鳥はいまどこを飛ぶか
https://scrapbox.io/files/65432c4571d3cc001ca47010.png
確かインターネット掲示板でオススメされていたか何かだった気はするが購入した理由も最早定かでなく、十年以上本棚に眠っていた文庫本を読んだ。
あまりに不条理に過ぎる物語(カルブ爆撃隊)も内包しつつ、全編通して現実とうまく折り合いつかず「ここでないどこか」を夢想するビジネスマン主人公が四十数年の時をジャンプしシンパシーを感じさせた。
随分寝かせた価値はあったのかもしれない。
本を読めなくなったと自認して久しいがむしろ書籍購入費の絶対量は年々増加しておりこれは技術書の影響である。
ここ数年、技術書以外の本を読んだ記憶がほぼない。
技術書は血となり肉となりとても幸福なことだが、SNSでも仕事場でも書籍でもほとんどエンジニアの書いた文章しか読んでいないことに戦慄する。
政治も文学も思想も何もプロでない技術者のホモソーシャルな文章のぬかるみにハマり言語的能力の退化を感じていた。
世界の捉え方がコミュニティに社会化してしまい論理や技術がぴっちりと脳に横溢し、無意味や遊びを考えるスキマがなくなっていた。
答えが載っているテキストばかり読んでいるので思考が上滑りし続けている感覚。
世界の捉え方は更新していかなければダサい大人になってしまう。
現実に満足し慣性の速度で生きているときと、過密極まるスケジュールに忙殺される時期は文学を読めなくなる個人的規則性があり、恐らく諸々の事情が複合的に重なりちょうど読める状態になったのが今なのだと思う。
Scrapboxを始めたりしたのも同様のきっかけの関与が窺える。
今更何を読もうかと書店を訪れ期を逸するのは避けるべく、本棚に並ぶ積まれた文庫本の中から本書をピックアップした。
数年ぶりの小説はとても良く、普段使わない脳の筋肉が動いている実感があった。
「SFは同パラダイムにおける人間の想像力の限界」とは誰の言か、読書を通し思考が拡張される経験も良いものだ。