言葉の連鎖をオブジェとして受けとめる
よく他者との関わり方において「同じ人間として向き合うべきだ」ということが言われるが、おそらく「同じ人間」としてイメージする像は人によって異なるため、しばしばすれ違いが起こる。
僕はこれまで他人の話を聴くときに、なるべく話の内容に関心を持って、わからない箇所を質問して、より正確に理解しようと努めるのが「よい聴き方」だと考えていた。
相手の話が枝分かれしていくとしたら、その分岐の手前で質問を挟み、疑問を解消していくのがいいと思っていた。
しかし相手によっては、正確な意味を逐一理解しようとするのではなく、むしろその言葉の連鎖をまるごとオブジェとして受け止めるような聴き方のほうが適している場合があるのではないだろうか。
枝が分岐していくのなら、そのまま分岐し育っていく様を観察する。樹として観察する。樹全体に込められたざっくりとした印象や、その背後にある感情をふわっと受けとめる。そのような受けとめ方のほうが正解の場合があると思う。