オーストリア学派
限界革命の中心的概念は限界効用であるが、ワルラスにとってはそれが一般均衡理論の一つの道具にすぎなかったのに対して、オーストリア学派にとっては限界効用の意義ははるかに大きい(限界効用理論)。古典派経済学の労働価値説、生産費説が価格を費用により説明するのに対して、オーストリア学派の効用価値説は効用により消費財の価格を説明する。そして費用とは失われた効用であると考える機会費用の概念が説かれ、生産要素の価値はそれから生産される消費財の効用にもとづく価値が帰属するものであると考えられた。 オーストリア学派の人物
すでにヴィーゼルとベーム=バヴェルクの段階で、オーストリア学派経済学の主要な特徴は現れているけれど、その多くは弟子たち、特にミーゼスとハイエクの手によってずっと明確ではっきりしたものになった。その特徴はおおむね、以下のような順番で挙げられるだろう(括弧に入れて書いてあるのは、その主要な論敵だ):
過激なまでに「主観論的」な新古典派限界主義経済学の一派(VS 古典学派)
「先験的」な純粋理論信奉で、「手法的な個人主義」を強調(VS ドイツ歴史学派). すべての財や要素を、転嫁を通じて消費財の主観的な価値評価に帰着させる代替費用の理論 (VS 古典学派や マーシャル派新古典派) 資本と利子についての時間理論的なアプローチ (vs その他あらゆる人々、特に シカゴ学派) ビジネスサイクルの金融過剰投資理論 (vs ケインズ派) 反周期的な金融政策を支持、後には自由な銀行システムも支持 (vs マネタリスト)
匿名の均衡ポジションの性質を分析するよりも、不均衡下における具体的なアクターが動かす、時間消費的で乱雑かつ競争的な「市場プロセス」分析 (vs ワルラス派) 経済における不確実性と情報の重視、特に価格の持つ情報の役割を重視 (vs ワルラス派)
経済アクターの心理を考慮、特にアクター同士の対面における戦略的利己的行動の優位性や、政治社会制度の重要性 (vs いろんな人たち)
分散化して知識も限られた経済エージェントたちのごった煮を調和のとれた秩序に組織化するにあたっての、競争市場や価格システムの重要性 (vs ワルラス派、マルクス主義者、ケインズ派) 自由放任主義的な経済政策を、政治的、経済的、哲学的におおむね擁護 (vs ケインズ派、マルクス主義者、社会主義者)