『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』
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ISBN:B0B5X6WHDB
読了日:2024/4/14
そのデザイン、
顧客の信頼を失っていませんか?
欧米で規制強化が進む、
ディセプティブ・デザインの実態と脱却の道筋
「退会方法がわかりにくい」
「勝手にメルマガに登録されている」
「消費者を煽るカウントダウンタイマー」
「期限のない在庫一掃セール」……
こうしたユーザーを意図的にだますデザイン
(=ダークパターン)の乱用が増えています。
本書は、ダークパターンとは何かから、
世界で進むダークパターンの規制強化の実状、
ダークパターンの代表的な15の具体例、
そして、企業やデザイナーがダークパターンに陥る背景と
その防止策を1冊にまとめて解説します。
目次
Chapter1 ダークパターンとは何か
1.1 消費者を惑わせるWeb サイト設計
1.2 ダークパターンとは何か、その定義
1.3 ダークパターンの世界的調査
1.4 ダークパターンは人の選択をどれほど歪めるか
1.5 国内外で高まるダークパターンへの忌避感
1.6 企業がダークパターンを使うリスク
Chapter2 意思決定の科学
2.1 その選択は、誰が決めているのか
2.2 意思決定に影響を与えるマイクロコピー
2.3 ユーザーが行動を起こす3条件
2.4 ファストアンドスロー 速い思考と遅い思考
2.5 説得 vs. 欺瞞、操作、強制
Chapter3 ダークパターンの種類
3.1 スニーキング(こっそり)
3.2 アージェンシー(緊急性)
3.3 ミスディレクション(誘導)
3.4 ソーシャルプルーフ(社会的証明)
3.5 スケアシティ(希少性)
3.6 オブストラクション(妨害)
3.7 フォースドアクション(強制)
Chapter4 ダークパターンを防ぐために
4.1 組織をプレッシャーから解放する
4.2 ユーザーをリスクから解放する
※本電子書籍は同名出版物を底本として作成しました。記載内容は印刷出版当時のものです。
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ハイライト
ビジネスにおける説得力とは何か。それは一貫性です。優れたブランドは「最高のショッピング体験をお届けします」と言いながら、7種類のメールマガジンに登録させたりはしません。「お客様を第一に考えます」と言いながら、サービスの解約ボタンを隠したりはしません。
確かに言ってることとやってることが噛み合ってないと、このサービス、会社は大丈夫?ってなる
“ダークパターンとは、ユーザーを騙して何かを購入させたり、登録させたりするなど、意図しないことを実行させる、Webサイトやアプリで使われているトリックのこと”(筆者訳) ── ハリー・ブリグナル darkpatterns.org * 2022年4月頃より、ブリグナルはダークパターンを「ディセプティブデザイン(人を欺くデザイン)」と表現し、Webページの名称も「ディセプティブデザイン」に変更しています。
日本のニュース番組では分かり易さからダークパターンで紹介されるけど、変更された名称も覚えておこう
どのダークパターンも、ユーザー(消費者)に対して、次の3つのいずれかを行うように設計されている点です。 1.より多くのお金を支払わせる 2.より多くの個人情報を提供させる 3.より多くの時間を浪費させる
アンチパターンとダークパターンは、 ユーザーを望まない結果へ導くという点においては同じですが、ダークパターンは意図的に設計されています。
分かっててやってる分、ダークパターンの方がたちが悪いと思われる。でも偶然が重なってできた望まない結果も嫌だな…。結論どっちも嫌だ。
この2つの違いについて、こう述べています。 “「ひどいデザイン」の作り手と言われて普通思い浮かべるのは、いい加減でだらしないが、悪意はない人物だろう。一方でダークパターンはミスではない。作り手は人間の心理をしっかり理解した上で、巧妙なデザインを行う。ユーザーのことなど彼らの頭にはない” ── ハリー・ブリグナル darkpatterns.org
中略
https://gyazo.com/f043507c025c2a866ce86b1f5c557319
ダークパターンをダークパターンたらしめているのは、「その利益の享受者は誰か」という点です。ダークパターンは常に、ビジネス側にのみ利益をもたらします。
ナッジとは、相手の選択を禁じたり、経済的なインセンティブを大きく変えたりすることなく、人々の行動をより良い方向へ変容させる仕組みのことです。現在、ナッジの手法は、公共政策の枠を超えて、環境保護やビジネス(従業員の安全性・生産性・幸福度の向上)などの幅広い分野に応用されています。
ナッジは、リバタリアン・パターナリズムの概念に基づくものです。リバタリアン・パターナリズムとは、個人の自由(行動や選択)を尊重しつつ、より良い結果がもたらされるように、制度や環境を通じて、個人の行動に影響を与えようという立場を指します。
ナッジとは言わば、より良い選択をアシストする仕組みのことですが、裏を返せば、自分の利益のために他者を行動させることもできてしまいます。これが「スラッジ( Chapter2.1 参照)」です。スラッジは行動経済学の文脈で提唱された概念ですが、スラッジとダークパターンは本質的には同じものを指しています。
グロースハックそのものがダークパターンを助長しているわけではありません。 グロースハックは、限られたリソースを有効活用し、サービスを効果的に広めるための優れた戦略です。
ユーザーのアドレス帳から(本人が意図しない形で)メールアドレスを取得し、そのメールアドレスに対してLinkedInに参加するよう促すスパムメールを、複数回送信していたためです。のちに、Darkpatterns.orgのブリグナルによって「 友達スパム(Friend SPAM)」と名付けられたこのダークパターンは、行き過ぎたグロース戦略がいかに企業を近視眼的にしてしまうかを物語っています。
「顧客を罠にかけるビジネスは、最終的には顧客に選ばれなくなる」という考え方は、半分真実でありながらも、やや楽観的に思えます。なぜなら、長きにわたりダークパターンを使い続けている企業が、今でもビジネスを成長させている現実があるからです。
「ナッジ理論」を提唱しました。ナッジとは、行動経済学の用語で、「そっとあと押しする」という意味です。相手の選択を禁じたり、経済的なインセンティブを大きく変えたりすることなく、人々が自発的に、よりよい行動を選択できるように手助けする仕組みのことを言います。 ハエが描かれた男子トイレの便器 ナッジの例としては、オランダのスキポール空港の男子トイレが有名です。
選択肢をどのように提示するかが回答に影響する
デフォルト効果とは、初めから選ばれている選択肢をそのまま受け入れてしまう心理傾向のことで、これにはできるだけ変化を受け入れず、同じ状態を維持しようとする惰性的な思考 ──「現状維持バイアス」も関連しています。
本人の利益にならないナッジ行為 ── つまり賢明な選択を妨げたり、行動を好ましくない方向に向かわせたりする行為に「 スラッジ(汚泥・ヘドロの意)」と名付けました。ナッジの反対語であるスラッジは、本質的にダークパターンと同じ行為を指します。 ナッジ:相手がよりよい選択をするように、あと押しする行為 スラッジ:相手の賢明な判断を妨げ、不利な選択へと導く行為