ジャロン・ラニアーの提案
本書のなかでラニアーが提案していることはあっちゃこっちゃに散らかってはいるが、基本、ラディカルである。たとえば、次のようなことだ。
多くの集団が出入りする自由だけを管理するための社会設計思想を変更しなければならない
音楽表現がMIDIで固定化してしまったような例をおこさないための対策を練るべきだ。そのためにはミュージシャンは闘うべきだ
そうしなければ危険な目にあいそうな場合を除いては、投稿時に匿名を用いないほうがいい
ネットユーザーは、SNSが用意したテンプレートには収まらない思考や表現をするのがいい ときには閲覧時間の100倍の時間をかけた動画を公開してみなさい
メタファーの効用をあらわせるアルゴリズムを思考やコミュニケーションのクロスモーダルな領域で発見する
デジタルデザイナーは人間の理解力を学習して、その理解度に見合ったデザインを提供するようになったほうがいい
フェイスブックなどで広まりつつある「まやかしの友情」にクサビを入れるべきだろう
シリコンバレーはリバータリアニズムで充満している。こんなことにインドの若者や日本人の才能やアジア人の技術力がかまけているのはつまらない
人間の愉快で充実したコミュニケーションには必ずや非合理なものがかなりまじっている。これを除去するIT革命には問題がある
そろそろ自然史を大枠のメタストリーとした物語編集脳裏欲をもった人工知能をつくるべきである
ところでこの提案群のなかに、スロウィッキーのベストセラー『「みんなの意見」は案外正しい』(角川文庫)のような考え方にあまり依拠するのは危険だという意見が入っているのだが、このあたりの意見についてはまだまだ理解されていないところだろうと思うので、一言加えておきたい。