生産者であることと消費者であることは同時でなくてはいけない
――日本の将来は悲観的ということですが、60年前の悲惨な状況から経済大国にまで成長したということを考えると、そんなに悲観的になる必要はないのではないでしょうか?
宮崎 経済の恩恵を得た結果、その次のステップに「どういう風に進むか」ということだと私は思います。次のステップに進む時に、大変多くの知恵と自制心がいるのだと思います。生産者であることと消費者であることは同時でなくてはいけないのに、私たちの社会はほとんどが消費者だけで占められてしまった。生産者も消費者の気分でいるというのが大きな問題だと思います。それは自分たちの職場で感じます。人を楽しませるために自分たちの職業で精いっぱい力を尽くすのではなく、それもやるけれど、ほとんどの時間は他人が作ったものを消費することによって楽しもうと思って生きていますね。それは僕のような年寄りから見ると、非常に不遜なことであるという風に、真面目に作れという風に、力を込めて作れという風に(感じ)、「すべてのものをそこ(作品)に注ぎ込め」と怒り狂っているわけです。だから全体的なモチベーションの低下がこの社会を覆っているんだと思います。