2022/1/13皮膚はすごい
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タイトル: 皮膚はすごい
著者: 傳田 光洋
概要: ポロポロとはがれ落ちるような柔な皮膚もあれば、かたや脱皮でもしない限り脱げない頑丈な皮膚もある。生き物たちの皮膚は一見不合理のようだが、それぞれが進化の産物であり理由がある。からだを防御するだけでなく、色や形を変化させて気分も表現できる。生き物たちの「包装紙」のトンデモな仕組みと人間の進化がついに明らかになる。
出版社・書籍情報: 岩波書店(2019年06月06日頃)
参考価格: ¥1320
ISBN: 9784000296854
引用
P119
なぜ人間だけが、宇宙の果てや、未知の素粒子について知ることができるのでしょうか?現生人類ホモ・サピエンスは、ネアンデルタール人にはない、さまざまなことに興味を持ち、命がけでそれを探究する脳を持っています。前の論文に沿えばそういう脳を持った一群のメンバーがいることになります。一方で環境からの膨大な情報を感知する表皮を持っています。
人類の大きな脳は体毛をなくしたことによって、表皮からもたらせる情報を処理するためだと述べました。それと似た例として皮膚をディスプレイにしたコウイカ、エレファントノーズフィッシュを紹介しました。しかし人間の皮膚にはディスプレイ能力もレーダー機能もありません。
私は、人間の大きな脳の役割はその中に、今自分がいる時空間とは無関係な仮想空間とでもいうべき領域を作り出すことにあるのではないかと考えています。・・・五感からもたらせる情報を統合し、自分という存在を創っているのです。そのことから人間は過去から学び、未来への展望が可能になります。
P120
眼は「可視光」と呼ばれるある領域の電磁波を感知します。耳はある周波数領域の空気の濃淡波、つまり音を感知します。鼻と舌は一群の分子を識別します。
一方で、表皮は可視光のみならず紫外線から赤外線まで感知できます。音については耳の限界、二万ヘルツを超えた超音波まで感知できます。分子の識別についてもこれからそのリストが増えていくでしょう。表皮はさらに大気圧を感じ、酸素濃度を感知し、地球の磁場程度の弱い磁気も感知し、電場にも応答します。
P110
ホモ・サピエンスはgeneralist(いろんなことに挑戦する人)でSpecialist(何かを極めた専門家)を志向する能力、性格を持っていた。
→ネアンデルタール、デニソワにはない。
報酬が保証されていなくても、あたらしい世界、まだ見たことがない経験したことがない何か、それに飽くことなく挑戦し続ける気質。
所感
外部環境の情報を表皮(ケラチノサイト)は瞬時に対処すべき情報と脳に蓄積して記憶する情報に選別している。人間の全身を覆うケラチノサイトは1000億個以上。これは脳の神経細胞数と同規模。そう考えると、私たち人類は何かを学ぶとき、肌感覚を持って経験を積み重ねることがとても大切であることがわかる。実際に体を動かして、触れて、リアルにそれを経験する。機械化、IT化は進んでいくが、表皮の機能を使いこなさない手はないし、そうしないことでの弊害が色々と出てきそうだと感じた。
そして、はだしになると五感の感度が上がると言う私の体験が表皮のケラチノサイトの機能を考えれば、当然の結果であることがわかる。足という閉ざされた皮膚が解放されることで、足で触れて・見て・聞いて・嗅いで・味わうことが可能になるのだから。