初音ミクとバンプ藤原氏のハイタッチの部分で、こちらのMVでもヤチヨとかぐやのハイタッチが見られます。ここも原作オマージュがしっかりしていて唸る部分ですよね。
楽曲については、アイマスをはじめ各所でダンスサウンド系の楽曲を提供しているTAKU INOUEさんのアレンジが本作のテーマにも合っていて、納得の編曲ですね。元々が四つ打ちの曲でシンセも結構入っている楽曲ではあるものの、効果音としてメトロノームが入っていたりと、音楽の力で過去と未来、地球と月を繋いだ本作の要素として良いエッセンスとなっているように感じます。
10. メルト -かぐや ver.- CPK! Remix
かぐや (CV.夏吉ゆうこ)
作詞・作曲・編曲:ryo (supercell)
https://www.youtube.com/watch?v=G89IB2B6jFc
エンドロールの流れる中エンディングテーマ「ray」が終わった後、楽曲クレジットに現れるスペシャルトラック『メルト CPK! Remix』の文字とともに、この曲のイントロが始まった瞬間は、映画館内で思わず声が漏れそうになりました。今回、ryoさんは自身の楽曲にかなり大胆なアレンジを施していますが、この曲は輪をかけて強烈なアレンジとなっているように思います。
刻みの多いシンセの使い方や、2サビ後の間奏の無調っぽいピアノソロのエグさなど、本作の楽曲の中で一番無茶苦茶なことをしている曲だと思っています。
ボカロ音楽のターニングポイントとして語り継がれている楽曲なので、「音楽の力」を前面に推した本作のテーマにも沿っているとも思えますが、この曲といえば「恋する女の子の視点」の楽曲だということはおそらく周知の通りでしょう。これがエンディングテーマの後に流れる意味を考えたとき、どうしてもこの曲が「かぐやから彩葉への告白」としか思えなくなってしまいました。え、だってそういうことだよね!?
初見視聴の時からもうそういう思考にさせられてしまったので、2周目以降のかぐや・彩葉の心情の移ろいは、友愛や親愛を超えてるんだな、って思って観てます。だってそういう意味だとしか思えないから…。
ノベライズについて
以上、楽曲について滔々と語っていきましたが、2周目の劇場視聴を終えた後、映画本編では省略されている描写が書いてあると聞いて気になっていたノベライズ版『超かぐや姫!』を電子書籍で買いました。(札幌市街の書店にはしばらく物理本がなさそうだったので…)
結論から言うと、買って良かったです。自分が初見視聴で分かりづらかったところが文字で表現されていて、映画を補完する書籍として読んで良かったと思いました。(公式ガイドブックは電書だと読みづらいと思ってまだ買ってません…)
文体としては9割方彩葉の主観視点で書かれていて、映画の映像が脳内再生されることを前提とした文体のようにも思えるので、映画を観ずにノベライズから入るのはあまりオススメはしませんが、観た人は読んだ方がいいのは間違いないです。
映画2周目でも思ったことですが、かぐやの卒業ライブまでに出てくるヤチヨの台詞が全て意味深に聞こえるのがより鮮明に描写されているので、それらを一つ一つ確認するために読んでみても良いでしょう。
映画本編で分かりにくかった、犬DOGEがどこから出てきたか(=かぐやがプログラミングしてポケットゲーム機に作った)とか、彩葉の母親との確執とお母さん語録、8000年の記憶をFUSHIから貰い受けた時に出てきた熟成ワインおじさんの正体、月で彩葉の歌を聞いてからのかぐやの行動などが書かれています。特に熟成ワインおじさんのくだりは思ったよりとんでもないことをしていて、この人がいなかったらヤチヨが存在してないまであります。
また、彩葉の視点で終始書かれているため、彩葉の心情描写を映画本編以上に濃厚に感じることができます。ヤチヨカップが終わったあたりの4章以降は、かぐやへの気持ちの移り変わりが事細かに表現されていて、花火のシーンなんかは(家で一人で読める状況というのも相まって)映画以上に泣いてしまいました。そこから新・終章までは映画同様怒涛の展開なので、ティッシュが手放せなくなります。
(2026/03/08追記) このノベライズを読んでいて1ヶ所どうしても発言の意図がよく分からなかった
「両想い、だったんだね」
というヤチヨの台詞がありました。
これ、3回目の映画視聴でようやく気付いたんですが、かぐや卒業ライブの直前、映画では楽屋でヤチヨがかぐやに声をかけるシーン、ノベルではヤチヨが彩葉に声をかけるシーンがあります。ここの台詞、映画ではかぐやが「もしかぐやがヤチヨだったら…」と言っていて、ノベルでは彩葉が「もし私がヤチヨだったら…」と言っています。
ノベルの描写的に、ヤチヨはかぐやと話してから彩葉に声をかけに行っているので、ヤチヨはかぐやの映画での台詞を聞いた上で、彩葉のその言葉を聞いて、驚いている様子が描写されてたんですね。
2つの媒体で違うシーンを描きつつ、台詞の対比でお互いの想いの強さを表現していて、映画本編を十分把握してないと本当の意味が伝わらない台詞だと思いました。ここ、ノベルだと彩葉視点しかないので、ノベルだけではヤチヨが何故この台詞を言ったのか分からないと思います。
てっきり、かぐやでもあるヤチヨが、この頃から彩葉と両想いだったことを8000年経ってようやく確信したという台詞かと思っていたんですが、この対比構造に気づくとちょっと意味合いが変わってきますね。その瞬間に存在している今のかぐやと彩葉が、ってことだったんですね…!
ストーリー考察について
本作は、メインで見せたい展開のためにかなり勢い任せで無理矢理な展開や演出を多用しており、そういった部分に引っかかってしまうと途端に楽しめなくなってしまう危険性があると思っています。実際自分も、初見のときは10年後の彩葉がかぐやの生体を作り上げて復活させているところを見て「さすがにそうはならんやろ…」と思ったりもしました。
ですが、ノベライズによる設定の補強を得てから、「FUSHIから8000年の記憶を貰い受けた際に、かぐやが持っている月の超技術についての知識も同時に得ており、現世地球上で再現可能な範囲については彩葉の研究によって実現できたため、10年という超スピードでかぐやの生体を作り出すことができた」とすることで納得しました。
ツクヨミについても、細かく見ていくと生まれたてのかぐやがあそこまで色々なものを作ることができるんだから、ヤチヨとなって一人で作ることもできるよね、って今では思えるようになってます。
ただ、ヤチヨの「かぐやは同じ輪廻を巡っている」発言にて、「いま彩葉の眼の前にいるヤチヨは、この時間軸の彩葉が共に過ごしたかぐやと同一ではない(=前のループのかぐやがヤチヨとなっている)」とする解釈はちょっと寂しいので、同一だと言い張らせてください。だってそっちの方がハッピーエンドだから。
余談
X上で、『超かぐや姫!』が気に入った人に別の作品をオススメする流れをいくつか見かけています。納得感のあるものや、ちょっとこじつけが過ぎるのでは?と言いたくなるものまで色々ありましたが、個人的には『SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!』をオススメします。
『ましゅまいれっしゅ』は『SHOW BY ROCK!!』シリーズの(実質的な)3期目の作品にあたるんですが、前作を知らなくても見れるシリーズとなっています。
『超かぐや姫!』ともいくつか共通点があり、
メインキャラのCV&Vo.が夏吉ゆうこ
音楽に惹かれて居候するヒロイン
狐耳のキャラ
コミカルでありつつも地に足ついたストーリー
女→←女の激重感情
ストーリーと親和性の高い楽曲
サンリオ V Fesで公演したことがある
など、『超かぐや姫!』の前身としてのコンテンツであると言っても過言ではないのではないかと思います。
特に、第6話の海辺のシーンなんかは、『超かぐや姫!』の花火のシーンと重なる部分もあり、そこだけでも見てほしいくらい良い作品です。エンディングテーマ『キミのラプソディー』で泣いてくれ…!
さいごに
ここまでで、『超かぐや姫!』にハマった経緯と楽曲とともに振り返る感想文を書き散らしていきました。これでkinzokuseitarai.iconの精神も落ち着きを取り戻して普段通りの生活に戻れる…かどうかは分かりませんが、少なくともどうしても吐き出したかったことは全部書いたのではないかと思います。
でも、しばらくは『超かぐや姫!』の魅力から離れることはできなさそうなので、本作の同時視聴配信をやっている配信者さんのアーカイブを渡り歩くことになるかと思います。もし良かったら、オススメの配信者さんを教えていただけると嬉しいです。にじさんじ栞葉るりさんの古典元ネタ解説配信は観ました。