今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は
#映画
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映画の最後30分ほどまではずっと男女の三角関係が描かれた甘酸っぱい恋愛映画かと思っていたが、良い意味で裏切られた。
さっちゃんや花の言動の多くが、2人の父の言葉や大切にしている考えからくるもので、どれほど2人が父を愛し、父が2人を愛していたのかが、この映画の主題の一つではないか。2人には『今日の空が一番好き』って思って生きていられることを父は生前願い続けていた。
好きと言うことは、あまりにも恥ずかしく言えないことで長い前置きが必要になってしまう。さっちゃんから言われた言葉の通り、最後に小西が長い前置きをした後にやっと好きと伝えられていた事が微笑ましかった。そこにさっちゃんの息吹が感じられたからである。
『好き』は『このき』で、『幸せ』は『さちせ』。それらの言葉は口にするにはあまりにも恥ずかしく勇気のいるものであるから、前置きも言い換えも必要になってしまうのかもしれない。
それにしてもそれぞれの人物の感情の機微の映し方が繊細で美しかった。相手と自分が惹かれて合っていると思っていたのに一方的であったのだと認めてしまったとき。あるいは自分だけが好きで相手は他の誰かのことが好きだったとき。それらは自分の存在が無価値であるのでないかと思わせるには十分なきっかけであり、虚無感に繋がり得る。相手の言動の一つ一つに一喜一憂してしまう