厄介な問題
1. 厄介な問題に決まった形はない。
2. 厄介な問題には終わりのルールがない。
3. 厄介な問題に対する解決策は、正解/不正解があるのではなく、良いか悪いかがある。
4. 厄介な問題に対する解決策は、すぐには検証できないし、完全に検証することもできない。
5. 厄介な問題にたいする解決策はすべて「1回きりの対処」になる。試行錯誤して学ぶ機会もないので、毎回の試行が重要だ。
6. 厄介な問題には、とりうる解決策を列挙できるものはないし、計画に組み込むことが出来るようなハッキリしたオペレーションもない。
7. 厄介な問題は皆、本質的に独自性がある。
8. 厄介な問題は皆、別の問題の兆候も考慮しなければならない。
9. 厄介な問題を記すときに矛盾があることは、さまざまな方法で説明される。説明の選び方によって、解決策の性質が決まる。
10. プランナー(デザイナー)は間違う権利がない(※ 自分で決めたアクションの結果に責任を持たなければならないという意味) "As We May Think"より。
厄介な問題の例
高速道路は市街地の横切って通すべきか、市街地を迂回するように作るべきか?
学校での犯罪や暴力をどう扱ったらよいか?
新しい製品にどういう機能があったらよいか?
厄介な問題へのアプローチ分類
権威的アプローチ
少人数の専門家で立ち向かうことによって、問題の複雑さを減らし、多くの争点を初めから消去する。問題に取り組むために必要な観点のすべてを評価できるわけではないことが欠点になる。
競争的アプローチ
対立する見解をぶつけ合うことで、問題を解決しようとするもので、解決策を互いに比較検討できるのが利点である。が、対立的な環境を作り出すので、知識の共有が妨げられることがあるのが欠点である。
協調的アプローチ
最善の解決策を見つけるために、すべてのステークホルダーを関与させることを目的とする。欠点は合意までの時間を要し、それでも合意に至らないケースがあること。
厄介な問題の非線形性
複雑な問題は、以下のように、データ収集、データ分析、解決策の策定、解決策の実行のフェーズを経て「ウォーターフォール」アプローチで線形に取り組むのが伝統的なアプローチだった。
https://gyazo.com/78388e188698746bf7273bd1d34d55f8
だが、厄介な問題では、解決策に見えたものが新たな問題を生み…を繰り返すので非線形な挙動を示し、問題と解決策の間を行ったり来たりする。
https://gyazo.com/834926f7cf1f25f3a795548fd0f77344
厄介な問題のための共有理解: Dialogue Mapping
Dialogue Mappingは1990年代にJeff Conklinによって提唱されたファシリテーション技術である。厄介な問題の共有理解を形成するためのツールとなる。IBIS(Issue-Based Information System)とよばれる文法を使う。
❓質問
💡アイデア(または質問への答え)
➕Pros (賛)
➖Cons (否)
Mapperのロールを決め4ステップ(Listen/Guess/Write/Validate)のサイクルを回しながら、対話を通じて図を書いていく。
例
https://gyazo.com/d7bac6277a7f2ab98cd1559fe30ef9cb
この両端にさらに対話を広げていくことができる。
https://gyazo.com/51d87c5c5e38a163540e9985d14f9b64
こうして、厄介な問題の構造を明らかにし、ステークホルダー間での共有理解を形成する。
(参考) Miroを使ってDialogue Mappingをするやり方
質問の種類
ダイアログマッピングにおける質問にはいくつかの種類が考えられる。
義務的質問
「私たちは〜するべきだろうか?」というもの。十中八九はルートとなる質問はこの義務的なものになる。
媒介的質問
「私たちはどうやって〜すべきだろうか?」という形式。義務的質問がWhatを問うのに対して、媒介的質問はHowを問う。
評価軸的質問
「その評価軸(基準)は何?」という形式のもの。義務的質問や媒介的質問がボトムアップ思考であるのに対して、評価軸的質問はトップダウン思考になる。
意味や概念を問う質問
「〜が意味するものは何?」という形式のもの。用語の定義に共通認識が持てないものは、この質問で明確にしておく。これは「正しい」意味を導くための質問ではなく、その用語の意味する「範囲」を明らかにするための質問の意味あいが強いことを念頭に置いておこう。
ファクトに関する質問
何かを参照すれば事実が分かるものについては、この質問を掲げてそれが見えるようにしておく。例えば以下のようなもの。
現在の予算はどれくらい?
システムの最新バージョンは何?
XはYと互換性はある?
背景に関する質問
いつも必要というわけではないが、問題のコンテキストが十分共有されてない場合には、この質問を通じて明らかにしておく。
ステークホルダーに関する質問
関係者が多い問題に関しては、特にこのステークホルダーがどれだけ存在するかを明らかにしておく必要がある。