観画談 青空文庫版
ずっと前の事であるが、或ある人から気味合きみあいの妙みょうな談はなしを聞いたことがある。そしてその話を今だに忘れていないが、人名や地名は今は既に林間りんかんの焚火たきびの煙のように、何処どこか知らぬところに逸いっし去っている。
話をしてくれた人の友達に某甲なにがしという男があった。その男は極めて普通人型がたの出来の好い方ほうで、晩学ではあったが大学も二年生まで漕ぎ付けた。というものはその男が最初甚はなはだしい貧家に生れたので、思うように師を得て学に就くという訳わけには出来なかったので、田舎の小学を卒おえると、やがて自活生活に入って、小学の教師の