勝田ヶ丘志学館が着々と成果
朝日新聞折り込み教育誌「EduA」(11月8日付)に勝田ヶ丘志学館が掲載されました。(短縮版)
ただし、発行地域は以下の範囲で、残念ながら地元では発行されません。
発行地域:東京·神奈川·千葉·埼玉·获城·静岡·愛知歧阜·三重·大阪·兵庫·京都·奈良·和山·滋賀·福网·山口·札眼
11月17日(火)から「https:1/edua.asahi.co/」で、記事全文を読むことができます。
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注目校③勝田ケ丘志学館◆地元の浪人生を支える、米子東高内のもうひとつの「学校」
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鳥取県西部にある進学校、県立米子東高校の校内には、NPO法人が運営する予備校「勝田ケ丘(かんだがおか)志学館」が設置され、地元の浪人生を支えています。志学館を立ち上げた山根孝正館長に、設立に至った思い、志学館の果たす役割を聞きました。(写真は、鳥取県立米子東高の校内で開講されている勝田ケ丘志学館の授業)
県立米子東高「専攻科」の歴史を受け継ぐ
志学館が誕生した背景には、2013年まで米子東高校に設置されていた「専攻科」がある。専攻科は、高校や大学などが本科修了後により専門的な教育を行うことを目的として設置できる。同校の場合、浪人生の受験支援を目的に1960年にスタートした。しかし、民間の予備校が増え、専攻科は役割を終えたとして廃止された。
「専攻科がなくなったことで浪人が減るとみていましたが、実際には変わりなかった。浪人生の足取りを調べると、大阪や広島など県外に出て寮生活をしながら予備校に通う層、自宅で浪人する層に分かれることがわかった。つまり家庭の経済状況で、二極化していたんです」と山根館長は語る。
米子東高校の東大合格者数の変遷をみると、専攻科があったころは例年2~3人が輩出していたが、廃止後は0~2人に減少。専攻科が難関大学への進学を支えてきたこともうかがえた。そこで専攻科を受け継ぎ、「地元に残って、友達と切磋琢磨しながら受験に向かう場所」として構想したのが志学館だった。
山根館長は、2014年から米子東高校の校長を務め18年に退職。1年間の準備期間を経て19年に志学館を設立した。同窓会に協力を依頼し、県から校内の同窓会館を校舎として使用する許可を得る。黒板など必要な校具は知り合いにもらったり、中古品をかき集めたりしてそろえた。講師はつてをたどり教員OBを中心に声をかけたところ、賛同者が現れ体制が整った。名称には「志を持って学ぶ場所にしたい」という思いを込めたという。授業料は年間50万円で、入館料や教材費、模試代金などが別途かかる。
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勝田ケ丘志学館の山根孝正館長。県立米子東高の校長を2018年まで務めた
授業は朝8時から夜7時まで、休みは月1回
「まるで高校4年生でした」と話すのは、京都大工学部へ進学した吉岡重治さん。生徒の8割が米子東高の卒業生なので、ほとんどが顔見知り。クラスをまとめるために毎朝ホームルームを行い、清掃も生徒たちが行う。学校生活は高校の延長だったという。
驚くのはその勉強量だ。授業は朝8時から夜7時まで、1コマ90分授業を中心に時間割が組まれている。休みは月に1回で、土日・祝日も校外模試や授業を行う。
当初は基礎を徹底的にたたき込み、秋から過去問を中心とした演習に集中する。英語や数学などは、東大の過去問も取り上げて思考力を深めたという。大学入試改革をにらんだ受験対策も講じており、朝の45分間は英語のリスニングが日課で、週4日は小論文を書いて記述力を鍛える。「数学など、興に乗れば2時間や3時間ぶっ続けでやった。熱心な先生ばかりで、勉強に対する熱量がすごかったですね」と吉岡さんは振り返る。とくに印象に残っているのが、国語の授業。読解の問題文から派生して、歴史や宗教、哲学まで話は広がった。山根館長は「講師には、学校で長年授業をしてきたという自負がある。合格のための勉強はもちろん、それだけではない将来につながる学びを意識して取り組んでいる」と胸を張る。吉岡さんの目標は大学院に進んで数理工学を学び、将来は数学の力で社会の問題を解決することだという。
奈良女子大理学部に進学した南家楓子(なんけ・ふうこ)さんは、親に経済的な負担をかけたくないと志学館に入館した。「もう1年がんばりたいと思っても、志学館がなかったら浪人できなかった。地元に志学館のような存在があるのはありがたい」と話す。勉強は大変だったが、仲間がいたことで支え合ってこられた。印象に残っているのが、月1回開かれる社会人の講演会だ。浪人を経て大学へ進学した人の経験談を聞き、勇気づけられたという。志望校は志学館の先生と相談し、研究実績を調べて決めた。実験が好きなので、将来は理系の研究者になるのが夢だ。
吉岡さん、南家さんのような生徒のがんばりで、志学館は初年度から東大・京大各1人、奈良女子大2人、九州大3人などの合格実績を上げた。今年は生徒が昨年より10人増え、40人になっている。
山根館長には志学館を、生徒と故郷をつなぐ場にしたいという思いがある。「進学のため米子を離れることになっても、人生の一番苦しいときに同窓会や仲間に支えられて勉強したという経験があれば、故郷に対する思いも深まるのではないでしょうか」