空中浮遊系能力の原理について考える
三年前にあとで書くと言っていた記事らしいkeroxp.icon2022/3/14
空を飛ぶ程度の能力
空中浮遊系の能力というのは、フィクション作品でよく出てくる空を飛ぶ能力のことである。
能力系バトルとか、格闘系漫画とか、出てくると一つインフレが進んでしまったなと感じるアレである。
有名なところで言うと『ドラゴンボール』の『舞空術』とか『東方Project』の『空を飛ぶ程度の能力』とか。
空中浮遊の定義としては、自身の体以外の動力を必要とせずに宙に浮き、静止できる能力である。
似たような能力で「空中飛行」というものも考えられるが、実は飛ぶだけならあまり難しくない。
飛行機と同じ理屈で、強い力を断続的に後ろに発し続ければいいからだ。エネルギーを発せられる能力者なら飛行能力は実質持っていると言ってもいいので、今回は議論しない。
この定義からすると柱を投げてその上に乗って飛ぶ桃白白とか、箒に乗って飛ぶ霧雨魔理沙もその定義外である。
まぁもちろん外部の動力が不思議な力で成立しているならそれもまた空中浮遊なのではないかという意見もあろう。
しかしこの場においてはとりあえず自分の人体にかかった魔法的な力ということで一つ進めさせてほしい。
能力が人体に対して掛かっている、というのが今回の考察では結構重要な問題になってくるのだ。
重力はどうなっている?
さて、空にふわふわと浮かぶと言うことは子供であれば誰しも憧れる不思議な力だが、未だ空を飛べないアラサーのかえるくんはふとこの能力について疑問に思ったことがあった。
空中浮遊系の能力を使っている時、重力はどうなっているのか?という疑問である。
まず、基本的に地球上の地表ではどこであれ重力があり、一般的に空と呼ばれる雲が浮かんでるあたりの高度数千メートルあたりでも、当然のようにほぼ地表と同じ重力が存在する。
これが存在するが故に地球上の物体はほとんど自分で浮くことも空を飛ぶこともできず、「浮く」という表現ができる生物で言うと一部の昆虫とか、ハチドリのような小さな鳥くらいである。
たんぽぽの綿毛とか、ケセランパセランのようなものも浮いていると考えることができるかもしれない。
しかしこれらはただ単に地球の重力に対して質量が小さいから浮遊が可能なのであり、エネルギーが切れたらいずれ地面に落ちてしまう。ちなみにハチドリのエネルギー代謝能力は全動物中トップクラスなのだが、それは昆虫に比べてしまえばとても体が重いからである。
そういう観点から見ると、エネルギーなしに恒常的に浮いていられるのは気体くらいだろう。もちろん、気体なので形を保てないわけだから「浮いている」と言う表現はなんとなく違う気がする。
空中浮遊系能力と重力との関係についての二つの考察
さて、空中浮遊系の能力を使った際にその人物は地表から浮いているわけだが、この時重力(地球の引力)の働きについて二通りの解釈ができる。
(A)重力はそのままであるという解釈。つまり、地球の引力や能力者の万有引力はそのままで、それ以外の力によって浮いているという解釈である。考え方によっては、見えない糸で空から吊るされているイメージ。
(B)能力者の持つ万有引力が変わっているという解釈。これは地球やその他質量をもつ物体の引力に引かれなくなり、地球上で自分だけ無重力になるようなイメージだ。ふわふわと浮かぶにはぴったりな解釈だろう。
さてさて、もういい加減めんどくさくなってきたかな?
浮いているときの衣服の整いについての考察
両者を比較する前に、空中に静止したキャラクターの漫画的表現を考えたい。
ふと色々な漫画やアニメのシーンを思い出すと、空中浮遊したキャラクターの髪や服は割と地上にいる時と同じく整っているイメージがある。これから、能力者の身体だけが能力の適用範囲であるという解釈が可能である。つまり、人物が身につけている物体は基本的には空中浮遊系能力の制御化になく、どこにいても地球の引力の影響を受けているのだ。髪の毛や髭も同じ理屈のようである。人体の内部に存在する液体などはどうなんだろう?
能力を使っていた女の子が地表に着陸するシーンで、スカートや髪がふわってなることがよくあると思う。宙から降りてきて、すたっと地面に立つやつ。あれはギリギリまで能力を使っていて降りてきていて(そうじゃないと激突してしまう)、地表近くで能力を解除しているのだと思う。ふわっとなるのも、単に衣服や髪が能力の影響を受けず、下方向への浮遊移動による慣性力と空気抵抗でああなっているだけなのだと解釈が可能だ。つまり、地上への移動中は空気で上になびいていて、着陸後は重力に引かれて元の形に戻るということ。
では体はどうか。体とはつまり衣服を除外した生まれたままの肉体のことである。AでもBでも静止した状態で衣服の乱れがない以上、体だけに能力が適用されていると考えるのが基本だと思う。
しかし、この場合AとBで大きく異なるはずのことがある。
それは、浮くための力の体への掛かり方の違いである。
浮くのは痛いか痛くないか?
Aの場合、物理法則が変わっていないので(?)、能力者は別の力によって空中に浮いていると言うことになる。上から吊り下げられてる、もしくは足の下に可動式の見えない足場的なものがある的な感じ。
この場合、能力者は浮いている状態でも重力を感じているはずである。具体的には、足や体に自分の重さを感じている事になる。また、その状態では能力者の足の裏(?)に位置エネルギーと釣り合う逆方向の力が常に働いているはずなので、かなり痛いんじゃないかと思う。肩車をしてもらったり組体操の上に乗ったことのある人ならわかるけど、ものを高く持ち上げるのにはその重さ以上の強い力がいる。ウェイトリフティングが大変なのもそう。
好意的な解釈をするなら、足ではなく満遍なく体全体(?)に逆右方向のGが分散されているので海に浮かんでいるような状態なのかもしれない。でも、体表面の下向きの箇所だけとかの条件になるとやっぱり痛いんじゃないかと思う。体の向きを変えるたびに力がかかる場所が変わるとかきつい。そうなると地表と同じ理屈で高い位置にある分やっぱり痛いんじゃないか? そういうのが心配ないくらい広くて柔らかいもので持ち上げられているならば痛くないのか? 例えば、とても大きな布のようなもののイメージ。制御できるイメージが湧かないけど。
Bの場合、そういう心配はない。地球を含めてあらゆる引力が効かないので(?)実質質量ゼロの状態で運動が可能になっていると思う。いやそうなると言ってて意味わかんなくなってきたな……質量がないなら速度にも上限がないんじゃ……。だとすると地球の重力化ではほとんど無重力になれる程度の無効化ということか? とりあえず質量は変わってないけど万有引力はなくなってる的なことにしておこう。
さてこの場合浮かびあがることは簡単だろうが、静止する理屈はどういうものなのだろう。基本的に無重力状態で自分だけで静止することは不可能なわけで、浮いていく過程で慣性力がついてしまったら止まるにも力が必要になる。そうなるとそれはそれで痛いのではないか。ゆっくり上がっていけばいいのか? その場合静止するためには全方向からの外的な力を受けなくてはいけなくなるような気もする。これは痛いのか痛くないのか? 柔らかな見えないクッションに挟まれてる感じ?
ただ単に自分だけ無重力状態になっただけでは、移動のエネルギーは自分で出さなくてはいけなくなる。具体的には、浮かび上がるにはジャンプする力以上の慣性力は発揮できない。そうするとさほど速くは浮かび上がれないのだろうか? イメージが湧かないが実際はジャンプしたままって減速しなかったら結構速いのかも。結局外力が必要になるならAと同じなのか?
ひとまずの推論
こう考えると一般的な空中浮遊系の能力ってAとBの複合型なんじゃないかと思う。
要するに、質量を維持したまま自分の体の万有引力だけをほぼゼロ(?)にして、その擬似無重力状態で何らかの外力を自分の体に作用させて静止したり、静止した状態からスピードアップしたりすると。
この解釈であれば、浮いている状態がさほど辛くなさそうなのも納得できるし、浮遊中にばちこーんと殴られて飛ばされた時にブレーキをキキーッとかけ、そのGによって顔を苦しそうにする的な表現も納得がいく。つまり、浮遊中であっても自分の体に作用する外力はちゃんと慣性として働くので、それを止めるには同じくらいの反対方向の力を自分の体に作用させなくてはいけなくなるので痛そうだと。これはなるほどだ。
そうであるならば空中でスーッと垂直移動して相手と向き合ったりする動きが比較的楽にできることも納得がいく。適当な大きさで慣性力を働かせて、目的地が近づいてきたら逆方向の力を徐々に働かせてブレーキをかければいい。スキーやスノーボードの要領だ。
この理屈なら力の掛け方や場所も自分で自由に選べることになるから、上むきの移動の停止は肩に、下向きの移動の停止は足裏にかけるようにすれば、物理的な動きの描写もリアルになるのかもしれない。全身に満遍なくかけてるから見た目的にはどこにも力がかかっていないような解釈でもOK。
体表面にのみ力を作用させられるのか、あるいは内臓も含めた、概念的人体全てに掛けられるのかは議論の余地があるところ。戦闘機のパイロットと同じくブレーキの時にGが効いて辛いという演出をリアルにするなら、内臓は制御対象外の方が面白いかも。浮遊戦闘の前は水分や食事は控えるとかの設定も作れそう。
外力の掛け方によって浮遊中の飛行能力の差も出るというなら、万能という感じもなくなっていい気がするな。練習や技術という要素にリアリティが出てくるから。そうなると意外と体重の軽い女の子の方が有利とかならないかな? 子供が最強とか。
なるほど、色々とわかってきた。つまり空中浮遊系の能力の練度というのはAとBの両方のバランスによって成り立つと。
どちらか一方だけでは完全な空中浮遊系の能力とは言えず、その両立が必須なわけだ。それは習得が難しそう。
空中浮遊系能力の実現へ向けて
さて、今のところ地球上で空中浮遊できている人間はいなさそうなのだが、ヒントとなるものはありそうだ。
Bの体験だけなら宇宙に行けばできるし、Aの体験もフライボードなどのレジャーで可能らしい。
実際に見てみよう。どれどれ……。
https://www.youtube.com/watch?v=FgdP4kKHimQ&ab_channel=%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%B3
いやすげーな!!
まじでAの理論で飛んでてわろた。
そういうわけで、みんなもA/B両方の能力を身につけて楽しい空中浮遊系能力ライフを送ろう!