就活婚活クソくらえ
増える選択肢とマッチングの必要性
インターネットや色んな技術というものは、現代人に多くの選択肢を与えてくれるものだ。例えば昔だったら地球の裏側取れる作物を口にすることなんて出来なかった。それが今では船だの飛行機だの鉄道だの自動車だので遠路はるばる運んできてそれを食すことが出来る。食べ物の選択肢に「地球の裏側の作物」が技術によって加わったわけだ。
選択肢が広がるというのは素晴らしいことで、例えばアレルギーなどで普通の食事が難しくなった人も、技術があれば自分でも食べられる料理を世界中から探してくることができる。難病の人も治療できる医師を見つけられるかもしれないし、特殊な趣味を持つ人も同好の士に出会うことができる。選択肢の幅が広がるということは「選択肢を与えられず泣くしか無かった人」がそれだけ減るということで、これは素晴らしいことだ。
ところで、選択肢が多ければ多いほど良いというものでもない。例えば、人参を食べたいと思ってスーパーに来たのに、スーパーに人参が世界中から数百種類集まっていたらあなたはどうしていいか分からなくなるだろう。どの人参が美味しいのか身体に良いのか安全なのか色形が良いのか価格はどうか……。沢山の評価基準を用意し人参と人参を比較しなければならなくなる。これはとんでもない手間だ。しかも食べる前には分からない情報もある。あなたは人参を食べた後「やっぱりあっちにしておけば良かった」と後悔するかもしれない。後悔する確率は選択肢が多ければ多いほど高くなる。
実際のところ数百種類の人参を置いているスーパーなんて無い。大抵2,3種類しか置いてない。安くて普通の奴と高くてちょっといい奴みたいな対比になっているはずだ。2,3の選択肢であればよほどのことで無い限り後悔はしないだろう。勿論世界に2,3種類しか人参が無いわけではない。あなたの手元に届き得る人参は実際数百種類ある。あなたの通うスーパーがあなたの代わりに人参を選び、あなたと人参をマッチングさせているわけだ。
技術は人に選択肢をもたらした
これにより今まで選択肢の無かった人にも選択肢が与えられた
一方で選択肢が増えすぎて選べなくなる現象も発生した
だから、マッチングが必要になった
就活婚活は如何にしてクソと化すか
人参と人間のマッチングは大して難しくない。何故ならほとんどの人間は人参に大して拘りなんか無いからだ。問題は人間と人間のマッチングだ。一人の人間の価値・影響度は一本の人参よりはるかに重たいし、人参と違って人間は換えがきかない。
人間と人間のマッチングというのは例えば就職であり例えば結婚だ。所謂就活や婚活の類。様々な技術の進展により雇用・就職・結婚の選択肢は大幅に広がった。これによって初めて選択肢が与えられたマイノリティもいるかもしれないが、マジョリティたちには手に余る選択肢が降り注ぐことになった。会社はより優秀な人間を求めるし、労働者はより快適な職場を求めるし、人はより良い結婚相手を求める。
より良い選択肢を求めるのは当然だが、選択肢が多すぎることによって先述の不幸が発生する。選ぶのにかかるコストが莫大になり、選択の結果に後悔する。
それだけじゃない。選ぶための情報を一人々々自分で調べていたらおいつかないので、規格化された情報を全体で共有しそれを目安にする。職場なら給与とか休暇とか、労働者なら年齢とか学歴とか、結婚相手なら容姿とか年収とか。この規格化された情報は比較しやすさを提供すると共に不適切な序列化を生み出してしまう。本来意識しない要素でも情報として表されれば意識してしまうし、小さい数よりは大きい数の方を選んでしまう。本来ならば各人異なる観点や物差しで測るところを、規格化された情報はそれを画一化してしまい、人は不本意な序列に組み込まれてしまう。
この序列は選択肢が多ければ多いほど地獄を作る。10人で作った序列の1位じゃない人は9人だが、1000人で作った序列の1位じゃない人は999人に上る。何となく身近に例が無いだろうか。ちょっとした身の回りの人を驚かせるくらいの特技を持っているが、インターネットを見るともっとすごい人がゴロゴロいて自信を失うみたいな。個人のプライドの問題なら気の持ちようでどうとでもなるが、人間と人間のマッチングの場合深刻な問題になる。大多数の需要の矛先が序列の上位に集中してしまい、下位どころか中位の人まで「妥協で選ばれる対象」になってしまう。
婚活や就活など人間同士のマッチングで選択肢が多すぎると地獄になる
選択肢を比較するコストが大きくなる
後から「やっぱあっちを選んでおけば良かった」のような心理になりやすい
比較対象が序列化され上位にばかり需要が集中してしまう
まとめ(感想文)
就活婚活を始める人はその序列の上位を目指す競争に参加することになる。画一的な評価基準による成績をより良くするために、皆同じような努力をして同じような結果を目指す。ところがあくまで相対的な"序列"なので全員が努力すればする程競争は激化するばかりで、努力に対する結果のコストパフォーマンスは悪くなっていく。その過程で人は自分を見失い自信も失っていく。一方マッチング業者はこの競争が激化するほど儲かるので競争を煽ることが最適解になる。
僕は就活や婚活が嫌いだけど上述の通りこの競争は誰かが悪意を持ってもたらしているわけではなく、社会の発展によって必然的に現れた現象であり、これを解決するために社会は新しい仕組み新しいステージを目指すべきだと僕は考えている。例えばアニメPSYCHO-PASSのシビュラシステムのようなものが完璧ではないにせよこれへの解に近い選択肢の1つにならないかと僕は思っている。AIもしくは生体と機械の連携技術の進展に、期待したいところである。