タヌキの学名の語源
タヌキの学名(Nyctereutes procyonoides)の語源について整理 /icons2/hr.icon
そう言えばタヌキの学名「Nyctereutes procyonoides」は日本語に訳すると「夜をさまよう古い犬」で大変カッコイイという話をブルスコでもしておきます。 いつかこれでピカレスクを書きたい。
「学名の意味
英語版Wikipediaによる。
Nyctereutes procyonoides
「nukt」=夜
「ereuten」=さまよう者、放浪者(wanderer)
「prokuon」=before-dog、原始的なイヌ、といった意味。新ラテン語では「アライグマ」を意味する。
「-oides」="-old"(接尾語)、古い」
なんか色々と間違っている
少なくとも「-oides」は古いという意味ではない
記載論文を見てみる
procyonoides
Nyctereutes procyonoides (Gray, 1834)[タヌキ] プレートの1枚目がタヌキのイラストで、英語名は「RACOON FACED DOG」(アライグマ顔のイヌ)と記されている
タヌキを英語で「racoon dog」と言うのはこれが由来?それとも以前からの呼び名?
このことから分かるように、procyonoidesは「アライグマ(procyon)に似たもの(oides)」の意味で命名されたはず
リンネはアライグマ(Procyon lotor)をUrsus lotorとしてクマ属(Ursus)に分類していた それに対してStorrはアライグマ属(Procyon)を新たに設立し、クマ属とは少し離れた、どちらかといえばイヌ属(Canis)に近い位置に移動させた(p. 35; Tabula Specialior A) このことを踏まえるとProcyonは、「イヌの前のもの」「イヌの祖先」というよりも「イヌに似た」という意味で命名されたと考える方が正解であるように思われる
そもそも18世紀の人物であるStorrが、ある生物のグループを他の「祖先」と認識した可能性は低そうな気がする
完全にありえないというわけではないが……
Nyctereutes
Nyctereutes Temminck, 1838[タヌキ属] Temminck (1838) Tijdschrift voor natuurlijke geschiedenis en physiologie, 5: 285. De opmerkelijkste soort van deze familie is onze Canis viverrinus, in alle opzigten gelijkvormig aan den Canis procgonides van Sina, doch door de verwen zijner huid genoegzaam ven dezen afwijkende, om er eene nieuwe soort van te maken. Deze twee kleine honden, wier kleed in den zomer anders is, dan in den winter, leveren nog eene kleine anomalie op in hun tandenstelsel. Zij vormen eene kleine afdeeling, welke den Procyons van Amerika en het geslacht Viverra van Indie zeer nabij komt: soorten, welke van het geslacht Canis afgescheiden, en in eene kleine groep, onder den naam van Nyctereutes zouden kunnen vereenigd worden.
Temminckが命名時に意図していた意味合いを推測できそうな情報はなさそう
Nyctereutesの由来は?
Nyctereutesの前半部がνύξ(núx 夜)に由来しているのはまず間違いない
後半部の由来はἐρευνητής(ereunētḗs 探索者)なのか?それともθηρευτής(thēreutḗs 狩猟者)なのか?
Wikipedia英語版
Nyctereutes (Greek: nyx, nykt- "night" + ereutēs "wanderer")
Wikipedia日本語版
属名Nyctereutesは、古代ギリシャ語で「夜」の意があるnyctosと「探す」の意があるereunaに由来する2。 Wikipediaの引用文献を見てみる
The generic name Nyctereutes comes from the Greek nyctos meaning "night" and ereuna meaning "seeking." The specific epithet procyonoides derives from the Greek prokyron meaning "before dog" and eidos meaning "form."
一方で、Nyctereutesの意味を「夜の狩人」と説明する日本語サイトもいくつか引っかかる
狐の学名は「ウ゛ルペス・ウ゛ルペス」で、タヌキの学名は「ニクテレウス・プロキオノイデス(夜の狩人で、原始的なイヌに似た者)」と
noxは,ラテン語のnox(=夜)ですね.
元はギリシャ語の「νύξ(ニュックス)」.翼竜の一属,Nyctosaurusの語源でもあります.
「タヌキ属」のNyctereutesの語源でもあります.ちなみにnyctereutesは「夜の狩人」の意味.
《タヌキ属 / Nyctereutes》
タヌキ1種のみがここに分類。
属名の学名「Nyctereutes(ニュクテレウテス)」は恐らく「夜の探索者」の意。ほか、「夜の放浪者」、「夜の狩人」という解釈もあり。
タヌキ属の学名Nyctereutesは、古典ギリシャ語で「夜の狩人(núx "夜"+thēreutḗs "狩人")」という意味になります。夜行性であることを反映したかっこいい学名です。
英語文献でもNyctereutesの意味を「night hunter」と表現することは遅くとも1904年から行われている
ただ、θηρευτήςに由来を求めている英語の文章は簡単に調べただけでは見つからなかった
なので「night hunter」の「hunter」がθηρευτήςに由来するのか、あるいはἐρευνητήςを意訳したものなのかは不明
英語の「hunter」は比喩的に「探索者」の意味でも使用されることがあるが…?
可能性1:ἐρευνητής → hunter → 狩人
可能性2:θηρευτής → hunter → 狩人