下流化
公益財団法人国際通貨研究所経済調査部・主任研究員・福地亜希「インドネシアにおける大統領選挙結果と新政権の課題」に詳しく書かれている。単に原料を輸出するのではなく、サプラーチェーンの下流における加工等による高付加価値化を進めようという政策であるとのこと。 プラボウォ陣営は、ジョコウィ政権の成長重視の経済政策を継承する方針を掲げており、カリマンタン島東部「ヌサンタラ」への首都移転プロジェクトや未加工資源の輸出を制限して精錬・加工工程の外国企業の投資を誘致し、国内産業の高付加価値化を目指す「下流化」政策(詳細後述)、電気自動車(EV)メーカーの投資誘致など主要な経済政策や外交政策に大きな変更はないとみられる。プラボウォ氏は選挙戦の中で、こうした政策を引き継いだうえで、「下流化」政策の対象を、ボーキサイトや銅、錫といった鉱物資源、農産物、海産物の 21 分野まで広げる意向を表明するなど、同政策は強化される方向にあると考えられる。
政府は、サプライチェーンの川下を含めた高付加価値化のことを「下流化(hilirisasi)」と称している。
インドネシア政府が、2010 年代から推進している産業政策の一つに「下流化」政策が挙げられる。未加工資源をそのまま輸出するのではなく、国内で中間財または完成品の加工することで付加価値を高めるとともに、雇用創出につなげることが狙いである。対象商品には、ニッケルをはじめとする鉱物資源やパーム油などが挙げられる。鉱物資源に関しては、2009 年に「鉱物石炭鉱業法」を制定し、2014 年には未加工鉱物の輸出を禁止した(第 3 表)。パーム油に関しては 2011 年に傾斜輸出制度28を導入した。2020 年1 月にはニッケル、2023 年 6 月にはボーキサイトの未加工鉱石の輸出を禁止した。