日本におけるスタートアップエコシステムの形成過程
参考文献
その他多数
日本におけるスタートアップ・エコシステム形成過程(主題)
現状の説明をできるようにする(先行研究の読み込み)
スタートアップ・エコシステムという言葉の整理
政策上の文脈
定義
Spigel(2017)が示した「地域内の経済的、社会的、文化的、政治的、物理的要素の組合せであり、起業家がリスクの高い事業を立ち上げ、革新的なスタートアップの設立や成長に対し、資金や人的支援を含む様々なサポートを行う有機的な連携体」という定義が包括的であるため、これを採用する。
学術的な文脈
後者を採用する
これまでのSES 研究では、その対象を革新的で成長志向を持ってスケールアップするスタートアップに絞り込み、これを牽引する起業家こそがイノベーション創出や生産性向上の重要な源泉であると強調されてきた
(World Economic Forum, 2013; Mason and Brown, 2014)
成功したスタートアップによって生み出された資本、知識、ネットワーク、ノウハウが次の世代の起業家へのメンターシップや投資を通して、SES内に蓄積することを意味する(Mason and Harrison, 2006)
ある任意の展開が他の展開に続いたり、意図的に選択されたりする理由を理解するために用いられる(David, 1988;Arthur, 1989)。代替軌道を完全に支配するものではなく、過去からの積み重ねが弾力的に現在の選択肢に影響を与える。SES の進化においても、経路依存性が不可欠であることが多くの文献から読み取れる(Brown et al., 2016; Mark and Mayer, 2016; Auerswald and Dani,2017; Schillo et al., 2016)
(e.gSchäfer and Henn, 2018)
帰国子女や移民の起業家のことを指す
トランスナショナル起業家とは、出身国の外(居住国)でビジネスを行いながら、同時に2ヵ国以上の社会構造に組み込まれている起業家のことをいう。その二重性が利用可能にする複数の国々の資源・市場・制度を組み合わせることにより、特有の起業価値を生み出すことが特徴である。播磨(2022)pp.183‐184参照。
(トランスナショナル起業家のアントレプレナーシップに関する予備的考察-ハワイKodama Koi Farmの事例, 吉田, )
①地域におけるSESの形成が、いかにして地域レベルでの企業とその後の価値創造を可能にするかを示す研究
SESの形成それ自体ではなく、SESが地域経済に与える影響を論じている
②SESの構成要素に関する研究
結果的にSESの形成プロセスに関する研究とみなすことができる
基本要素は以下の3つから成る。
地域における起業に対する基本的な信念や見通し、態度を表す。
社会的属性(Hoang and Antoncic, 2003) リスクキャピタル、優秀な人材、経験豊富なメンター等の資源
社会的ネットワークを介して利用される
物理的属性には、大学等の高等教育機関や、支援を提供する施設や組織などのハード的要素と、起業を後押しする政策や、新製品やサービスのテストが可能な市場といったソフト的要素が含まれる。
Spigel(2017)はその各要素の影響過程を「文化→社会→物理」としている
Brown and Mawson(2019)は「物理→社会→文化」ぽいタイプのことを論じている
結果的に、振興事業の発展に批判的だった既存企業の多くも徐々にその姿勢を緩和させ協力的な態度を取り始める
③地理的近接性を巡る競争優位性の議論
SESの地域性に関する議論では、「地理的近接性によって競争優位性がいかに生み出されるか」という議論がなされる。hiragi.icon
暗黙知は地理的に近いほうが伝達されやすく、スタートアップもそういう場所へ移転していくよねという議論
それを支持する理論として「情報」と「知識」の理論的区別や産業クラスター論が存在する 情報とは文脈によって解釈が変わることのない成文化された事実であり、情報へのアクセスや理解において、空間的な乖離は重要ではない
他方、知識は暗黙的な性質を持つ。そのため、その解釈や価値も受け手の文脈に左右される。加えて、暗黙知は成文化が難しいため、特定の暗黙知を理解し、伝達するためには、非言語コミュニケーションのウエートが高まる。このような考え方は「情報の粘着性」といった概念に集約され、一般にも広く浸透した(vonHippel, 1994)。
日本国内においてファインアートやデザイン、民芸(工芸?)領域にバックグラウンドやその技術の由来を持つ人々のSESは存在しない。「情報の粘着性」の概念より、これらの人々を集めるSESを構築することで、競争優位性を持った新たなSESを国内で構築することができるのではないかhiragi.icon
④アントレプレヌル・サイクルと地域の結びつき
SESの径路依存性が起業家のリソースを拡大するという議論
特定の場所に長く住み、社会的つながりを深めた起業家は、新規参入者よりも成功する傾向があることが示されており、さらに成功して撤退した後もその地域に留まる傾向がある(Dahl and Sorenson, 2012; 福嶋, 2013)
SESの内生的なダイナミクスに焦点を当てた研究(Alvedalen & Boschma, 2017)
自分の研究においては「起業家のリサイクル」は観察可能ではあるhiragi.icon
WE ATにおいて1年目に集めた起業家たちが2年目に集めた起業家たちに対してどのようなリソースを供与するか?という視点hiragi.icon
⑤トランスナショナル・アントレプレナーに関する研究
初期段階では重要ではないとされる(Mack and Mayer, 2016; Spigel and Harrison,2018)
初期段階
地元の起業家や政策立案者が、ボトムアップとトップダウンのプロセスを組合わせて推進
トランスナショナル・アントレプレナーは萌芽したSESの成長と発展に寄与する存在である(Kenney et al., 2013)。
⑥社会的ネットワークにおけるトラストに関する議論とダイバーシティマネジメント
重要なリソースは社会的ネットワークを介して提供される
信頼を獲得することが重要
その一方でダイバーシティが重要な局面もある
e.g. トランスナショナル・アントレプレナーのSESの成長への寄与
研究目的=何を重点的に明らかにしていくか(3Stepで考える)
定量研究は行わず、定性研究を行う方向性に持っていく?(代理変数化が難しいので)
研究目的①
SESの要素に関する観点
ファインアートやデザイン、民芸領域にバックグラウンドやその技術の由来を持つ人々の集まるSESにおける文化的、社会的、物理的属性とは何か、先行研究のレビューによって明らかにすること
また、明らかになっていない部分が多ければ、そのSESを構築する過程で(ARによって)明らかにする。
研究目的②
SES形成の初期段階の観点
研究目的③
ダイバーシティマネジメントの観点
日本国内のファインアートやデザイン、民芸領域にバックグラウンドやその技術の由来を持つ人々のSESを形成することで、日本のSESにおいてどのような異なるレベル・タイプのアウトプットを生み出すのか明らかにする?
WE ATにおけるアクションリサーチを位置づける
アクションリサーチとは何か
ARのプロセス
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ARの定義
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ARにおける研究者のポジション
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本研究の研究手法
ARをどのように用いるのか(計画)
①ファインアートやデザイン、民芸領域にバックグラウンドやその技術の由来を持つ人々のうち、起業家として活動する人を訪ねて回る。全国のインキュベーション施設や五藝大にハブがあると仮定して、ネットワーキングを行う。
②アンケートおよび半構造化インタビューの実施
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その他メモ
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技術系スタートアップ(NTBFs)簇業・成長・地域エコシステム構築モデル
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仙台市と金沢市を比較して以下のリサーチクエスチョンに応える形で論文執筆している
① エコシステムの「地域性」は、構成要素においてどのように現れるのか。
② エコシステムの「地域性」は、発展プロセスにおいてどのように表れるのか。
SESの形成過程について注目する
前提として、SESには地域性がある
地理的近接性が高いと暗黙知が伝達しやすい
SES形成過程には径路依存性があると言われているhiragi.icon =径路依存性がある特定の場所に長く住み、社会的つながりを深めた起業家は、新規参入者よりも成功する傾向があることが示されており、さらに成功して撤退した後もその地域に留まる傾向がある(Dahl and Sorenson, 2012; 福嶋, 2013)。
しかし、SES のダイナミック・プロセスのうち、どのプロセスがこのような特性を持ち、
どのプロセスが現在の状態や環境によってのみ決定されるのかは依然として不透明なままである
「SESの径路依存性」=ダイナミック・プロセスのどこかが「現在の状態や環境」によってのみ決定される
先行研究におけるSESの形成過程に関する議論
More in general, the empirical analysis of the dynamics of networks in entrepreneurship studies is still rare, although conceptually, it has attracted wide attention (Hoang & Antoncic, 2003).
SESにおける時間的変遷の研究はレア
例えば、Hite and Hesterly (2001)は、新興企業のネットワークは、例えば、凝集的なネットワークから構造的な穴を利用するネットワークへのシフトに具現化されるように、創発期から初期成長期へと変化することを提唱している。学者たちは、EEが進化するにつれて、その要素の重要性やつながりが変化していくと主張している(Lefebvre et al.)
SESの要素(3要素?)の重要性やつながりが変化する→どのように?hiragi.icon
SESの「ダイナミック・プロセス」とAlvedalen and Boschmaらが呼んでいるものたち
2つ目の論文はうちの大学からアクセスできないhiragi.icon
「制度」について論じるときに、その制度がどのように出現ー変化して、起業家精神に影響を与えたりそうでなかったりするのか?という点が無視されがち(Hwang & Powell, 2005)
起業家は少数
risk adverse culture=リスクを嫌う文化
very little financila capital
support organization emerge
幾つかの要素(これなにhiragi.icon)が起業家精神に特化して発展する(よくわからんhiragi.icon)
market becomes national and global
networks get denser=ネットワークが密になる
目に見える起業家がロールモデルとなり、起業文化を発展させる
サポートはより専門的になる
シリアルアントレプレナーの数は著しく減少する
起業家start to give preference to employment
venture capital becomes harder to get=VCの獲得が難しくなる?日本語訳わからんhiragi.icon
and there is a lowered entrepreneurial focus in education and supports elements.
=教育や支援要素における起業家志向が低下する(?)hiragi.icon
市場、ネットワーク、資本、支援は減衰or消滅する
新たなサイクルが始まることもある
→モデルでは、各段階における政策の役割変化についても論じているらしいhiragi.icon
SES形成過程のうちどの部分(例えばどのphase)に径路依存性があるのか
これは上記論文の指摘じゃないかもhiragi.icon
径路依存性に焦点を当てた分析が金間(2022)によってなされている
どのようなメカニズムがSESをある段階から次の段階に進めるのか
SES内のどの、異なるコネクションがより重要なのか?
これ、何にとって重要であることを意味してるんだ?hiragi.icon
→上記2,3つ目に対しては「 a dynamic network approach to EE」が重要であるとのこと
しかしこれは不足している(Ter Wal & Boschma, 2011)
最初の段階では、フォーマルなネットワークは主に起業家同士が互いを知り合い、信頼を築くための場として機能します。この段階では、ビジネスに関する学びよりも、孤立感を軽減し、メンタルサポートを得ることが主な目的です。メンバーは定期的な対面の活動を通じて少しずつ関係を深め、ネットワークが徐々に社会的な集まりとして成長していきます。
時間が経つにつれ、ネットワーク内のメンバーはビジネスに関連する学びや情報交換を積極的に行うようになり、ネットワークは「社会的なつながり」から「ビジネス上のつながり」へと進化します。この段階では、メンバーは具体的なビジネス問題に焦点を当て、互いに助言を行ったり、ビジネス機会を共有するようになります。また、ネットワークの構造自体がより定着し、外部の起業家や専門家との連携も始まります。
ネットワークがさらに成熟すると、「実践のコミュニティ」として機能するようになります。この段階では、メンバーは単なるビジネス上の学びや問題解決だけでなく、価値観や態度、モチベーションといった「内面的な学び」にも重点を置きます。メンバーは互いに強い信頼を築き、共同でプロジェクトを進めたり、新しいビジネスモデルを開発するなど、より高度な協働が行われます。また、この段階では、ネットワーク全体としてのアイデンティティが強化され、共通の目標に向けて共同で行動する文化が形成されます
学習意欲の高まりに応じてネットワーク構造が変化
起業家の学習ニーズは、社会化の機会を求めるもの、具体的には、同じような仕事に関連した問題を抱え、同じようなライフスタイルを送る人たちと知り合うことを求めるものから、より道具的な志向へと変化した。
愚痴を言い合う仲から情報源、ガイダンス、ビジネス上の新たな人脈として、仲間との関係に注目するようになった
This chronological perspective on network development should not hide the fact that the network grew rather than shifted from one stage to another, which means that the instrumental phase also comprised a strong socialization dimension, and that the third learning community phase also involved socialization and instrumental issues.
この時系列的視点は、ネットワークがある段階から別の段階へと移行するのではなく、むしろ成長していったという事実を隠すべきでない。つまり、道具的段階は強い社会化の次元も含んでおり、第3の学習コミュニティ段階も社会化と道具的問題を含んでいたのである。
ネットワーク文脈におけるネットワーク・メンバーの学習経験の研究によって、St-Jean and Audet (2012)が強調しているように、ネットワーク環境で起こる学習は認知と感情の両方であることを理解することができた。
Brown and Duguid (2000, 290)と同様に、我々の発見は、「学習と感情はタンデム運動で共に働く」ことを確認した
明らかになっていないこと
正式な起業家ネットワークにおけるメンバーの学習過程と成果に対する、ネットワーク参入の形態と時期が司る役割
起業家精神の獲得における認知と感情の関係
エコシステムの誕生:SESは、特定の地域や産業において発展するためには、豊かな知識基盤や技術が存在する必要があり、研究機関やR&Dラボがその出発点となることが多いです。最初のステージでは、こうした機関が起業家の人材源となり、地域のSESの基盤を形成します
市場機会と技術進歩:SESの発展は、新しい市場機会や技術の進展に密接に関連しています。新技術が出現することで、既存の産業が革新され、それに伴い起業家が新しいビジネスチャンスを見出し、SESが成長していきます(OECD, SES(Maison & Brow…)。
スピンオフの連鎖反応:成功した企業から派生するスピンオフ企業が増加すると、それが地域における連鎖的な成長を引き起こします。この段階では、既存企業の失敗や変革も新たな起業活動を促進し、SESがさらなる成長を遂げる契機となります
ブロックバスター企業の影響:大規模な成功を収めた起業家や企業(ブロックバスター企業)は、SESにおいて重要な役割を果たします。彼らは、資金やリソースを地域に再投資し、次世代の起業家の育成に貢献するため、SESの持続可能な成長を支えます
エコシステムの成熟と再構成:SESは、成功と失敗のサイクルを通じて再構成されることが多く、これが持続可能なエコシステムとしての適応力を高めます。このプロセスでは、地域のリーダーシップやネットワークの質がSESの進化において重要な要素となります
SESの形成における「要素」の議論
全ての要素が一定の基準を満たすまでに成長することで完璧なエコシステムが完成する(Ács et al., 2014)
Spigel(2017)は必ずしも要素が充足しておらずも、SESが機能することを示した
文化的属性の醸成プロセス、起業家への影響の考察を行った
→定性的研究では2事例以上の比較を行なったり、単一事例に注目して構成要素を抽出している
これに対する批判が
いずれも「地域性」の一部の側面への注目にとどまっている。構成要素に注目した類型化の試みは管見の限り多くない。
要素の組み合わせが特に発達した背景や要因の解明には至らず、表層的な特徴の描出にとどまっている。(笹森 et,al., 2022)
モデル化された構成要素を前提とした分析では、地域の特徴を多面的に検討できる一方で、モデルに含まれない特徴は捨象される点、一時点での静的な状況把握にとどまり要素形成の経緯が捨象される点に課題がある(Alvedalen and Boschma, 2017)。
SESの「地域性」とは何か
この認識枠組みにより、「地域性」の現れ方として「人材」や「金融」の要素の蓄積がどの段階にあるかという発展プロセス上の位置や、どの要素がどの要素に影響を与えているかという要素間関係の組み合わせ・内容などがありうることが示された。(笹森ほか, 2022)
SES定量研究
Stam & Ven (2021)が地域単位でのSESの「要素を測定する手段」を開発
オランダの12の地域におけるSESの質的評価を実施(1万件のデータポイント)
10の構成指標と1つのアウトプット指標に落とし込んだ
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「文化の醸成」や「社会的ネットワーク」等の代理変数化に問題あり(金間, 2022)
異なる地域における転用可能性の低さ(金間, 2022)
定量研究における課題
①SESの形成過程における因果関係の追跡
これは径路依存性に関する未解明部分を明らかにすることにもつながるのでは?hiragi.icon
②各要素の量や割合、あるいは組合せに対し、SES として発展するか否かの閾値が存在するかどうか
例えばSpigel(2017)は、SES が有効に機能した結果を「短期的な起業数の多さや起業率の高さのみならず、新規事業の競争力を高める地域環境が形成されること」と記しているが、どのくらいの量が集まればこの状態に至るのかについては定かではない。(金間, 2022)
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【文章フォーマットの提案】
1000文字以内で研究意義、目的、計画、手法を網羅するためには、以下のような構成が効果的です。
研究意義(導入):研究テーマの背景と重要性を簡潔に説明(約200文字)。
研究目的:具体的な研究の狙いを明確に述べる(約200文字)。
研究計画:研究の全体像やスケジュールを概要として示す(約300文字)。
研究手法:データ収集や分析方法など、具体的な手法を説明(約300文字)。
【抽象化した事例】
研究意義
現代社会において、〇〇はますます重要性を増している。これまでの研究では△△が指摘されているが、□□については十分に解明されていない。
研究目的
本研究では、□□の影響を多角的に分析し、〇〇における新たな知見を提供することを目的とする。
研究計画
まず、関連する文献をレビューし、研究仮説を設定する。その後、国内の主要な企業・組織を対象にデータ収集を行い、統計的な分析を実施する。研究期間は202X年から202Y年までの2年間を予定している。
研究手法
データ収集には、アンケート調査とインタビュー調査を組み合わせて用いる。アンケートでは、対象者のデモグラフィック情報や□□に関する意識を測定する。インタビューでは、より深層的な意見や経験を収集する。収集したデータは、定量的・定性的手法を用いて分析し、研究仮説の検証を行う。