テニスとサッカー
別に、一般的に青年期におけるスポーツの経験がその後の精神の成り立ちに大きく影響を与えるとあまり信じているわけではないし、個人の話としてもそうであったとかいうつもりもないんだが、それぞれのスポーツがプレイヤーにもたらす成功体験はそれらに用いる道具やルールによって異なる性格を持つというのは事実としてあるとはいえる。
テニスは人間の身体の部分としてはもっとも器用な手を用い、その手を長さの面でも面積に関しても拡大するようなラケットでボールを打つという行為を、1対1ないし2対2少人数かつ2人称視点のみに絞って行うというルールから、失敗を中心としたゲーム体験になる。成功をベースにした中で異常としての失敗によってゲームが動き、プレイヤーの試合に向けた準備や試合中の心構えもその異常を肝心の場面で引き起こさないということに主眼が置かれる。
一方でサッカーは基本的には足しか使えないという制約と11対11という大人数かつ役割分担の異なるプレイヤーというルール設定から失敗がベースとなり成功によってゲームが動くというテニスとは逆のゲーム体験になる。試合に向けた準備は複数プレイヤーがかかわる活動の1回の成功をより高確率に引き起こすための準備になり、失敗を恐れず、失敗の次には成功があると信じる心構えが要求される。
どちらが良いという話ではない。