フリーエネルギー原理
カール・フリストンが提唱者。
理論自体は極めて抽象的で脳の何を説明するものではない。
この点は相対性理論における「相対性原理」や「高速度不変原理」「等価原理」に似ている。
(すなわちここからあらゆる理論が展開されることが期待されている)
概要
脳の仕組みは感覚信号の予測とその予測と実際の感覚の誤差(予測誤差、フリーエネルギーとも)を最小化するものだとする。
すなわち脳にはトップダウン信号(予測)とボトムアップ信号(感覚信号、視覚など)があり、脳はつねに感覚信号の予測とその修正を行っている。
トップダウン信号とボトムアップ信号だけなら昔からあるように思えるが、フリストンは物理学で使われるフリーエネルギーの概念を用いてそれを定式化した。
フリーエネルギーの着想は物理学から得たものだが、フリーエネルギー原理で使われるフリーエネルギーは変分自由エネルギーと呼ばれるやや確率論的なもの。
他に物理学の概念の応用例として情報科学へのエントロピー概念などがある。(LLMはクロスエントロピーを最小化しようとするもの)
応用
たとえば不安障害の人は内蔵受容感覚の予測が強いのだという説がある。まだ仮説段階。
ASDモデル
ASDの人は予測モデルの修正が弱く、感覚過敏になりやすい。
トップダウンの信号が弱いため感覚統合に難がある。
予測モデルの修正が弱いため、自分の中にある予測に固着しがち
パニック発作など
他者の意図や感情を予測する困難
社会的ルールへの過剰な依存
他者に対する内部モデルが弱い、あるいは不正確で柔軟性が低い
他者の行動や意図を予測することは、社会的相互作用の中核的なプロセスです。
ASDの人々では、この「他者の行動や意図を予測するための内部モデル」が弱い、または正確でない可能性が指摘されています。
ASDの人々は、他者の意図や行動を予測する際に必要な**心の理論(Theory of Mind)**が弱いとされます。
フリーエネルギー理論的には、他者の行動を予測するモデルが未発達であるため、予測誤差が大きくなりやすい状況にあります。
例: 他者の表情や声のトーンから意図を読み取るのが難しい。
AIモデル
また、フリーエネルギー原理はその厳密な定式化からAIへの応用が研究されている。
MLの人にはベイジアン推論という言葉で通じるかもしれない。
能動的に活動して世界モデルを構築するロボット(ロボティクス、強化学習)
身近な例で
学校の授業でも予習をしてると頭に入ってきやすい。
まったく同じ専門的な文章を読んでも、自分の前知識によって理解度が変わってくる。
第一印象がその後の印象に強い影響を及ぼす。