PMFの終わりとIMFの始まり
戦略的優位性を確約するPMFは、これまで核心的な投資基準であった。しかしそこに生成AIの波がやってきた。特にプログラミング分野におけるAIの影響は小さくない。ソフトウェアの複製コストは確実に下がっており、そうすると少なくともソフトウェア業界に於いてはディストリビューションを握るものが以前にも増して優位になっていくように思える。既にディストリビューションを握っている企業は、流行りつつあるものを素早く複製ないしライセンスし始めている。あとは既存ディストリビューションに乗せてユーザーを囲い込んでいけばよいだけ…のはずである。
IMFとしてのCursor
しかしいざ市場を俯瞰してみると、ディストリビューションを握っているプレイヤーたちが苦戦しているのが今のAI市場である。 この「場面に応じて必要とされる知性が異なる」という現象は、人間同士での仕事の世界で考えるとよくわかる。仕事においては即レスが命と豪語する人がたまにいるが、そこには「返答する内容を考える部分が時間的ボトルネックとはならない」という仮定が存在している。つまり長考する必要がないわけであり、だったら素早く返事した方がよいというのはその通りだろう。Cursorの文脈で言うならば自動補完とAsk機能の中間くらいの知性が求められる仕事である。
これからのプロダクトはオンライン・オフライン関わらずAIが内蔵されたものが増えていく。そしてそのAIと接触するインターフェースそのものがパクリ放題となると、当然ながら差別化は、一つ下の抽象化レイヤーにあたるAIそのものの知性のレイヤーで生まれざるを得なくなる。そしてその知性というのは一意的ではない。この(AIの)知性と市場ニーズの合致をIntelligence Market Fit(IMF)と呼び、IMFの観点からここ最近の市場の流れを整理してみる。