英語学習の思い出
大学受験の勉強を始めたとき、英語は比較的すんなりとコツを掴んでそのまま身についたのだが、そのきっかけを思い出したので書いているkeroxp.icon2019/12/25
といってもReadingオンリーの話だが
SFCの英語入試
今はどうか知らないけど、設立当初から当時(10年前)までのSFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の入試の英語試験は難しい?ことで有名だった
総合政策学部、環境情報学部ともに5~6ページの素の英文を読ませられて、普通に英語で国語の読解をするという内容だった
ジャンルでいうと長文読解のみというスッパリとした割り切り方で、センター試験的な網羅はされていなかった
たいてい海外の本だかニュースだかエッセイだかの一部を切り取って出題されるので、難易度はある意味ではネイティブ的にフツーくらいのものであった
他の大学入試はよく知らないのだが、SFCの勉強をしていたらそれより少し下のランクの大学の英語入試ではかんたんすぎて拍子抜けしてしまったこともあった
日本の中堅私大程度の英語入試は、レベルを下げるためにあえてかんたんな英文が出題されたり、そもそも長文読解以外の問題の配点が7割とかあるので全然違うなぁと思った記憶がある
英文で数ページの内容というのは大学入試では埒外の長さで、一般的な「長文読解」というのが通常1ページ弱、多くて1ページ強程度の長さなのに対してSFCはその数倍の長さを誇るので予備校界隈では「超長文」と呼ばれていた
別に書いてある内容を読めば特別長いわけではないのだが、2時間程度の(これも普通よりは長い)試験時間で高校生に読み解かせるには確かに難易度の高い試験であったのは事実だろう
四方山話 / 超長文読解技法
SFCの英語入試の裏のテクニックとしてまず文章ではなく20問からなる問題文(も英語)から読み始めるというものがある。これは20問という多い問題から本文の内容を類推するというテクニックだった。問題文の英語は比較的かんたんな英語で書かれているので、「~~でAがBと書かれているが、これはどういうことか」のような内容であればAがBであるということは本文を読まずとも雰囲気を掴むことができるというわけだ。
Readingの身につけ方
そこから思い出すに、英語のReading試験は長文読解以外なくていいんじゃないかと今なお確信している
というのもReadingの目的は英語の文章を読めるようになるということだけなので、その目的に対して最もシンプルな能力の図り方は実際の英文を読んでどれだけ理解できているか(英語力 + 読解力)を図ることだからだ
文を構成する英単語をすべて知っていてもその内容を理解できなければ意味ないし、英単語知らなければ文を理解することは困難である
Readingは英単語、文法、読解力とよく言うが、それはそうというかどの言語もそうである
だが読解力のみを問う試験というのは実はそんなにないのではないか
センター試験を始めTOEICなどでも発音記号(なんの意味があるのか知らん)とか文法の穴埋めとかも多い
これらは明らかに採点をラクするための問題なのだが、配点も多いため馬鹿にできないという事実がある
こういうのを見ると試験って誰のためにあるんですかね、と辟易してしまう
試験でいい点をとっても能力が身についていないのなら意味はないだろうに
5文型の重要さ
SVO, SV~みたいな文型の分類は中学生で習う英語文法の基本だが、これはReadingを身につける上で最上といっても過言ではないくらい重要な考え方である
アルファベットを習って間もない中学生ではこの重要さはまず理解できないだろうとも思う
SV文型にはいくつかのパターンがあると言われる
SV (主語 + 自動詞)
SVC(主語 + 動詞 + 補語)
SVO(主語 + 他動詞 + 目的語)
SVOC(主語 + 他動詞 + 目的語 + 補語)
SVOO(主語 + 他動詞 + 目的語 + 目的語)
SVM(主語 + 自動詞 + 副詞)
これらは5文型と呼ばれ、中学生で習ったはずである
四方山話 / 5文型
数字のつく格言にはたいてい根拠がないが、5文型の5という数字もまた特に意味のない数字である。というのも、5というのはSVで始まる文型のうち主要かつ分類できそうなものを5つに分けたに過ぎず、英語ではSとVはほぼどの文章でも確定的に存在するが、Vのあとに来る内容はわりとなんでもいいという雰囲気がある。実際、英語を学んだあとにSVCとSVOが文型としてどう違うのかということを感じたことはない。Vが補語(形容詞など)を受けられるかどうかというだけで文型が変わるというのも感覚的に疑問で、beやlookはあとにCもOも取れるので実際はCもOなのではないかと受験生の僕は思っていた。というかC=O論に気がついてから英語の文型は一種類しかないと気がつき、そこから格段に英語への理解が高まった記憶がある。
SVのS、つまり主語がほぼ必ず文の先頭にくるという文型は英語を始め中国語やドイツ語など世界的に支配的な文型なのだが、決まった文型を持たない日本語の話者からするとこの文型は一見奇妙に映る
SV文型を習う中学校の段階では、Sはほぼ必ず人称代名詞(I, he, she...)しか使われないのだが、実際は人称代名詞以外でも主語になりえる、というかどこまで言ってもS中心に文が組み立てられているのが英語の特徴である
このことを理解できないと、SV文型はただ I like a coffee で終わってしまう
だが実際は、ほぼ全ての英語の書き言葉は、決まった品詞の並びでしか組み立てられていない
英語の文章はときによって複数行に渡る長い文になることがあるが、どのような長さの文章であっても、ほとんど必ずこの5文型のどれかに当てはまる
Twitterでこの英文が読みづらい、というツイートが流れていたのだが、この文章はいい例だと思う
I guess the plan you were told was one that was written a month ago.
君が聞いた計画は、一ヶ月前に書かれたものだったように思う
これはれっきとした一文の英語だが、複数のSV文が文を構成していて、文型を理解していない人はこれが読めないと思う
で、これを理解するためにはまず文を構成するサブパラグラフをまとめ上げる必要がある。こんな感じ
I guess ((the plan you were told) was (one that was written a month ago)).
英語を勉強したての人はこの作業ができないと思う。この文章は中学生で習うような英語でしか構成されていないが、文の構成がかなり複雑になっているからだ(というかもっと簡単に記述されるはずなのだが…)
この文章は、文型で言うとSVOである
だが I like a coffeeのSVOとは似ても似つかないし、これらが文型として同じであると理解するのは結構難しいのではないか
というのは、SVOを習う段階では、Oはほぼ必ず一語の名詞の例文しか出てこないからだ
だがguessのように目的語に名詞ではなく句(文章)を取る他動詞もたくさんあるし、むしろこういった句を目的語に取る他動詞がたくさんあるから英語はシンプルな文法だけで成立しうるとも言える
複雑な、というか普通のことを記述するためには、I like a coffeeではどう考えでも無理なのである
無理なので、英語では句(目的語となる内容を表す文章)と語修飾(主語もしくは目的語を詳細に説明する文章)がたくさん用いられる
上の文章では、I guess ~ から始まってguessの目的句が the plan ~ である。文法的にに言えば目的句を表すthatが省略されているのだが、こういう慣習には受験生のときは混乱した
guessが受けた句(tha plan ~)はまた一つの文章になっているが、この文のS(the plan~)とO(one that~)は両方とも語修飾されており、一見どこまでが修飾分なのかが見分けづらい
正解は wasがguessの目的句のVに相当するのだが、これを見つけられないと文章の意味は一生分からない
特にこの語の後置修飾も慣れるまでは苦労する。内容の説明を語のあとに文章として付ける、というのは日本語的には理解がし難い文法だからである。
この「語に文章がくっつく」という文法を理解すると、後置修飾された語は文法上は名詞であると考えられるようになる
the plan you were toldは、意味は変わってくるが文法上はthe planと考えてよいのである。
同様にone that ~もoneと捉えていい。つまり上記の文を文法上簡素化すると
I guess the plan was one
計画は~~だったように思う
文法上はこうであるといことが理解できる
もっというと、この文章はthe planが何なのかを語っている文章に過ぎない。
文の内容としてはthe planが何なのか、どのようなものなのかを語っている。
逆に、事実を元に主語をYouにしてこの文章を書き直すならこのようにも書ける
You might be told about the plan that was written a month ago
君は1ヶ月前に書かれた計画について聞かされたのかもしれない
と言ってもこの文章が何を言ってるのかは分からないので意味が変わっているかもしれないが。
四方山話 / 英語の見た目
文法的にはあるべき語が省略されるということは英語ではよくある。だが省略されないような基本文法しか習っていない学生はこういうことに対応できない。文の中でどの語や句が省略可能化というのは、一概に定義できない。逆に言えば実際はどの要素も省略可能である。ではなぜこうった省略が起こるのか? まず第一に省略というくらいだから何度も何度も繰り返すうちに面倒になって省くようになったという、一種の符号化である。だが個人的に感じるのは、英語はわりと文章のシンプルさ、つまり構造的簡素さを美徳とする文化があるようだ。つきつめれば、短くシンプルな文章で内容が100%伝わることを理想としている印象がある。上記の例文ではthatが使われるべき箇所は実は3箇所あるのだが(guess that ~), (the plan that ~)、実際に使われているのは一箇所でしかない。これは一つの文章でthatを3つも使ってしまうとWritingであれば見た目が野暮ったく、Speakingで言えば単に言いづらいという事情があるように思う。この他でも英語では文章中で自明である主語、動詞、目的語などあらゆる構成要素を省略可能なのだが、こういった慣習は文法を破っているのではなく、守りながら構造や見た目をシンプルにすることがカッコいいと思われているのではないだろうか。
まとめ
何が言いたいのか散逸してしまったが、僕が言いたかったのはひとつだけである
僕が英語のReadingについて飛躍的に理解が高まったのは、どんな英語の文章もSV~で記述されており、複雑そうに見える文も丁寧に目的句と語修飾をグルーピングしていけばどんな文章も最終的にSVOに構造化できるということである
SVOに構造化できれば、語修飾をとりあえずは外し、その文章が何を語っているのかをなんとなく理解することができる
これは辞書が使えない英語の読解試験では特に役に立つ知識だった
もし知らない単語が文中に紛れ込んでいても、文型をSVOに構造化すれば意味をなんとなく理解できるからだった
逆に、単語を沢山知っていてもこの能力がなければ文章を理解することは非常に困難である
英語の文章で使われる単語は、実はそんなに多くなく、むしろ簡単な単語のほうが好まれて多義的に使われることが多い
辞書が自由に使える今のような環境ではより重要になっている能力だと思う
なので、Readingの根本的な能力は文章をSVO化する能力だと僕は思っている
のだが受験生のときも大学に入ってからもSVOの重要さを語る人には会ったことがないので、語ってみようと思った
オチ
ちなみに僕がこのSVOメソッドを引っさげて教えた家庭教師の子は見事に大学に落ちたという本物のオチがあります