詩学
ストーリーの統一性
(今度はストーリーの完結性を統一性の面から考えると)ある人々が考えているように、「一人の人物」をめぐるストーリーでありさえすれば統一性があるというわけではない。なぜなら、一人の人物には多くの、数限りない出来事が起こり、その中のいくつかは、寄せ集めても決して統一性のあるものにはならないように、行為の場合も、一人の人物は多くの行為を為すのであり、それらを寄せ集めたからといって統一性のある「一つの行為」になりはしないからである。
二重の構成
二番目に良い構成は、一部の人々が一番良いものに挙げる二重の構成で、とくに『オデュッセイア』に見られる(勧善懲悪の)種類のものである。すなわち、善人は不幸から幸福へ、悪人は幸福から不幸へというように、それぞれが正反対の結末を迎える種類の二重の構成である。この種の構成が一番良いものに思われてしまうのは、観客たちの精神的な弱さのせいにほかならない。というのも詩人たちは観客たちに追随し、その願望に迎合するようにして創作するからである。