情報と物語
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残念ながら日本では、こうしたストーリーにお目にかかる機会がめっきり少なくなってしまった。雑誌も本も「物語」ではなく「情報」を扱うメディアになってしまったからだ。雑誌だけではない。ある時期から、あらゆるメディアがひたすらカタログ化の一途をたどった。そしてほどなくインターネットが到来し、それはいとも簡単に駆逐されようとしている。
雑誌制作の現場で「ウェブ連動」「アプリ開発」といった話題が出ると、ただでさえ情報化している記事に動画や音声といった情報を上乗せすることが絶えず議論される。それは「付加価値を生む」という。けれども、これだけ映像や音源が無料で氾濫している時代、動画や音声をただ加えてそれが価値を生むと単純に考えることはできない。クリス・アンダーソンの言に従うのであれば、電子デバイスが可能にした新たな機能は、「物語」をよりよく語ることに奉仕すべきものであるはずで、情報をただ上積みしていくためにあるものではないはずだ。電子デバイスは、いったいどんなストーリーをぼくらに提供してくれるのか。問うべきは、そこだ。新しいメディアは、ぼくらに新しいストーリーを提供することができるのか。 2012年6月、eBookをめぐる状況に関して面白い記事を『WIRED』のウェブサイトで見つけた。「電子書籍が紙に負ける五つのポイント」というお題で、ジョン・C・アベルというテック系ライターが買いたものだ。彼は、印刷/紙/フィジカルの本と比較しながら、eBookの弱点を以下五つのポイントにまとめている。 2. 購入した本を1箇所にまとめられない
3. 思考を助ける「書き込み」ができない
4. 位置づけとしては使い捨てなのに、価格がそうなっていない
5. インテリアにならない
ここでとりわけ気になったのは1. だ。彼は、ここで、eBookというものを読み通すことの困難を語っているが、これは実際、かなり的を得た指摘だ。Kindleを買ってみてわかったのだが、思い立ったらいつでもどこでも読み物が帰るというのは嬉しいことで、購入直後に一気に読み始めるのだが、数日経つとそれを買ったことさえ忘れてしまうことがほとんどだ。 ***
Kindle 読み忘れるのめっちゃわかります。でも大きく時間が空いたときに開いて読むので、ずっと残ったままにはあんまりならないかもです。電子書籍はもっぱら「待つことを減らす手段」だと思っています。kiyopikko.icon