一平全集
保護期間満了なのでログインしなくても読める
この巻で小説家のことめっちゃ書いてる&描いてる
絵と一緒に載っている
諧謔文人畫譜
絵とそのコメント
https://gyazo.com/41deb66a08450a92ff96941fa73e5536
横 光 利 一
横光、もゝの見方を新らしくせんと苦心して居るところ。
なんか股ごしにお菓子とお花見てる?
これをやっている描写が出てくる本があった。実際の話だかなんだかわからないけど
「七階の運動」の冒頭だけ書き出したものの、原稿が全く書けなくて奇行に走りまくる様子が描かれる
空は梅雨期の灰色だ。郊外の畑路である。彼は股眼鏡をしてみた。兩の股をひろげて、上から逆に、顔をその股の間へ出すのだ。僕も彼の真似をした。血が頭へのぼつて僕はすぐ苦しくなつてしまつた。二人の長髪は灰色の空の下で、大地の上に垂れさがつた。まるで狂人(きちがひ)沙汰である。
https://gyazo.com/5ca855933b83af1c4eaf8a0888ceb370
川 端 康 成
川端康成對手の顔を凝視する癖あり。彼の得意の掌の小説的に彼の肖像を描けば圖の如くなる。
👀
漫畫家の見たる文藝家の顏
(横 光 利 一 氏)
好箇の青年といふ感じを受ける。
アンビシアスな張りつめた情熱を一遍新奇にして用心深いロジカルな手紡機で紡ぎ整へて出さうとする。せめ縒り合せた、切ない感じが氏の織物の上に無いでもない。然し斤質の張力は確に在る。
風貌に萎ゑた感じや、饐ゑた感じが一つも無いのは先ず目出度い。新慈姑の剥き立てのような鮮新で質のこまかい皮膚をしてる。尖の薄い兜の前立てのような眉が眼と眼の間から突き立つてる。瞳は据はつて黒い。眼と眉とだけだと高邁一氣に押し出る顔だが鼻が平凡に遠慮してる。俯向き加減で口を慎む人らしい。自恃の念は身體を聳かさせようとするが智慮は慇懃な態度を努めさせる。自らに對する道徳律があるらしく心中克勵の氣が對者にまで染む。稍息苦しい感じを覺える。
氏には二度一寸遇っただけで謂はゞ初對面感だ。その意味のものとして記述して置く。肖像畫を描くならばこれは習作の一枚。
(川 端 康 成 氏)
耳をつんと立てゝ大きな眼をして慧敏な猫の感じ。
黒い大きな瞳が聡く速に動く。神經質の動きだが神經衰弱の動きではない。口にいつでも萬事飲み込んだ微笑――0.8パーセント程の冷笑は混つて居るだらう――を湛へてる。
若し敵ありとするも對等に向つては爭はない。斜の上の方より隠顕砲の砲口を瞰下させる。例の微笑を湛へながら。
性格に適當の潤ひがあつて當りは手柔かだがしんに鯨の髭で作つた骨が入つてる。いくらでも撓むが決して折れない。
いつも半身を開いて退歩の餘地がある。ハタキ込みの手にはかゝからぬ。口で言はないで瞳の輝かし方で自己の底意地を宣示する面白味の處がある。
結構言われてるような(笑)
この項のすぐ隣にある菊池寛の記述がめちゃくちゃ長くて7ページくらいある